ソニー「α7Ⅲ」、ニコン「Z 6」、キヤノン「EOS R」、パナソニック「LUMIX S1」の4機種の瞳AFを検証する本企画。今回はキヤノンEOS Rをチェックする。キヤノンEOS Rの瞳認識AF機能は、発売当初はワンショット(AF-S)のみ対応だったが、ファームウエアのVer1.2.0(2019年4月18日公開)からサーボ(AF-C)でも対応するようになった。瞳認識AFのほか、AFフレームサイズ「小」もサーボで使えるようになっているので、アップデートしていない人は、ぜひアップデートしておきたい。
【その1】どのくらいから瞳AFが効く?
はじめのチェックではこれまでと同じく、どのくらいで瞳認識が効くようになるのか、画面における人物(顔)の大きさを見てみたい。EOS Rでは、認識のみの状態では顔/瞳ともに四隅をカギカッコの白枠で囲む形式で、認識されていれば両者が同時に表示される。半押ししながらの合焦時には、ワンショット(AF-S)では緑、サーボ(AF-C)では青で、顔は大きな正方形枠、瞳認識は小さな正方形枠として、どちらかのみが表示される。
<「顔」+「瞳」認識枠例>
<「瞳」認識枠例>
▲サーボ時の表示は瞳認識枠、顔認識枠ともに青の正方形枠。枠の大きさが異なる。色はそれほど鮮やかな枠ではないので目障りな感じはしない。左右の表示は特にない。
では、顔の大きさがどのくらいから顔認識から瞳認識に移行するか試してみた。今回テストした4機種のなかでは、一番顔認識から瞳認識への切り換えが遅く、横位置でバストアップくらいでようやく切り換えられた。キットの標準ズームなどでは問題ないが、大口径の単焦点レンズを使う場合などを考えると、顔が斜め向きなどの状況では被写界深度による左右のピントの差など結構出ると思うので、もう少し早めに認識してくれるとありがたいかなという印象だ。
<「瞳」認識枠に変化したときの大きさ>
<「瞳」認識枠に変わる直前の「顔」認識枠の大きさ>
▲これを見ると、瞳認識枠への切り替わりは結構アップになってからということがよくわかる。感覚としては横位置でバストアップより少し下という感じだ。今回の条件で切り替わったタイミングを数値化すると、短辺(画面上下)を1としたときの頭の大きさ(頭の先からアゴ先まで)の比は約1:0.4。だいたい長さにすると画面の短辺約1/2.5の長さで反応するという感じだ。もちろん条件によって前後する部分なので参考値としておきたいが、比較的アップ目で効き始める瞳認識機能といえる。
【その2】回転や前後の動きへの対応
次に、EOS Rの測距点がどの様に追従していくのか、移動する人物の流れのなかで、その動きを見てみることにする。撮影条件などは前回、前々回に引き続き同じ。70-200mm F4のレンズを用い、200mm絞り開放、サーボAF(AF-C)で撮影。動きのパターンとしては、カメラ近くで左右に2回転し、そのまま一度カメラから遠ざかり、さらに、腰くらいの引きカットまで遠ざかったら戻ってくるという一連の動きになる。
測距点の推移をチェック
EOS Rでは顔の向きが中途半端なとき、若干自動認識枠に変わったり、顔認識枠に変わること、また少し動きが遅れてついてくる感がある。ただ認識は的確で、表示のみが遅れているようにも感じる。後ろ姿でも、自動認識枠が人物にしっかりついてきてくれている。一番遠くでは瞳認識は効かず、顔認識のみとなる。ウエストアップ域に入ると瞳認識が効き始め、手前の目を追ってくれている。向かってくるところでは数枚ピントを外しているカットもあった。
クルッと回転動作でのピントは?
回転振り向きシーンでの実写カット。今回比較したほかのカメラと異なり、連写でのコマ速はサーボ時では5コマ/秒と少ない。シャッターが切れた範囲では若干1~3コマ目くらいまではピントが落ち着かない感があるが、4コマ目以降はガチピンで非常にシャープ。
<撮影カット一覧>※すべての画像はCAPA CAMERA WEBでご覧いただけます
<拡大>
左右のチェンジ動作
EOS Rでは瞳認識が効く場合、左右で任意の目を選んで合わせ直すことができる。操作方法は、合焦した時点でAFフレーム選択ボタンを押し、十字キーの左右で対応する。
▲AFフレーム選択ボタンを押したあと、フレーム表示が変更され、瞳認識が二重括弧表示に、顔認識枠に左右の三角が表示される。十字キーを押すと左右の瞳を選択することができる。
【その3】様々なシーンへの対応
最後に、髪がかかってしまった場合、あるいは眼鏡をかけている場合など、様々なシーンでチェック。見るポイントとしては、どこで顔認識、そして瞳認識に移っていくかだ。撮影条件は同じく70-200mm F4のレンズを用い、引いているときは70mm、アップの時は200mmでそれぞれ絞り開放、サーボAF(AF-C)で撮影している。
髪のかかるシーン
顔が見えていない横顔状態では髪の辺りの自動認識枠が青く、絶え間なく点灯する。顔が半分見えている状態でも顔認識への移行にちょっと時間のかかる印象。首の仕草で少しもう片方の目が開いた時点で俊敏に反応、ただし奥の目にピントが合う。髪を直した瞬間に手前の目にピントが合い直し、その反応は速かった。
▲髪を直してピントが合った直後に押したシャッターで捉えた写真。ピント自体の精度は高い。スムーズで確実なピントを得るために、合わせやすい状況や、リカバーする手段を作るのもポイントになってくる。
眼鏡のシーン
引いた状態(70mm)で眼鏡をかけてもらうアクションでは、途中、瞳認識から顔認識に変化するものの、ピントはしっかり顔を捉えている。手を下ろしたときに瞳認識へと即移行している。アップ(200mm)では、正面気味なシーンは瞳認識されていたが、ゆっくり外す動作などではピントが手に引っ張られることもあった。素早く眼鏡をかける動作では引っ張られることなく合わせ続けた。左右の瞳を行き来することも多いように感じた。
<70mmで撮影>
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<200mmで撮影>
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<拡大(右側の瞳に合焦)>
<拡大(左側の瞳に合焦)>
▲70mm時、他機種の比較と異なりちょっと強めのレフが反射してしまっているが、現場での試行錯誤もあるのでお許しを。とはいえしっかり瞳にピントが合っているのがわかる。200mm時、手の仕草に引っ張られるのはしょうがないように感じるが、手が入っていないときにチラチラと左右迷うときがあるのはちょっと気をつけたい。これだけアップで被写界深度が浅いと、結構ぼけてしまうことになる。できれば確実に手前の目に合うように、瞳認識枠を確認してから撮影したい。
モデル/朝倉璃奈(ABP Inc.)