機材レポート

フルサイズミラーレス用F4標準ズーム比較!③ ボケ描写の“キレ”と“味”

フルサイズミラーレス機と共に発売された キヤノン、ニコン、ソニー各社のF4標準ズーム。 新時代に合わせ新たに設計・発売された レンズの実力は、今までとどのように違うのか。3本の“キレ”と“味”を「解像力・周辺画質」「逆光性能」「ボケ描写」「近接画質」の4項目で徹底チェックする。今回はボケ描写を比較した。

 

フルサイズミラーレス用F4標準ズーム比較

左から「キヤノン RF24-105mm F4 L IS USM」「ソニー FE 24-105mm F4 G OSS」「ニコン NIKKOR Z 24-70mm f/4 S」。キヤノンとソニーのズームは大きさ重さがほぼ同じ。対してニコンはテレ側が70mmまでで、構造も沈胴式にすることで見た目にはかなりコンパクト。通常、レンズのテストは画質が中心になるが、ここでは逆光性能やボケ描写までレンズとしての総合的な描写力を見ることにした。そして最新の技術で作られただけあって、いずれも高性能だがボケ描写には個性がある。

 

フルサイズミラーレス用F4標準ズーム比較
① 解像力・周辺画質の“キレ”と“味” https://getnavi.jp/capa/report/290726/
② 逆光時の“キレ”と“味” https://getnavi.jp/capa/report/291222/
④ 近接画質の“キレ”と“味” https://getnavi.jp/capa/report/292143/

 

フルサイズミラーレス用F4標準ズームの“キレ”と“味”を比較チェック!③ ボケ描写

微~小ボケにおける二線ボケや味そして口径食を見る
すべて開放時の後ボケをチェック。昼間の画像は、ワイド端におけるモデルの全身写真では後ろの小ボケの様子、テレ端では背景のボケとネックレスの微ボケの様子から味の有無がわかる。夜景の画像では画面周辺における背景の窓と街灯の点光源のボケから口径食の様子を見る。

<比較方法>

■ワイド端(24mm)

フルサイズミラーレス用F4標準ズーム比較!ボケ描写のキレと味

フルサイズミラーレス用F4標準ズーム比較!ボケ描写のキレと味

大口径レンズではないが開放時のボケの質をチェック
24mmもF4では背景をあまりぼかすことはできないが、そのぶん微~小ボケ領域におけるボケに注目したい。そしてこの微~小ボケは一般には二線ボケになりやすい。そこで①の写真では画面周辺という厳しいところの小ボケをチェック。②の夜景では口径食のチェックと同時に窓のような面積のある被写体と街灯などの点光源によるボケの違いを見る。

 
■テレ端(70・105mm)

フルサイズミラーレス用F4標準ズーム比較!ボケ描写のキレと味

フルサイズミラーレス用F4標準ズーム比較!ボケ描写のキレと味

ポートレートで重要なテレ側のボケ描写
③のポートレートでは背景のボケ描写が重要だが、これは前回の逆光性能チェックをご覧いただきたい。ここでは後方微ボケとなるネックレスにおけるレンズの味をチェック。④の夜景では画面周辺におけるF4開放時の口径食を見る。

 

■ワイド端

・キヤノン RF24-105mm F4 L IS USM(24mm)

キヤノン RF24-105mm F4 L IS USMボケ描写のキレと味

微~小ボケにおける二線ボケの傾向は、3レンズ中いちばん強い
ほぼ全画面にわたって点光源の小ボケは二線ボケになりテレ端時とは対照的。それも夜景くらいのボケ量になると二線ボケも弱まり周辺を除けば素直なボケに近づく。したがって背景で小さな点光源がぼけるときは被写体に近づいてボケを少しでも大きくするのがコツ。

 
・ソニー FE 24-105mm F4 G OSS(24mm)

ソニー FE 24-105mm F4 G OSSボケ描写のキレと味

ワイド端におけるボケ描写の傾向は、キヤノンとニコンの中間
点光源の小ボケは周辺を除けば円く、二線ボケはキヤノンより少ない。周辺ではボケは放射方向にややつぶれる。夜景のボケ量になると隅では口径食でやや四角くなるが、ほかは二線ボケも消えて円く素直なボケになる。キヤノンとニコンのちょうど中間といったボケ。

 
・ニコン NIKKOR Z 24-70mm f/4 S(24mm)

ニコン NIKKOR Z 24-70mm f/4 Sボケ描写のキレと味

3本ともワイド端の傾向は似ているが、二線ボケはもっとも少ない
点光源に対する小ボケは、画面周辺では円くはならず放射方向にやや伸びるものの二線ボケはもっとも少ない。画面隅では口径食によって形が放射方向にややつぶれる。夜景のボケ量になると点光源はほぼ素直なボケになるが隅では口径食によって四角い形に欠ける。

 

■テレ端

・キヤノン RF24-105mm F4 L IS USM(105mm)

キヤノン RF24-105mm F4 L IS USMボケ描写のキレと味

小ボケは3本とも似ているが後方微ボケにある味が好ましい
後方微~小ボケが滲んでおり、味があるのがネックレスの拡大からもわかり、これがなかなかいい。この味がズーム中間域にもあればさらに楽しいレンズになる。この味は逆光で輝く髪の毛にも感じられる。周辺に到るまでの後方小ボケは3 本の中では僅差ではあるがいい。

 
・ソニー FE 24-105mm F4 G OSS(105mm)

ソニー FE 24-105mm F4 G OSSボケ描写のキレと味

小ボケはキヤノンと同じだが微ボケが二線ボケになり味はない
微細な点光源に対する後方微ボケには二線ボケのようなざわつきが見られる。小ボケになると後ボケのほうが幾分柔らかく周辺でも比較的円く整ってくる。非球面レンズによる年輪ボケはほとんど出ない。夜景における口径食は隅で起きる程度でキヤノンとほぼ同じ。

 
・ニコン NIKKOR Z 24-70mm f/4 S(70mm)

ニコン NIKKOR Z 24-70mm f/4 Sボケ描写のキレと味

70mmという焦点距離ゆえにぼかす能力ではほかの2本に譲る
画面周辺における微細な点光源に対する微ボケは、非点収差の影響か乱れるが小ボケになると徐々に整ったボケになる。画面中央では後方微ボケが二線ボケになり、キヤノンとは逆のボケ方。夜景では素直で整ったボケになり、口径食は隅で急に現れる程度で少ない。

 

■キヤノン・テレ端における味のあるボケが好ましい

ボケ描写に関してはF4ということであまり重要視されない面もあるが、それでも開放で撮影すればボケは生じる。ここは機種による違いがあり、テレ側を重視すれば今回の3本の中ではキヤノンがいい。
 

 
〈写真・解説〉馬場信幸
〈モデル〉臼谷真実(LINK)