機材レポート

まるで高倍率ズームレンズのような1本3指向性で使い勝手良好! ソニー「ショットガンマイクロホン ECM-B1M」レビュー

動画サイトYouTubeというと相変わらず商品紹介や食べ歩記、面白チャレンジ系動画が多いが、山岳風景動画やタイムラプス夜景、ネイチャー系野生動植物動画も相当数公開されている。特に4Kで撮影された作品には自然系及び旅行系のTV番組に迫る高画質高品位な作品も多く、風景を静止画で撮るカメラマンでも少なからず興味を持たれるはずだ。というわけで、動画に不可欠な音声を録るマイクロホンの新製品をテストしてみた。

 

1本で3つの指向性を切り替えられる

SONYショットガンマイクロホンECM-B1Mは、α7R Ⅳと同時に発売された新製品だ。メーカーwebサイトによれば『高性能な8つのマイクユニットとデジタルシグナルプロセッサ(DSP)を内蔵した新開発システムにより、全長99.3mmのコンパクトな筐体と鋭指向性の両立および、3つの指向性(全指向性、単一指向性、鋭指向性)の切り替えを実現』というのが特徴だ。


▲全長10センチ未満のコンパクトな筐体は、天面に8個のマイクホールを持つ。

 


▲一般的なマイクらしい形状とは異なる、直線基調のマイクらしからぬデザインだ。

 


▲外観では分かりづらいが本体シューマウント近くには防振構造を採用しており、揺れから発生する雑音を軽減する構造だ。

 


▲標準装備されているファータイプのウインドスクリーンは屋外使用時の必需品。ウインドスクリーンを装着したほうが、マイクらしい姿といえる。

 


▲シューマウントはソニーのマルチインターフェースタイプで、同型を採用するカメラならばほぼ装着可能。ケーブルによる接続設定はなく、マルチインターフェースシューを持たないカメラには装着不可と割り切った仕様だ。

 


▲背面に配された各種スイッチ。左上がデジタル/アナログスイッチ。α7R Ⅳ以外のモデルではアナログにて使用可能。左下は不要な雑音を抑制するフィルタースイッチで、屋外撮影で避けられない風切り音の低減に効果を発揮。右上が指向性切り替えスイッチで、上から鋭指向性/単一指向性/全指向性。集音特性がそのままイラスト化されていてわかりやすい。

デジタルならではの「音声をデジタル信号のままダイレクトに伝送できるため、ノイズを徹底的に抑制した高音質伝送が可能」というメリットは、残念ながら現状ではα7R Ⅳとの組み合わせのみで発揮されるが、他の基本性能はソニー製カメラの多くでも活用可能だ。今回はα7R Ⅲに装着し、アナログモードでこれをテストしてみた。

今回、特に注目したのが指向性の切り替え機能だ。このマイクには「鋭指向性・周囲の音を抑え、カメラ正面の音を強調」「単一指向性・背後の音は抑えつつ、前方の音を幅広く収録可能」「全指向性・すべての方向に等しく感度を保つ」という異なる3つの指向性が与えられている。この指向性切り替え機能が特に役立ちそうなのが、野鳥動画の撮影だ。

例えば夜明けとともに鳴き始める野鳥の鳴き声をバックに、高原や野山の風景を撮影する場面。ここでは鳥のさえずりに包まれるような感覚を、全指向性の設定で録りたい。

一方、数少ない珍しい鳥や、カワセミなど、被写体として美しい鳥が現れる場面では鋭指向性の設定で録りたい。こうした場にはデジタル一眼+超望遠レンズという装備の野鳥撮影ファンが大挙集まり、お目当ての野鳥が現れるや凄まじい勢いで一斉に連写するということが多い。そんな環境下でスチール撮影カメラマンと横一列に並んで動画を撮影すると、動画には盛大なシャッター音が収録されてしまう。ここで鋭指向を選択すれば、左右背後からのシャッター音も抑制できそうではないか。以下が実際に試した動画だ。

さて結果だが、鋭指向は全指向と比較して、左右背後からのシャッター音を確実に軽減することができた。しかし完全に聞こえなくなるようなレベルではないため、シャッター音の遮音を過度に期待するのは止めたほうがいいだろう。

もちろん、通常であれば指向性が異なる2、3本のマイクを要するところを、1本のマイクで可能とした機能は素晴らしい。レンズに例えれば広角から超望遠までを1本でこなす、高倍率ズームレンズのようなマイクである。価格は決して安くはないが多機能ぶりを評価すれば、是非とも用意したい装備である。