伊達淳一のレンズパラダイス『CAPA』2021年12月号 Other Shots
伊達淳一カメラマンがさまざまなレンズを使い倒しレビューする『CAPA』本誌人気連載の「レンズパラダイス」。2021年12月号の「レンズパラダイス」Other Shotsでは、マイクロフォーサーズマウント用に登場した、広角~標準の幅広い焦点域をF4通しでカバーするOM SYSTEMの「M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO」と、開放F1.7の明るさを実現したパナソニックの中望遠ズーム「LEICA DG VARIO-SUMMILUX 25-50mm / F1.7 ASPH.」をチェック。実写作例で描写性能を見ていこう。
OM SYSTEM M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO
少し絞るだけでパンフォーカス的表現ができる
千葉県佐倉市のふるさと広場。フルサイズと比べれば、マイクロフォーサーズは被写界深度が深いので、広角レンズであればちょっと絞るだけでパンフォーカス的な撮影ができるのが強み。手前のコスモスから奥の風車まで、小絞りボケで解像が鈍ることなく、くっきりシャープな描写だ。
画面中央から周辺まで高い解像とコントラスト
佐倉ふるさと広場の風車“リーフデ”をワイド端で撮影。換算16mm相当の画角なので、標準ズームでは後ろに下がらないと画面に収まらない大きな被写体も近くから撮影できる。画面中央から周辺まで一貫して高い解像とコントラストが得られている。
ゴーストは悪目立ちせず、フレアは少なめ
逆光耐性と光条の出方をチェックするため、太陽を画面内に入れ、絞り込んで撮影。わずかにゴーストは出るが、それほど悪目立ちせず、フレアは少なめ。光条の線も比較的細めだ。F22まで絞ったほうが光条は伸びるが、小絞りボケで解像が明らかに低下するので、F14あたりがベストだ。
テレ端の後方微ボケは柔らかく、自然な奥行き感
テレ端開放でコスモスを撮影。換算50mm相当の画角までカバーする超広角ズームなので、標準ズームに付け換える頻度が少なくて済むのは便利。被写体にかなり近づかないと、前後を大きくぼかせないが、後方の微ボケは柔らかで、自然な奥行きが感じられる。
フレアは少なく逆光でもクリアな描写
花びらの色がきれいなコスモスだったので、逆光からローアングルで狙ってみた。花びらの透明感を出すため、太陽の周りが白トビするのを覚悟で大胆にプラスの露出補正をかけているが、フレアはそれほど多くなく、青空を背景にハイキーな仕上がりにすることができた。
フィルターが装着できて便利
河口湖湖畔の大石公園にて。輝度差を補うため、KANI「Dual Purpose GND 0.9」のソフト側をかけて撮影しているが、撮って出しでこの仕上がり。72mmのフィルターが装着できるので、円形フィルターや100mm幅の角形フィルターが使えるのはありがたい。
高感度NRをかけても解像感の低下が少ない
横浜関内の猫カフェ Miysisにて。開放F4なので室内撮影で被写体ブレを避けるにはかなり高感度になってしまい、マイクロフォーサーズ的にはちょっと厳しいシチュエーション。しかし、解像とコントラストが高いレンズなので、高感度NRがかかっても、しっかりエッジが残り、解像感の低下は少なめだ。
少し絞ればテレ端でもパンフォーカス表現が可能
河口湖大石公園のコキア。広角に見えるかもしれないが、実はテレ端の50mm相当の画角。ごく近景を入れていないので、F9.0まで絞れば手前のコキアから富士山まで、ピクセル等倍でチェックしても、ほぼパンフォーカスで撮影できていて、周辺までビシッとシャープな解像だ。
光条と解像のバランスはF14あたりがベスト
解像性能的にはF5.6~8がベストな絞り値だが、光条は短めで線も太め。F11まで絞ると光条の線が細く長くなり、F22まで絞るともっともシャープな光条が得られる。ただ、光の回折の影響による小絞りボケが顕著になり、拡大してみるとコキアの葉っぱがぼやけていて、コントラストも低下している。F16でも小絞りボケの影響は残るが、F22よりはだいぶマシ。個人的にはF14あたりが光条と解像のバランスがよいと思う。KANI「Dual Purpose GND 0.9」ハード側を使用。
■光条と小絞りボケの比較 (F8)
■光条と小絞りボケの比較 (F11)
■光条と小絞りボケの比較 (F16)
■光条と小絞りボケの比較 (F22)
パナソニック LEICA DG VARIO-SUMMILUX 25-50mm / F1.7 ASPH.
絞り開放でも周辺減光は少なくピント面も安定した解像
テレ端開放で撮影。F1.7と開放F値が明るいので、屋外ではメカシャッター上限の1/8000秒を超えてしまうが、GH5IIやE-M1Xなどの機種は電子シャッターを使えば1/8000秒を超える高速シャッターが切れるので、NDフィルターを使うことなく絞り開放撮影が楽しめる。絞り開放でも周辺減光は少なく、ピント面にもにじみはなく、安定した解像だ。
後方微ボケがやや二線ボケ傾向
色づき始めたコキアで前後のボケをチェック。開放F1.7でもピント面はキリッとシャープで、にじみや解像の乱れもなく、解像度の高さをうかがわせる線の細い描写。後方の微ボケは少し二線ボケ傾向が見られるが、マイクロフォーサーズとしては被写界深度が浅いので、概ねフワッと柔らかくぼかすことができる。
大口径ズームの開放とは思えない近接撮影時の解像力
最短撮影距離はズーム全域で28センチなので、テレ端で撮影すれば換算100mmの画角で28センチまで近寄れる。しかも開放F1.7と明るいので、近接撮影時の被写界深度はかなり浅い。ピント合わせには苦労するが、ピントの合っている面はキレのよい解像で、大口径ズームの開放描写とは思えないほどだ。
暗所において速いシャッターが切れるのは強み
横浜関内の猫カフェMiysisにて。キャットタワーの下から覗き込むように撮影。開放F1.7と明るいので、あまり明るくはない室内撮影でもそれほど高感度にせずに、速いシャッターが切れる。ピントが合った目やヒゲはくっきり、それでいて猫のフワッとした毛並みの再現もうまく両立できている。
前後のボケに色づきはなくスッキリとした描写
ワイド端絞り開放で撮影。テレ側よりも被写界深度が深いとはいえ、開放F1.7でこの距離の撮影では、目にピントを合わせると鼻先はかろうじて被写界深度でカバーできるが、耳はわずかにボケ始めている。白い毛並みやヒゲの描写を見ればわかるように、前後のボケに色づきはなく、スッキリとしたボケ描写だ。
F5.6まで絞っても画質向上は少ないが高い解像を維持
熱帯スイレンの花と手前の葉っぱの両方を被写界深度内に収めるため、F5.6まで絞って撮影。開放絞りでも十分な画質なので、絞ったからといって急激に画質が向上するわけではないが、必要な被写界深度を得るためには適切な絞り値まで絞ることも大切だ。ただ、絞り過ぎるとせっかくの解像性能が低下してくるので、絞り過ぎには気を付けよう。
高い解像感と柔らかいボケが両立した描写性能
雨の植物園を散策。雨粒の付いた葉っぱがフォトジェニックだったので、適切な画角にズーム調整して、ポイントとなる一連の葉っぱがぼけすぎないように1段ちょっと絞って撮影。解像感の高さとボケの柔らかさが見事に両立していて、葉っぱや水滴の質感がリアルに感じられる。
速いシャッターが切れ、前後を大きくぼかせるのは強み
同じく雨の植物園で、雨粒に濡れた秋バラを撮影。花びらにクリスタルビーズを散りばめたようにキラキラと光ってキレイだが、実際はかなり薄暗く、どんよりとした小雨模様。しかし、開放F1.7と明るいので、基準感度のISO200でも速いシャッターが切れ、浅い被写界深度で前後を大きくぼかすことができている。
前後をぼかしたマクロ的な表現も可能
ハイビスカスの雌しべにピントを合わせようとしたが、開放F1.7の近接撮影は思いのほか被写界深度が浅く、狙っていたピント位置よりもわずかに後ピン気味。ただ、手前の雄しべの花粉にうまくピントが来ているので、全体のバランスとしてはまずまずの仕上がりだろう。このようにフワッと前後をぼかしたマクロ的な撮影も楽しめる。
MFTとしては巨大だがそれだけの価値はある
テレ端開放で最短撮影距離付近で撮影。花のどこにピントを合わせるべきか、泣きたくなるほど被写界深度が浅い。悩んだ末、黄色いシベにピントを合わせつつ、上の紫色のつぼみにもある程度ピントが来る角度を探して撮影した。マイクロフォーサーズとしては巨大だが、それだけの価値はあるレンズだ。
※参考価格は記事執筆時点の量販店価格です。