中国の2大カメラショーの1つ、「PHOTO&IMAGING SHANGHAI 2019」が、7月に上海の国家会展センターで開催された。「PHOTO&IMAGING SHANGHAI」は、ブライダルの「China Wedding EXPO」、子ども写真の「Baby Photo EXPO」と併催となることもあって、中国のもう1つのカメラショー、北京で開催されている「China P&E」に比べると、桁違いに大きい展示会だ。とはいえ、昨年までの会場である上海新国際博覧センター(旧国家会展センター)から比べるとグッと小規模になってしまったという感は否めない。数年前は上海万博の会場で行われていたわけだから、景気の後退がそのまま展示会の規模に反映されているようにも思える。
会場は大幅に縮小されたが活気は変わらない
会場は放射状に8つのホールに別れていて、今回の展示会はそのうちの5ホールを使って行われている。「PHOTO&IMAGING SHANGHAI」はそのうちの1ホールだけだが、それだけでもCP+の会場のパシフィコ横浜とほぼ同じ広さだ。そこに200以上の出展社がブースを構えており、活気は以前と変わらないと感じた。
受け付けはスマートフォンによる事前登録制(無料)で、送られてくるQRコードを見せて入場パスと交換する方式だった。
2階の受け付けを通るとさらに3階までエスカレーターで昇り、降りてきた2階が「PHOTO&IMAGING SHANGHAI」の会場となっている。ムダな動線のようにも思えるが、多くの人を滞らせない配慮でもある。中国での移動は、とにかく歩かされる。
カメラメーカーブースはタッチ&トライがメイン
まずは日本の主要カメラメーカのブースを見ていこう。
■キヤノン(佳能)
日本で発表されたばかりの「RF24-240mm F4-6.3 IS USM」が、「EOS RP」とともにタッチ&トライできた。
コンパクトな「EOS RP」と高倍率の RF24-240mmはバランスも良く、相性が良さそうだ。超望遠レンズの体験コーナーやステージイベントなど、日本のカメラショーと同じような構成だったが、どこも大勢の来場者で賑わっていた。
北京のカメラショーで見かけたEF白レンズのマスコットは上海でも健在。子どもたちに大人気だった。
■ニコン(尼康)
ニコンブースはZシステムをメインにしつつ、動画の展示にも力を入れていた。目立った新製品はなかったが、フルサイズミラーレス用の大口径レンズ「NIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noct」は目玉の1つ。とはいえ、来場者はモデル撮影に夢中で、製品に興味を示している人は少なかったようにも思えた。
長蛇の列ができていたので何事かと思って覗いてみると、眼底検査をしてくれるコーナーだった。中国でも健康志向は高い。
■富士フイルム(富士胶片)
最大規模の広さを誇るブースに、1億画素の中判ミラーレス「GFX100」体験コーナーをいくつも用意していたのが印象的で、GFX関連だけで半分以上を占めていた。特にブライダルフォトグラファーや広告カメラマンにとっては非常に興味深いようで、どのコーナーにも人垣ができていた。
instax(チェキ)の展示も多く、こちらは家族連れや女性が目立つ。大型のラボ機やXシリーズがまったく目立たなかったのは、戦略的にあえてそうしていたようだ。
■ソニー(索尼)
まだタッチ&トライはできなかったものの、発表されたばかりの「FE 35mm F1.8」がブース入り口にあるレンズラインナップの隣に特別展示されていた。会場にこの1本だけしかなかったのか、必要に応じてスタッフが持ち出すため、ときどき姿を見せなくなっていた。
ダンサーを囲むように設けられたタッチ&トライコーナーでは、α7シリーズをはじめとする各種カメラを試すことができた。
■パナソニック(松下)
“FANTAC CULTURE DEVELOPMENT”のブース名で出展していたパナソニック。ステージに横たわる妖艶なコンパニオンが気になってしょうがない。
ブース奥にもモデルを配し、製品はどこにあるの? という感じのブースではあったが、しっかりと「LUMIX S1H」がショーケースの中に展示されていた。Lマウントレンズのロードマップも紹介されていて、着々と協業体制が進んでいることをうかがわせる。
目立った新製品はないがユニークなモノも
続いて、そのほかのブースや注目製品についても見ていこう。
■ストロボ関連
どこかで見たような…と思うのは、丸型の発光部が特徴のJINBEIのクリップオンストロボ「HD-2」。ロゴの部分がリチウムイオンバッテリーになっている。
GODOXブースでは「GODOX V1」も注目されていた。
ストロボメーカーのブースを覗くと、どこもLEDが主流になりつつあるように見える。深センのストロボメーカーのブースには、マクロフラッシュだと思われるLEDライトが展示されていた。シュリロブースでは、ブロンカラーのデモンストレーションをボクサーを起用して行っていた。
■三脚関連
日本で主にSAEDAが扱っている各種製品を紹介していた集合ブース。ラフジャパン、SAEDAのスタッフの顔があった。センターポールの取り外しが可能なCOMANのトラベル三脚は、カーボン製で2段式のセンターポールを採用する。SAEDAブランドで、日本でも近日発売予定とのこと。
韓国PHOTOCLAMの製品はその精密さに定評がある。剛性と弾性を備えたUHMカーボンを採用したMEISTERシリーズも近日、日本に登場予定。スパイクを標準装備しているほか、本体部分にネジ穴を備え、LEDや小型モニターなどを取り付けることができるなど、アクセントの効いた製品になっている。
このブースには、ベルボン製品も展示されていた。なかでも一番の注目は、自撮り棒になるスマホケースだろう。こちらはすでに日本で発売中だ。
■フィルム関連
コダックのブースにはパトローネが所狭しと並べられ、デジタルをまったく感じさせない特徴的な展示が印象的だった。また、イルフォードのブースにもフィルムが並べられていて、根強いフィルムユーザーの存在を感じさせられた。実際、上海の中古カメラ店を覗くと、まだまだフィルムカメラは現役のようだ。フィルムが健在なのは嬉しくもある。
■シュリロ / ハッセルブラッド
ハッセルブラッドを展示していたのはシュリロ(香港)のブース。発表されたばかりの「X1D II 50C」がショーケースの中にあった。
今年は人類初の月面着陸から50年とあって、ハッセルのムーンカメラも合わせて展示されていた。ちなみに、シュリロはEIZO製品も扱っていて、ブースにはEIZOのモニターも展示されていた。
■KamLan
ラインナップをズラリと並べて展示していたKamLan(カムラン)のブース。新製品の「55mm F1.1」も手にすることができた。
値段の出ていなかった「15mm F2.0」も実際にカメラに装着して試すことができたが、発売時期や価格は未定とのこと。今回見て回ったなかでは唯一ともいえる会場初登場の新製品だっただけに、詳細情報がないのが惜しい。
■PELICAN
ブースの前を通りかかると、ぜひとも紹介したいと言われたペリカンの新製品「PELICAN AIR」。約40%の軽量化が図られたのに加え、以前はウレタンをくり抜かないといけなかったものが、仕切り板を採用したのだという。
仕切り板は付属の専用カッターで自由にサイズを変えられるほか、ピンを使って固定する方式が取られている。
■Xfer Max
大型のカラー液晶を備えた、メモリーカードのバックアップをするデバイス「Xfer Max」。XQDメモリーカードスロットを備えるほか、HDDをSSDに装換可能となっている。日本ではAmazonで購入可能だ。
■GGSPHOTO
カメラストラップの展示で気になったのは、スカーフを素材にしたようなストラップ。広がる構造は、サクラスリングを思わせる。丁寧な製品づくりをしているようではあるものの、どこか野暮ったいのは素材感なのか、デザインなのか。しかし、実売価格は2,000円程度というから、来年の「PHOTO&IMAGING SHANGHAI 2020」では、もしかしたら人気製品の1つになっているかもしれない。
■YONGNUO
CP+2019でも展示されていたYONGNUO(ヤンヌオ)のアンドロイドカメラ。キヤノンEFマウントを備え、Android OSを搭載する。
北京のカメラショーでは7〜8月に発売予定ということだったので、PHOTO&IMAGING SHANGHAIでは量産機を手にできるかもと期待していたのだが、まだ発売になっていなかった。価格は約2500元(約4万円)程度ということだったから、ちょっとお遊びで使ってみるには手ごろなアイテムだ。
■そのほかのブースでは…
カメラを複数台並べて撮影するマルチ撮影のデモンストレーションが体験できた。
ブライダル関連の来場者が多いこともあって、展示されている作品や出力サンプルは婚礼をイメージさせるものが多い。
写真をさまざまな形に切り抜く機械も展示されていた。普段目にすることのないこうした機械を見るとB to Bの展示会だということを実感するが、カメラメーカーのブースは日本のCP+のように一般ユーザーを意識した作りになっていた。
額縁づくりのデモンストレーション。こんな装置があるのかとただただ感心するばかりだ。
■取材を終えて
重厚長大が尊重された中国市場もミラーレスカメラの流れを受けて、ここ数年でずいぶんと小型軽量の製品が多くなった。そういう意味では、すぐに日本でも手にできそうなものが目についた展示会だった。
カメラ関連の中国製品というと三脚、ストロボ、マウントアダプターが連想されるが、年を追うごとに淘汰されてきたようで、雨後の筍にように出てきた数年前に比べると、その数はグッと少なくなった。中国を代表するメーカーともいえるDJIをはじめ、三脚のシルイ、ベンロ、ストロボのニッシン、フィルターのNiSi、Kaniフィルターといったブースが見当たらなかったのが印象的だった。
また、カメラマンベストやカメラバッグといったモノも見かけなかった。北京のカメラショーがスマートフォン寄りになった印象だったが、「PHOTO&IMAGING SHANGHAI」はブライダル向けの機材ショーということもあって、ビジネスショーの意味合いが強い。良い意味ですみ分けができてきているのかもしれない。
4日間の「PHOTO&IMAGING SHANGHAI」の来場者数は約71,000人。併催会場からの流入もあるので、実際にはそれ以上に多いに違いないと、取材をしていて感じた。