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動画機能はFX3譲り、リーズナブルなソニーのAPS-Cシネマカメラ「FX30」

ソニーは、映像制作用カメラ商品群 Cinema Lin (シネマライン) の新製品となる「FX30」を発表した。その外観からも想像できるように、すでに発売されているフルサイズセンサー搭載機「FX3」と同様のボディに、新開発のAPS-C (Super35mm) センサーを搭載し、「FX3」譲りの動画撮影機能を盛り込んだモデルだ。発売予定は2022年10月14日となっている。

FX30

 

機構上のハイライトは、有効画素数が動画撮影時約2010万画素 (静止画撮影時約2600万画素) の、新開発APS-C (Super 35mm) 裏面照射型CMOSイメージセンサー。ミラーレスカメラではフルサイズ機を続々と発表しているソニーだが、APS-Cサイズ機はVlog撮影機能が特徴のZVシリーズを除けば、2019年発表の「α6600」から久しい。新しいAPS-Cセンサーが出たことで、今後、これを搭載する様々なモデルが続々と発表されるのでは、と期待したい。

FX30&FX3
左が「FX30」で、右が「FX3」。ボディサイズ、マウントサイズは同じなので、APS-Cサイズセンサーとフルサイズセンサーの大きさの違いがよくわかる。

 

ソニーはこの「FX30」で、映像の世界に飛び込みたいFuture Creatorを開拓し、Cinema Lineシリーズのすそ野拡大を狙っている。価格も注目ポイントで、「FX3」が “本体 + XLRハンドルユニット” で販売されているのに対して、「FX30」には “本体 + XLRハンドルユニット” と“本体のみ” が用意されており、希望小売価格 (税込) はそれぞれ328,000円と273,900円。これは「FX3」の548,900円に対して、ほぼ半額だ。

FX30
左の「本体のみ (レンズは別売り)」と右の「本体 + XLRハンドルユニット (レンズは別売り)」が用意されている。
FX30
複数の音源を細やかにコントロールする機能が盛り込まれたXLRハンドルユニット。インタビューの収録時に重宝しそうだ。

 

この低価格の実現に最も効いているのはセンサーの小型化だが、加えて静止画撮影機能の大胆な簡略化という策も実施している。静止画撮影時の有効画素数は、「FX3」の約1210万画素に対して「FX30」は約2600万画素と高画素化を実現している。

反面、シャッターに関しては、「FX3」には装備されていたメカシャッターを省いて電子シャッターのみに。さらに連写機能も「FX3」の秒間10コマに対して、「FX30」は連写設定のない1コマ撮影のみという割り切りよう。静止画は、動画のサムネイルやロケハン時の資料用として撮るという使用状況を想定しての設定だ。

重きをおいている動画撮影機能は、さすがCinema Lineのモデルらしく充実している。4K Super35mmフォーマット映像収録時には6Kオーバーサンプリングによる豊富な情報量を凝縮した収録が可能であり、組み合わされる画像処理エンジン BIONZ XRにより、高い階調表現、忠実な色再現性能や低ノイズ性能などの高画質化、4K/120pなどの膨大な映像データ処理、メニュー操作時のレスポンス向上を実現しているという。

また、FX3で高評価を得ている、映画のような色味を手軽に再現できるS-Cinetoneやピクチャープロファイルの追加拡張機能、階調豊かな4:2:2 10bit収録、光学式5軸ボディ内手ブレ補正、撮影の自由度を高めるバリアングル横開き背面モニター、動画記録中であることを示すタリーランプといった機能装備も与えられている。

FX30

FX30
3.0型約236万ドットのバリアングルタイプ横開き液晶モニターを搭載。手持ちジンバルやローポジションなど、状況に応じた自由なフレーミングを可能としている。

 

動画撮影性能で、「FX3」との違いが顕著なのはISO感度だ。「FX3」は高感度性能の高さで高評価を得ている「α7S III」と仕様がほぼ同じであり、拡張時で低感度側ISO80〜高感度側ISO409,600という驚異の感度を誇っているが、「FX30」のそれはISO100〜32,000。また、動画撮影におけるLog設定時のデュアル・ベースISOも、「FX3」の800/12,800に対して800/2500。ダイナミックレンジも「FX3」の15+ストップから、「FX30」では14+ストップとなっている。ここはさすがにフルサイズ機「FX3」に及ばぬところではあるが、逆に「FX3」にはない最新機能として、「α7Ⅳ」から採用されたリアルタイム鳥瞳AF、フォーカスブリージング補正機能、動画撮影時の被写界深度を可視化するフォーカスマップ機能などが採用されているのは新しい。

さらに「FX3」と同様、グリップ上部には速度設定可能なズームレバーを配置。パワーズームレンズのズーム操作だけではなく、単焦点レンズでも使用可能な全画素超解像ズームによって、少ない撮影機材でも画角にバリエーションを与えられる。ボディサイズは「FX3」と同じだが、イメージセンサーの小型化などにより重量は約70g軽くなっている。冷却ファンと放熱に配慮した構造は「FX3」そのままなので、相対的に放熱効果は高まっているだろう。

これから動画撮影に本格的に挑戦したいのであれば、操作性や機能がCinema Line上級機に通ずる「FX30」は最適の選択かもしれない。

FX30
ボディはスイッチ類を含めて「FX3」と同じ。グリップ上部にはズームレバーも配されている。
FX30
HDMI端子を介して外部モニターレコーダーと接続すれば、16bit RAW動画の出力も可能。右側に内蔵冷却ファンからの放熱スリットが設けられているのも「FX3」と同様。
FX30
ボディ下部にも放熱スリットを装備。

SONY FX30 主な仕様

型名 ILME-FX30 (XLRハンドルユニット同梱)、ILME-FX30B (本体のみ)
マウント ソニーEマウント
有効画素数 動画撮影時 約2010万画素、静止画撮影時 約2600万画素
撮像素子 APS-Cサイズ (スーパー35mm) 裏面照射型 Exmor R CMOSセンサー
ISO感度 動画撮影時 ISO100〜32000相当、静止画撮影時 ISO100〜32000 (拡張 下限ISO50、上限ISO102400)
画像モニター 3.0型 約236万ドット バリアングル液晶モニター (タッチパネル)
記録媒体 CFexpress Type Aメモリーカード、SDHC/SDXCメモリーカード (UHS-II対応)
幅×高さ×奥行き 129.7×77.8×84.5mm (突起部を除く)
質量 562g (本体のみ) / 646g (バッテリー、メモリーカードを含む)
付属品 リチャージャブルバッテリーパック NP-FZ100、ACアダプター、ボディキャップ、アクセサリーシューキャップ、USB-A – USB-Cケーブル (USB 3.2)
※ILME-FX30はXLRハンドルユニット、ハンドルシューキャップも同梱