昔から、よくメモをとる方だと思う。特に打ち合わせとなれば、ひたすらメモをしまくる。
会社員だったころ、新しい仕事を担当するにあたって社内で顔合わせした際に、あまりに話を聞くこと&メモをとることに夢中になりすぎて、どうやら片肘をついてメモを書きまくっていたらしい。その姿が「生意気だ」「態度が悪い」と大ブーイング、汚名返上するのに大変だったのは苦い想い出だが。
そんなわけで、いま売れている一冊『メモの魔力』(前田裕二・著/幻冬舎・刊)のタイトルを見た瞬間、シンパシーを感じてすぐに手にとった。
ところが中身を読んでみると、私のメモなど前田氏の足元にも及ばないことがわかった。
今回は、「メモをとることで仕事が、プライベートが、人生が変わる」前田流メモ術についてお伝えしていこう。
「記録」ではなく「知的生産」のためのメモが、あなたを変える
前田氏いわく、メモには2種類あるという。ひとつは「記録のためのメモ」。見聞きした情報や事実をそのまま書き留めておく、いわゆる備忘録だ。そしてもうひとつ「知的生産のためのメモ」、これこそが大きな意味を持つのだと前田氏。
たとえば、メモをとることで余分な情報はストックしておき、有益な情報を生み出すために脳を使うことができる。
たとえば、情報を素通りすることがなくなり、常に自分にとって必要な情報をキャッチするため、アンテナを張り巡らせておける。
たとえば、「メモをとる=あなたの話をもっと聞きたい」という想いが伝わり、相手のより深い話を引き出せるようになる。(ただし、冒頭の私のような失敗例もあるので、メモをとる「姿勢」も意識すべき!)
たとえば、メモをとることで、今展開されている議論を頭の中で構造化でき、話の骨組みがわかるようになる。
たとえば、頭の中でぼんやりと考えている曖昧な感覚や概念を、意識的に言語化できるようになる。
つまり、知的生産性・情報獲得の伝達率・傾聴能力・構造化能力・言語化能力というあらゆる能力がアップする、その源となるのが「メモ」なのだ。
前田式・メモのとり方
では、実際にどのようにメモをとると有効なのだろうか。前田氏は、ノートは見開きに使うことを推奨している。
まずは、左ページに「ファクト」つまり、どこかで「見聞きした客観的な事実」を書く。そして右ページは半分にわけて使用。左側にはファクトから浮かんだ「抽象化」した要素を記入。そして右側には「転用」の要素を書いていく。
つまり、前田氏のメモ術とは
インプットした「ファクト」をもとに、
気づきを応用可能な粒度に「抽象化」し、
自らのアクションに「転用」する。
(『メモの魔力』から引用)
この3点ということだ。なんだか難しそう? 確かに。では、前田氏の経験をもとに具体例を見てみよう。
「SHOWROOM」もメモから誕生したビジネス!
前田氏は、アーティストやタレント等の配信が無料で視聴でき、なおかつ誰でも生配信が可能な双方向コミュニケーションの仮想ライブ空間「SHOWROOM」の創始者。このSHOWROOMも、やはりメモから生まれたビジネスなのだそう。
前田氏自身が路上で弾き語りをしていたとき、こんなメモを記していたという。「カバー曲を歌うと、オリジナル曲よりも立ち止まるお客が多い」「立ち止まってくれた人のリクエストに応えると、ぐっと仲良くなる」
このファクトから、「仲良くなるには双方向性が大事」「うまい歌ではなく絆に人はお金を払う」と抽象化し、「双方向性があり、絆が生まれる仕組みをネット上に作る」と転用、結果SHOWROOM誕生に繋がったというのだ。
なるほど、ただ漠然と「今日はお客が多いなー」「やっぱりカバー曲の方がウケるんだなー」と思っているだけでは、そこから何も生まれない。毎回気づきをメモし、抽象化、転用を繰り返したからこそ、結果としてはじめにメモを記したときよりも数百倍先の未来へ連れて行ってくれるのだ。
少しでも心動かされたら、メモを始めるチャンス!
『メモの魔力』には、さらに効果的なメモのとり方、そしてメモで自分自身を見つめ直すための自己分析の有用性、メモを習慣化させるためのコツなどが詳細に書かれている。とにかくメモに対する前田氏の熱量がすごい。(巻末には「自分を知るための【自己分析1000問】」が付録として収められている!)
普段からよくメモをとる人はもちろん、「メモなんてめんどくさくて~」という人も、一度前田氏の”圧”を感じてみてはいかがだろうか。
「ファクトとか抽象化とか、ちょっと難しいや」という人も、とりあえずお気に入りのノートを用意して、気が向いたときにでもメモを取り始めてはどうだろう。
私の場合、取材時などに書き殴ったメモは、正直汚いし判読不能な部分もある。ぶっちゃけICレコーダーで取材内容を録音しているのだから、メモなんて必要ないとも言える。
でも、自分がメモした部分は、そのときの自分にとって心に響いた言葉であり、後々録音したものを書き起こしてみると、スルーしてしまった重要なワードがいかに多くあることに気づけるのだ。
「メモか、ちょっと興味あるかも」と少しでも感じたら、メモ魔への第一歩。あなたのビジネスが飛躍するきっかけになるかもしれない。
【書籍紹介】
メモの魔力
著者: 前田裕二
発行:幻冬舎
僕にとってメモとは、生き方そのものです。メモによって世界を知り、アイデアが生まれる。メモによって自分を知り、人生のコンパスを持つ。メモによって夢を持ち、熱が生まれる。その熱は確実に自らを動かし、人を動かし、そして人生を、世界を大きく動かします。誰にでもできるけど、誰もまだ、その魔力に気付いていない「本当のメモの世界」へ、ようこそ。