機材レポート

【ニコン歴代カメラ】ニコン S2 – すべてを一新したベストセラー機

1917年から2017年に至るニコン100年の歴史はカメラだけでは語れない。双眼鏡、顕微鏡、レンズ、測定・検査機器、測量機、半導体露光装置(ステッパー)、その他さまざまな光学製品やその応用技術から成り立っている。また、それは技術者のたゆまぬ研究・開発努力によって構築されてきたことは言うまでもない。ここでは、その長い道のりの第一歩から順を追って見ていく。

 

バリアブルファインダーやダイキャストボディなどすべてを一新したベストセラー機(since1954)

ニコンS2は1954年12月の発売。型番上ではニコンSの改良型という印象を受けるが、実はほとんど一からの新設計となっている。当初材料の品質の事情からダイキャストを断念して砂型鋳物を採用したボディを、品質の問題が解決したのでダイキ ャストに改め、なおかつ懸案であった画面サイズもライカ判のフルサイズである36×24㍉を実現。さらにシャッターも改良して最高速を1/1000秒とし、裏蓋の開閉などさまざまな点も改良。満を持して発売しようとした矢先に事件が起こったのである。

1954年の4月にドイツのケルンで開催された世界的な写真関係のトレードショーであるフォトキナで、ライカM3が発表されたのだ。その先進的なメカニズムには、日本光学のみならず、日本のカメラメーカーのすべてにとって衝撃的なものだった。レンズ交換で自動的に切り替わるブライトフレームファインダー、一軸不回転のシャッターダイヤル、レバーによるフィルム巻き上げ……。どれをとっても技術的に大きく引き離されたことを実感するものだった。

日本光学でも発売寸前だったS2の仕様を見直し、少しでもライカM3との差を縮める努力をすることになった。M3発表以前のニコンS2の仕様がどのようなものであって、M3以降どこを改良したのかは想像するしかないが、恐らくはアルバダ式のフレームの入った等倍ファインダーやレバー巻き上げは、後から追加したのだろう。こうしてその年の暮れに出たのがS2なのだ。

 

ニコンS2の特徴

ニコンSに比べ、S2は改良の跡が大きい。ファインダーは等倍となり、見やすくなってアルバダ式のフレームが入った。フィルム巻き上げはレバーになり巻き戻しもクランクが設けられて便利になっている。その洗練された使いやすさが人気を博し、Sシリーズ最大のベストセラーになった。

 

最高シャッター速度が1/1000秒までになった

S型までのニコンは最高速が1/500秒止まりであったが、S2では1/1000秒と高速化した。それに伴ってシャッター機構にも改良が加えられ、シャッター幕のバウンド防止の振り子ブレーキが設けられている。

 

大きく見やすいファインダーには50ミリのブライトフレームが追加

ファインダーにはアルバダ式のブライトフレームが入り、倍率も等倍になった。それに伴って接眼部も大型になっており、見やすくなった。ただ、フレームは50ミリ標準レンズ用のみで他のレンズには対応していない。

 

シンクロソケットはドイツ式規格に。シューにはフラッシュガン接点を追加

ニコンSの特殊規格の二芯タイプのシンクロソケットは一般的なドイツ式のものに変更になった。また、アクセサリーシューの前側には直結式の接点が設けられ、専用のガンでコードレスの使用が可能になった。


シンクロソケットは1組のみとなったので、フラッシュバルブ使用時には巻き戻しノブ周囲のダイヤルでタイムラグの調整を行う。Xポジションはストロボ用。巻き戻しノブにはクランクが設けられて便利になった。

 

ワンアクションに変更されて扱いやすくなった裏蓋の開閉。フィルムインジケーターも追加された

M型の刻印とシンクロ接点を備えた機種であるMS型の中にはシンクロソケットが赤いものがあり、「赤目ソケット」と呼ばれている。


ニコンSまではボディ底部の両端に裏蓋開閉のキーがあり、フィルム装填や取り出しの際にはその両方を操作する必要があったが、フィルム室側の1個のみを操作する形式に改められた。このキーの操作で専用のフィルムマガジンの開閉も行う。


もう一方のキーがあった位置にはフィルムインジケーターが新設。装填したフィルムの種別をここにセットしておく。赤文字はカラーフィルムを表す。

 

 

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