距離計運動機から一眼レフへ。そしてTTL測光から露出の自動化、各部の電子制御化と歩んできたカメラの歴史だが、キヤノン一眼レフには、そこにマントの進化が関係してくる。RからFL、FD、ニューFDと時代の流れを追いながら、それぞれの注目機をピックアップしてみよう。
FLマウントを採用した、シンプルな操作性を持つ2機種(since1964)
キヤノンフレックスに始まるRシリーズの経験を踏まえ、よりシンプルで発展性のある絞り連動機構に進化してスタートしたFLマウント・キヤノンの1号機が1964年4月発売のキヤノンFXである。外光式ながらCds受光素子を使用した露出計を内蔵。絞りとの連動はしていないタイプなので、選択したシャッター速度に対応する絞り値を読み取り、レンズ側に設定する方式だった。このメーターにセット可能なフィルム感度がISO10~800であることに、なんとなく郷愁の念を覚えてしまう。ちなみに、「FX」の名は、FLEXの最初のFと最後のXを意味する型式名だといわれている。連動システムの変更効果は大きく、巻き上げトルクの軽減化に加え、レンズ設計自由度の拡大にもつながっている。
FXはスッキリとしたデザインや、優れた操作性で人気モデルとなった。一方でプロ写真家からは、露出計はいらないから、撮影の道具に徹したカメラが欲しいという希望も多かった。そのニーズに応えるため、FXの露出計を省略し、プロには不評だったシャッターボタンのロック機構を排除して誕生したのが64年10月に発売されたFPである。それまでのキヤノンでは、モデル名の末尾に「P」が付くのは、機能を簡略化して価格を抑えた廉価版で、ポピュレール、つまり、庶民向けとか大衆向けを意味していたのだが、FPの場合は、価格的には廉価であったが、プロフェッショナルの「P」を表していたのだ。
CANON FXの特徴
FLマウント・キヤノンの1号機で、スッキリとしたデザインと、軽快な操作性で人気を得た。絞り値読み取り式ながらCds露出計が内蔵されている。
露出計とシャッターダイヤルを連動させる仕組み
FLマウントでは、レンズ側設定絞り値をボディ側に伝える連動機構がないので、メーターは、シャッター速度に対応する絞り値を読み取り、示されたF値を設定するタイプ。ある意味シャッター速度優先式だが、先に絞り値を決め、指針がその値を示すようシャッター速度を調整する絞り優先的な使用もできた。
メーターは、Cds受光素子を使用した高低二段切り替え式。バッテリーは1.3VのHD型水銀電池1個で、バッテリーチェック機構も装備されていた。測光域は、レバーをHに合わせれば高照度ポジションとなりEV9~18の測光連動域となり、低照度用のLに合わせるとEV1~10の範囲に対応する。設定可能ISO感度はISO10~800だった。
絞り連動機構のみのシンプルなマウント
Rマウントではレンズ内に備えていた自動絞り駆動スプリングをボディ内に移動し、連動機構をシンプル化したFLマウント。カメラ側の巻き上げとは関連なくレンズが開放復帰する。チャージ機構を動かす力が不要となり、巻き上げトルクも軽減化された。
レリーズの瞬間に設定絞り値まで絞り込むため、情報伝達は、駆動力を供給するボディ側からの一方通行。レンズ側の絞り値をボディに伝達する機能はなかった。
電源/ミラーアップレバー
メーター電源のオン/オフ切り替え、バッテリーチェックは、ボディ背面左上方にある薄型の円盤状スイッチで行う(写真左)。カメラを正面から見て右側にある小さなレバー(写真右)はミラーアップレバーで、シャッターチャージの前後に関わらず、必要に応じてミラーアップが可能で、戻すこともできる。