実写作例チェック
シャープな遠景描写、やわらかな近接開放
対岸の工場を撮影した1枚。F8.0まで絞った遠距離の風景の描写は驚くほどシャープで気持ちがよい。
絞り開放の描写だが、ある程度撮影距離があるため球面収差の影響は感じられない。
絞り開放、最短撮影距離付近で球面収差によるソフト効果をねらった。掲載サイズでどこまでわかるだろうか。
高画質でコンパクト、しかも+αの常用したい1本
結論からいうなら、「SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary」はすごくいい。コンパクトで軽量、しかも金属の質感も高く、デザインも所有欲を満たしてくれる。しかも写りは解像力、ぼけともに優秀だ。さらに大きなポイントは近接撮影能力の高さ。いつもカメラに着けておく常用レンズを標準単焦点レンズにした場合、身のまわりのものをアップで撮影したいと思ったときに意外と寄れないことを不満に思うことが多いだろう。だが、最短撮影距離24cm、最大撮影倍率0.25倍の「SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary」で寄れないという不満を感じることはない。この点は、常用レンズとしては大きなアドバンテージだ。
■美しいぼけが存分に楽しめる
筆者だけかもしれないが、「SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary」は意図的に球面収差を残した、ややじゃじゃ馬的なレンズなのではというイメージがあった。しかしチャート撮影の結果から、これは完全な誤解だと感じた。基本的に「SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary」は、とても優等生的な標準単焦点レンズなのである。
筆者は、比較的近接もしくは中距離と感じている約70cmの距離での解像力チャート撮影でも、球面収差によるソフト描写の影響はほぼ感じない。中央部は絞り開放からシャープで、周辺部も中央部よりはあまいものの、F8.0前後まで絞れば画面全体で高い解像力を発揮してくれる。ぼけについても形、質ともに優秀で、近接撮影に強いため、開放F値が2.8と暗いが条件によっては大きく、美しいぼけが存分に楽しめるのだ。十分以上の結果である。
■+αのソフト描写の魅力
しかも「SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary」には、この優等生以上の楽しみがある。+αである。筆者はここに強く引かれた。先にも述べたが、シグマのWEBページで大曽根氏がいうところの「球面収差の影響で解像しているが、うっすらとベールをかぶったような描写で解像力は高い状態」。よくいわれる「芯はあるがにじむようなソフトな描写」がこのレンズでもどこかで得られるはずである。筆者はこれを探した。
クラッシクレンズなどでは、開放付近でなにもせずとも、そのまま発生するレンズも多い、このソフト描写。「SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary」は、しっかりと制御されているので、単純に開放で撮影しただけでは、ほぼ観察されない。解像力チャートを利用して、条件を変えて観察したところによると、絞り開放の最短撮影距離に近いような近接撮影で、確かに「ベールをかぶったような、紗が掛かったような解像しているがソフトな描写」が得られることがわかった。同じ撮影条件でもF4.0位まで絞ったり、撮影距離が遠くなっても消えてしまう。
だが、このソフト描写の発生を理解していると、作例でも掲載したように子どもや赤ちゃんの撮影、女性ポートレートなどで「芯はあるが、にじむようなソフトな描写」が楽しめる。それがわかっていれば、不要なシーンではちょっと絞るか、撮影距離を変更すれば消せるので大きな問題になることはない。非常に魅力的な+αなのである。普段からカメラに着けて、使い込みたい1本だ。
技術監修:小山壯二