周辺光量落ち比較
「周辺光量落ち」とは、画面の四隅が暗くなる現象のこと。晴天の青空などを撮影すると画面の四隅だけが暗くなるのに気づく方も多いのではないだろうか。これは、レンズ中心部分 (光軸) よりも周辺部分が光を通す量が少ない (暗い) ために発生する。
「周辺光量落ち」が発生する原因は大きくふたつで、ひとつは「口径食」。光軸に対して一定以上の角度で入ってきた光が、絞りの前後のレンズ径や内部構造物などに邪魔され、周辺部分が中央部よりも暗くなる現象。ぼけディスクチャートでは、ぼけの形がラクビーボール形や一部が欠けたようになり、絞り開放付近で影響が顕著に現れる (「70mm ぼけディスクチャート」F2.8の周辺や「24mm ぼけディスクチャート」F2.8の周辺などがわかりやすい)。
もうひとつは「コサイン4乗則」による影響だ。撮影像素子に対してまっすぐにレンズに入った光と周辺部から角度をもって入ってきた光とでは、明るさが異なるという現象が起きる。これを計算する際にコサイン4乗を含む計算式が使われるので「コサイン4乗則」という。「コサイン4乗則」の影響は、絞りを絞っても変化しないが、「口径食」による影響は変化する。ここでは、絞りを絞ることで変化する「口径食」による周辺光量落ちの程度を観察するために、フラットにライティングした半透明のアクリル板を撮影している。
撮影条件 : 絞り優先AEにて各絞りで撮影 / マニュアルフォーカス / ISO感度 : 100 / WB : オート (雰囲気優先) / ピクチャースタイル : スタンダード / JPEGラージ / ファイン / その他 : レンズ光学補正などはカメラ (EOS R) の初期設定のまま / LEDライト使用 / EF24-70mm F2.8L II USM + コントロールリングマウントアダプター EF-EOS R
広角端24mm開放付近では「EF24-70mm F2.8L II USM」が優位
周辺光量落ちの結果は、どちらのレンズも大きな差はないといえる。また、どちらのレンズも広角端、望遠端ともに絞り開放付近で周辺光量落ちが観察できる。しかし特段気にするレベルではない。実際の撮影シーンで頻繁に気になるほどの発生量ではなく、しかも気になるシーンではRAW画像も撮影しておけば、RAW現像時などの後処理で対処できる程度といえる。
広角端24mmの結果
■24mm 周辺光量落ち
左がRF24-70mm F2.8 L IS USM、右がEF24-70mm F2.8L II USM。
広角端24mmから詳細に見ていくと、どちらのレンズも絞り開放のF2.8では、周辺光量が落ちて、画面の四隅がそれぞれ暗くなっていることがわかる。「24mm 周辺光量落ち」F2.8をみると、開放のF2.8では、わずかにであるが「EF24-70mm F2.8L II USM」よりも「RF24-70mm F2.8 L IS USM」のほうが四隅の暗くなっている濃度が高く、範囲も広い、そのため「周辺光量落ち」の発生量が多く感じられる。どちらのレンズも絞りを絞ると改善するレベルのもので、F5.6あたりでほぼ気にならなくなるだろう。
望遠端70mmの結果
■70mm 周辺光量落ち
左がRF24-70mm F2.8 L IS USM、右がEF24-70mm F2.8L II USM。
望遠端の70mm側についても、どちらのレンズも絞り開放のF2.8で画面の四隅がやや暗いのがわかる。とはいえ、その程度は24mm側よりも軽微に抑えられている。F5.6まで絞るとほとんど消えてしまうので、さほど気にする必要のあるレベルとは思わない。これも2本とも同じ傾向だ。
レンズ光学補正の周辺光量補正はON
「RF24-70mm F2.8 L IS USM」「EF24-70mm F2.8L II USM」ともに、テストに使用した「EOS R」の初期設定であるレンズ光学補正の周辺光量補正をONの状態でテストしている。この恩恵もあるだろうが、どちらのレンズでもさほど周辺光量落ちを気にする必要は感じない。どうしても気になるシーンでは少し絞るか、RAW画像も撮影しておき、後処理で対処するとよいだろう。ただし、比較的デジタルでの補正が容易といわれる周辺光量補正だが、キヤノン以外のカメラも含め、カメラの初期設定で完全になくなるほど補正していることはほぼない。わざと残していると感じる傾向だ。
また、デジタル一眼レフ時代のレンズよりもミラーレス一眼時代といえる現代の最新レンズのほうが、周辺光量落ちについては光学的に補正するのではなく、カメラ本体やRAW現像などのデジタルによる補正に頼る傾向が強いように感じられるのもおもしろいところである。