高い光学性能とコンパクトサイズを両立し、ビルドクオリティにこだわった「45mm F2.8 DG DN | Contemporary」に続く、3本の単焦点レンズが登場。ミラーレスファン待望の「Ⅰシリーズ」の魅力を紹介しよう。
フルサイズミラーレス新時代のコンパクト&高性能なⅠシリーズ誕生
人気を博している「45mm F2.8 DG DN」に続き、シグマがコンテンポラリーラインを増強。Ⅰシリーズと銘を打って、3本が追加された。これにより広角側から、24mm、35mm、45mm、65mmが揃ったことになる。
これまでシグマの単焦点レンズはアートラインを中心に拡充されてきたが、大口径と性能優先で決められた本体はボリュームが大きく、携行性は二の次。気軽に持ち歩くにははばかられたが、そんな声に応えるように登場したのがⅠシリーズだ。
■SIGMA 35mm F2 DG DN | Contemporary
高品位ボディと光学性能に妥協のないスタンダードレンズ
9群10枚のうち、グラスモールド非球面レンズ3枚、SLDガラス1枚を使っている。準標準とも言えるポピュラーな焦点距離だけに、適度な明るさとサイズを両立しつつ、高画質も狙う欲張りな仕様だ。
■SIGMA 65mm F2 DG DN | Contemporary
映画撮影にも向く画角で気持ちのいいボケ味が楽しめる
9群12枚のうち、2枚のグラスモールド非球面レンズと1枚のSLDレンズを採用。珍しい焦点距離だが、映画撮影用ではポピュラーなもの。ボケ味とキレ味が売りだ。
■SIGMA 24mm F3.5 DG DN | Contemporary
クローズアップに強い広角レンズ
最大撮影倍率0.5倍という、マクロ性能を持つ24mm。開放F値は抑えめだが、そのぶん特にコンパクトな作りだ。スマホからのステップアップユーザーには「標準」とも言える画角。
写欲も所有欲も満たす
高品位なアルミ外装は冷たい金属の質感や適度な重量で、手にするだけで思わず頬が緩む。フォーカスリングや絞りリングを始めとする操作部材の動きも極めて滑らかで、心地良いものだ。
35mm、65mmともに45mmで見られた、球面収差を残したにじむような写りは見られないが、製品特性を考慮した開放F値はもとより、美しいボケと優れた解像力の両立を目指した描写は、作品を眺めるときの満足感も高い。
本モデルでは、従来のプラスチック製レンズキャップに加えて、マグネット式メタルキャップも同梱される。これにより、Ⅰシリーズの持つデザイン性をより研ぎ澄ましていく狙いもある様子。フードも各レンズに合わせた金属製で、使い込むことでスレなどのエイジングまでも自分のモノらしさの魅力になっていきそうだ。
聞くところによれば、さらにⅠシリーズの拡充も続けるとのこと。手の届きそうな価格設定にもくすぐられ、つい揃えたくなる誘惑に駆られる。
シグマⅠシリーズで実写
夕方のドラマチックな光を高画質に捉える
冬の澄んだ空気の夕方。低い太陽を狙うが、日差しは肉眼で凝視できないくらいの強さだ。その太陽をあえて画面に入れてみたが、コントラスト低下などは見られず、拍子抜け。解像力も上々だ。
シャープな描写と自然なボケが空気感を描く
気負いせずに撮れるのが、このレンズの魅力。花は造花で、拡大すると布の織り目がしっかり見えるが、ピント位置が外れるところは、自然に滑らかにぼけてゆく。空気感という言葉がよく用いられるが、まさにそんな感じだ。
単焦点のボケ味が出会った光景を印象的に切り取る
晴天下の遠景を開放絞りで撮る機会は少ないが、あえて撮影。ズームに慣れた目には、見慣れないボケで人物が浮かび上がる。本来ボケを得やすいシーンではないが、F2の明るい単焦点のなせるワザだ。レンズ補正は全てON。周辺光量も良好だ。
心地よい遠近感とボケ味でスナップ
当初は慣れない焦点距離でやや戸惑うが、使うとともに心地よい画角と遠近感だ。1段高いハンガーにピントを置いたが、手前から奥へ繋がるようなボケが美しい。ぜひ開放絞り付近を楽しんでほしい。
〈写真・解説〉桃井一至