機材レポート

“高画素フルサイズ機”のポテンシャルを引き出す「レンズ」と「手ブレ補正」! パナソニック「S1R」と巡るアイルランドの旅【後編】

パナソニックのフルサイズミラーレスカメラ「LUMIX S1R(以下、S1R)」を相棒にアイルランドを巡る旅の第3弾。最終回となる本稿では、レンズの描写や手ブレ補正の効果をチェックしつつ、今回の旅を振り返りたい。

▲2019年3月23日に発売された「LUMIX S1R」。参考価格は税込50万990円(ボディ)

 

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S PROレンズの実力チェック「70-200mm F4」編

今回、アイルランドに持っていったレンズは3本。LUMIX S 24-105mm F4 MACRO O.I.S.、LUMIX S PRO 70-200mm F4 O.I.S.、LUMIX S PRO 50mm F1.4である。ここでは70-200mm F4と50mm F1.4の2本の「S PROレンズ」の撮り味を簡単にだが見ていこう。

 

まず、70-200mm F4から。長玉ではAF-Cと遠景の描写が気になるところ。AF-Cの動きだが、かもめが舞う海岸線があったためそこで動きを見てみることにした。この場所は下に海があり、そこから数羽のかもめが舞い上がってきていた。不規則な動きをするかもめはAF-Cの動きを見るのにちょうど良い被写体である。AFのモードをAF-Cへ変更し下の海岸線から舞い上がってくるかもめの眼にピントを合わせシャッターを切る。

拡大してみよう。

しっかりと眼を捉え、解像も良好だ。EVFのフレームレートも120fpsと回転が速いため動体を追いやすく、不規則な動きをするかもめでもファインダーの枠内に収めやすい。またAFの動きも細やかに動いていることがわかるので「シャッターの切り時」も掴みやすかった。

 

続いて望遠端開放F4の描写を見ていこう。次の写真は、かわいい子ヒツジが毛糸で遊んでいる姿を撮影したものだ。

拡大してみよう。

これもしっかりとピントが合い、顔付近の毛の解像も良好だ。

 

肝心の遠景の解像も見ておこう。圧縮効果を使い背景の山と教会を引っ張り込み望遠レンズらしい画にして撮影する。

拡大してみよう。

細部までしっかりと解像しており、教会の細かい石垣も質感が伝わってくるほどの解像を見せている。

 

広角端望遠端ともにF4通しながら安定した描写を見せるレンズだと言えるだろう。また、軸上色収差も非常に少ない印象のレンズであった。

 

S PROレンズの実力チェック「50mm F1.4」編

続いて50mm F1.4だ。開放から高性能を発揮するバランスの良い優等生タイプのレンズだという印象だ。ボケ味はもう少しなだらかさが欲しいところだが、開放から使っていけるレンズで各種収差も少なく、特に周辺の描写が良い印象だ。

 

次の2枚の写真は、いずれも開放F1.4で撮影したもの。

なんとこれが開放の周辺解像であろうか。周辺の描写は単焦点50mm開放の描写とは思えないほどしっかりと解像している。このほかにも様々なシチュエーションで撮影したが、今回撮影したものを見直してみると軸上色収差も極めて少ない印象のレンズであった。

“最高6段分”を謳う手ブレ補正はスペックどおりの性能を発揮するのか?

S1Rはボディ内手ブレ補正(B.I.S)を搭載している、さらにレンズ内手ブレ補正を連動させることで(Dual I.S.2)最高6段分の補正を行う。机上の空論ではなく実際の現場で数字通り性能を発揮してくれるのだろうか?さっそく試してみた。

ISO50 F22 1/6秒 焦点距離68mm

 

こうした、「滝の流れ」を撮る場合、しっかり三脚を立てそこにカメラを置きNDフィルターを使いシャッターを切る。筆者の場合「流れ」を表現するシャッターの目安は、1/6秒を基準に遅くしたり速くしたりと、その日の状況によって変えていく。

 

ちなみにS1Rには「回折現象」を低減してくれる項目がカメラ内にあり、この写真はその設定をONにしている。通常、F22まで絞ると回折現象が起きてしまいディテールが滲んでしまうのだが、この設定をONにしておけば回折現象を低減してくれる。

 

さて本題の手ブレ補正についてだが、一般に手ブレが起きるシャッタースピードの目安は「焦点距離分の1秒」からと言われており、上の写真でいえば1/68秒から手ブレが目立つことになる。計算上では、補正1段で1/34秒、2段で1/17秒、3段で1/8.5秒、4段で1/4.25秒。この写真はシャッタースピードが1/6秒なので補正3.5段程度をクリアしていることになる。それでも十分スローシャッターである。

 

スペック的に「補正6段分」ということならまだいけるはずである。

ISO800 F7.1 1/3秒 焦点距離56mm

 

続いてはこの写真で見てみよう。手ブレの目安は焦点距離56mmなので1/56秒。補正1段で1/28秒、2段で1/14秒、3段で1/7秒、4段で1/3.5秒、5段で1/1.75秒ということで4.5段分くらいであろうか。普通に考えれば1/3秒でも結構しびれるシャッタースピードだ。S1Rはここでもキチンと補正している。しかし、公称6段にはまだ届いていない。

ISO200 F8 1秒 焦点距離60mm

 

さて最後にいよいよ秒の単位に入った補正である。手ブレの目安は焦点距離60mmということで1/60秒である。補正1段分で1/30秒、2段分で1/15秒、3段分で1/7.5秒、4段分で1/3.75秒、5段分で1/1.875秒、6段分で0.9875秒ということで約1秒と換算。公称通り6段分の補正が効いている。

 

考えてみれば1秒のシャッタースピードを補正するというのは相当補正が効いていることになる。もちろん棒立ちで撮影したわけではなく、撮影時は背中を壁に押し当て呼吸を整えてシャッターを切っているが、「秒」の単位の補正をしてくるのには驚きを隠せない。

 

【まとめ】S1Rは使い込むほどに馴染み、強い印象を残していった

パナソニック「LUMIX S1R」を携えた2週間の旅をまとめてみると、良い点、改良が必要な点など様々見えてきたのだが、総評として良いカメラだと筆者は思う。

 

ここまで記述してきたことをまとめると、筆者が優れていると感じたポイントは3つある。1つには豊かなグラデーション再現、2つ目に操作性の良さ、3つ目に調整幅の広さ。筆者にとってこの3つのポイントがS1Rらしさを感じるポイントであり、また優れているポイントだと感じた。

 

帰国翌日にはパナソニックに返却することが決まっていたので、後ろ髪引かれる思いで梱包し送り返したのだが、使い込むほどS1Rならではの発色とグラデーションが身体に馴染み、やがてS1Rありきの画が頭に浮かぶようになっていた。S1Rはそんな強い印象を残したカメラであった。

 

最後は美しい夕景を撮影してこの旅を終わりにしたいと思う。S1RはセンサーにAR(Anti Reflection)コーティング処理が施されているためフレアが発生しづらいようだ。