“最高6段分”を謳う手ブレ補正はスペックどおりの性能を発揮するのか?
S1Rはボディ内手ブレ補正(B.I.S)を搭載している、さらにレンズ内手ブレ補正を連動させることで(Dual I.S.2)最高6段分の補正を行う。机上の空論ではなく実際の現場で数字通り性能を発揮してくれるのだろうか?さっそく試してみた。
ISO50 F22 1/6秒 焦点距離68mm
こうした、「滝の流れ」を撮る場合、しっかり三脚を立てそこにカメラを置きNDフィルターを使いシャッターを切る。筆者の場合「流れ」を表現するシャッターの目安は、1/6秒を基準に遅くしたり速くしたりと、その日の状況によって変えていく。
ちなみにS1Rには「回折現象」を低減してくれる項目がカメラ内にあり、この写真はその設定をONにしている。通常、F22まで絞ると回折現象が起きてしまいディテールが滲んでしまうのだが、この設定をONにしておけば回折現象を低減してくれる。
さて本題の手ブレ補正についてだが、一般に手ブレが起きるシャッタースピードの目安は「焦点距離分の1秒」からと言われており、上の写真でいえば1/68秒から手ブレが目立つことになる。計算上では、補正1段で1/34秒、2段で1/17秒、3段で1/8.5秒、4段で1/4.25秒。この写真はシャッタースピードが1/6秒なので補正3.5段程度をクリアしていることになる。それでも十分スローシャッターである。
スペック的に「補正6段分」ということならまだいけるはずである。
ISO800 F7.1 1/3秒 焦点距離56mm
続いてはこの写真で見てみよう。手ブレの目安は焦点距離56mmなので1/56秒。補正1段で1/28秒、2段で1/14秒、3段で1/7秒、4段で1/3.5秒、5段で1/1.75秒ということで4.5段分くらいであろうか。普通に考えれば1/3秒でも結構しびれるシャッタースピードだ。S1Rはここでもキチンと補正している。しかし、公称6段にはまだ届いていない。
ISO200 F8 1秒 焦点距離60mm
さて最後にいよいよ秒の単位に入った補正である。手ブレの目安は焦点距離60mmということで1/60秒である。補正1段分で1/30秒、2段分で1/15秒、3段分で1/7.5秒、4段分で1/3.75秒、5段分で1/1.875秒、6段分で0.9875秒ということで約1秒と換算。公称通り6段分の補正が効いている。
考えてみれば1秒のシャッタースピードを補正するというのは相当補正が効いていることになる。もちろん棒立ちで撮影したわけではなく、撮影時は背中を壁に押し当て呼吸を整えてシャッターを切っているが、「秒」の単位の補正をしてくるのには驚きを隠せない。
【まとめ】S1Rは使い込むほどに馴染み、強い印象を残していった
パナソニック「LUMIX S1R」を携えた2週間の旅をまとめてみると、良い点、改良が必要な点など様々見えてきたのだが、総評として良いカメラだと筆者は思う。
ここまで記述してきたことをまとめると、筆者が優れていると感じたポイントは3つある。1つには豊かなグラデーション再現、2つ目に操作性の良さ、3つ目に調整幅の広さ。筆者にとってこの3つのポイントがS1Rらしさを感じるポイントであり、また優れているポイントだと感じた。
帰国翌日にはパナソニックに返却することが決まっていたので、後ろ髪引かれる思いで梱包し送り返したのだが、使い込むほどS1Rならではの発色とグラデーションが身体に馴染み、やがてS1Rありきの画が頭に浮かぶようになっていた。S1Rはそんな強い印象を残したカメラであった。
最後は美しい夕景を撮影してこの旅を終わりにしたいと思う。S1RはセンサーにAR(Anti Reflection)コーティング処理が施されているためフレアが発生しづらいようだ。