
明るさやコントラスト、色調などの基本補正に加え、多彩な合成機能も備えた高機能RAW現像ソフトが、市川ソフトラボラトリーの「SILKYPIX Developer Studio Pro」。最新の「SILKYPIX Developer Studio Pro 11」において特に注目したいのが、被写体の細かなディテールをしっかり再現してくれる「クリアビュー」だ。新デモザイク処理により解像感がアップし、被写体の質感の再現性も向上する。また、「ノイズリダクション」の効果も非常に高い。さらに、ノイズ低減処理をしながら被写体のディテールは失いにくいのが特徴だ。
「SILKYPIX Developer Studio Pro 11」のユーザーであれば、これらの機能を常用することができる。しかし他社製RAW現像ソフトに馴染んでいる人は、ワークフローはできるだけ変えたくないだろう。そこで、いつものRAW現像でもSILKYPIXのクリアビューやノイズリダクションが使えたら、という声に応えたのが「SILKYPIX RAW Converter」だ。

SILKYPIXならではの機能でRAWデータを高画質化できる
「SILKYPIX RAW Converter」は、オリジナルのRAWデータを元に「クリアビュー」「シャープ」「ノイズリダクション」を行い、その後にDNG形式のRAWで書き出すソフトだ。処理されたDNGファイルを普段使用しているRAW現像ソフトで開けば、後はいつものワークフローで処理できる。つまり「いつものRAW現像作業」に「SILKYPIXならではの機能」が追加できるのだ。また、DNGだけでなくTIFF (16bit) やJPEGに変換することもできる。

変換ボタンを押すだけという驚きのカンタン操作
使い方はとてもシンプル。基本的にはRAW現像するファイルを選び、保存場所を指定して変換ボタンを押すだけだ。好みに応じて、圧縮形式や適用するパラメーターの選択などもできるから、使いこなせれば、RAW現像の強い味方になってくれること間違いなしだ。
①「SILKYPIX RAW Converter」に画像を読み込む
「SILKYPIX RAW Converter」を起動したところ。操作部はラジオボタンとプルダウンメニューのみで構成され、とてもシンプルだ。
「ファイルを開く」、またはWindowsのエクスプローラー上から現像したいRAWファイルを選び「開く」ボタンをクリックするか、ソフト上にドロップする。
撮影したRAWデータのフォルダすべてを変換したい場合は、フォルダごとドロップする。ここでも「SILKYPIX RAW Converter」の使いやすさが感じられる。
② 出力形式と適用するパラメータの選択
変換したいRAWデータが開いたら、出力する形式を選び、適用するパラメータを確認、必要なら変更する。その後は、変換後のデータの保存先の指定と、必要ならファイル名の変更を行うだけの簡単操作だ。
「SILKYPIX RAW Converter」で写真に適用できるパラメータは、「デモザイクエンジン」「シャープ」「ノイズリダクション」の3種類。デモザイクエンジンは「クリアビュー」、シャープとノイズリダクションは「ON」が初期設定となる。
デモザイクエンジンの「クリアビュー」は、ベイヤー配列の撮像素子で撮影したRAWデータのみ有効となり、それ以外の特殊な撮像素子では「標準」になるので注意しよう。シャープは「SILKYPIX Developer Studio」の「ナチュラルシャープ」に相当するシャープネスが適用される。ノイズリダクションは「SILKYPIX Developer Studio」の「標準」相当の効果が適用される。
③ 保存先の指定とファイル名の変更
「出力先」から変換したファイルをどこに保存するかを指定できる。「指定したフォルダ」を選択すると、任意のフォルダに変換したファイルを保存可能となる。
変換するファイルには、出力時のファイル名を自由に指定が可能だ。「任意文字」「パターン」「連番」から選んで、三つまで加えることができる。必要なければ「指定なし」を選ぶ。
「パターン」では、「撮影日」「撮影時」「撮影日時」「撮影状態-1」「撮影状態-2」から選べる。「撮影状態-1」は、ISO感度、絞り値、シャッター速度。「撮影状態-2」にはさらに焦点距離が加わる。
④ 変換の完了
選択や保存先の指定を終えたら、右下の「変換」ボタンを押すと変換が開始される。変換が終了すると、画面左上の「ステータス」が「変換済み」と表示される。
エクスプローラーや画像閲覧ソフトで保存先を開くと、DNGに変換されたデータが保存されているのがわかる。
「SILKYPIX RAW Converter」を使うときのポイント
DNG形式で出力する場合は圧縮率に注意
出力形式で「DNG」を選ぶ場合は、圧縮率を3種類から選べる。「非圧縮」「ロスレス圧縮」「ロッシー圧縮」だ。
「ロスレス圧縮」は、非圧縮と同じ最高画質を得ながら、ファイルサイズを小さくできる。ただし変換にかかる時間は長くなる。4500万画素クラスのデータでは、「非圧縮」は変換に約20秒かかり、ファイルサイズは約270MB、「ロスレス圧縮」は変換に約24秒かかるものの、ファイルサイズは約200MBだった。変換時間を短くしたい場合は「非圧縮」、ファイルサイズを優先する場合は「ロスレス圧縮」を選ぶといいだろう。
また「ロッシー圧縮」は、一部データを間引いて圧縮するため画質は落ちるものの、ファイルサイズをさらに小さくできる。4500万画素でも約28MBにできた。Web用など小さいサイズで使用したい場合に有効だ。変換時間は約20秒だった (CPU Core i7-9700F 3.00GHz、RAM 32GBのパソコンを使用)。
スクリーンネイルサイズと出力サイズの違い
「スクリーンネイルサイズ」は、パソコンなどで表示するための画像サイズの選択。RAWはまだ画像になる前の状態なので、仮の画像を表示している。オリジナルと同じにしたい場合は「等倍」、小さくて構わない場合は「50%」、必要ないなら「なし」を選ぶ。
「出力サイズ」は、画素数の変更だ。オリジナルと同じ画素数の場合は「等倍」、画素数を減らしたい場合は「倍率指定」を使い、「75%」「50%」「25%」から選べる。大伸しプリント、L判プリント、Web用など、用途に応じた設定が可能だ。
効果の二重がけを防ぐには?
「SILKYPIX RAW Converter」で変換したDNGファイルを「SILKYPIX Developer Studio」で現像すると、SILKYPIXの効果が二重がけになってしまう。その場合はオプションの「EXIF情報のメーカー名・モデル名を編集する」のチェックボックスにチェックを入れること。「先頭に “_” を対加」もしくは「削除」でEXIF情報を削除する。
どこが違う? 現像した画像を比較
ここからはカメラで撮影したカメラのJPEGデータと、他社製RAW現像ソフトでRAWからストレート現像したデータ、そして「SILKYPIX RAW Converter」を使用してDNG変換をし、それをストレート現像したデータを比べてみよう。さらに「SILKYPIX RAW Converter」の各パラメータを切り替えた場合の変化も試してみた。
細部の解像感と青空を比較 ①
■カメラ内処理のJPEG
■他社RAW現像ソフトで現像
カメラ内処理のJPEGとほぼ同じ仕上がりだ。
■「SILKYPIX RAW Converter」でストレートにDNG変換
デモザイクエンジンは「クリアビュー」、シャープとノイズリダクションは「ON」。カメラ内処理や他社RAW現像と比べて、細かい部分の解像感が非常に高いのがわかる。また、青空の色も自然だ。
■「SILKYPIX RAW Converter」でパラメータを変更してDNG変換
デモザイクエンジンを「標準」に変更。「シャープ」「ノイズリダクション」は「ON」に設定した。「クリアビュー」ほどの解像感はないものの、植物や壁はシャープだ。硬すぎず、自然な雰囲気を出したい表現に向いている。
細部の解像感と青空を比較 ②
■カメラ内処理のJPEG
■他社RAW現像ソフトで現像したJPEG
■「SILKYPIX RAW Converter」でストレートにDNG変換
デモザイクエンジンは「クリアビュー」、シャープとノイズリダクションは「ON」。カメラ内処理や他社RAW現像ソフトでも十分解像力は高いが、「SILKYPIX RAW Converter」はさらに一枚幕を剥がしたかのような高い解像感だ。また、この写真でも青空が最も自然な色で再現されている。
■「SILKYPIX RAW Converter」でパラメータを変更してDNG変換
デモザイクエンジンは「クリアビュー」、シャープを「OFF」、ノイズリダクションは「ON」にした。シャープが「ON」と比べてカリカリした印象がなく、拡大しても自然な仕上がりだ。それでいてビルや植物、橋などの質感は「クリアビュー」のおかげでとても高い。
ノイズとディテールを比較
■カメラ内処理のJPEG
APS-Cサイズの2400万画素カメラを使用し、ISO6400で撮影した。ノイズリダクションがよく効いていてノイズ感はないものの、人形の髪やレースのディテールが失われてしまった。
■他社RAW現像ソフトで現像したJPEG
カメラ内処理よりはディテールが失われていないものの、ノイズ感が高くザラザラだ。
■「SILKYPIX RAW Converter」でストレートにDNG変換
デモザイクエンジンは「クリアビュー」、シャープとノイズリダクションは「ON」。他社RAW現像よりノイズが細かく目立ちにくい。しかも人形の髪やレース部分のディテールもよく再現されている。立体感のある仕上がりだ。
■「SILKYPIX RAW Converter」でパラメータを変更してDNG変換
デモザイクエンジンは「クリアビュー」、シャープは「ON」、ノイズリダクションは「OFF」に設定した。やはりノイズは目立つが、クリアビューやシャープのおかげでディテール再現は優れている。高ISOでもノイズ低減よりディテール重視の表現に向いた設定だ。
「SILKYPIX RAW Converter」を使うメリット
色再現性の高さが大きなメリット
この画像では、鮮やかな服の色がイメージ通りに再現された。先の比較でも「SILKYPIX RAW Converter」の空の色が最も自然だったように、色の再現性の高さは大きな特徴だ。撮影したときに記憶した色を表現しやすい。クリアビューなどのパラメータ以外のメリットにも注目だ。
滑らかな階調再現も大きなメリット
滑らかな階調再現も「SILKYPIX RAW Converter」のメリットだ。空や水面などのグラデーションを精細に再現するのに最適。この写真でも空や水面のグラデーションの表現に優れた仕上がりが得られた。しかも各パラメータのおかげで解像感や質感再現も高い。
多彩なカメラの性能を引き出すことができる
■「シグマ dp3 Quattro」で撮影
3層構造を持つFoveon X3を搭載した、シグマ dp QuattroシリーズのRAWデータにも対応。ベイヤー配列ではないため使えるデモザイクエンジンは「標準」のみになるが、それ以外は「SILKYPIX RAW Converter」の機能を生かすことができる。
■「富士フイルム X-T4」で撮影
シグマと同様に特殊な撮像素子である、富士フイルムのX-Trance CMOSセンサーにも対応している。やはりデモザイクエンジンは「標準」のみになるが、SILKYPIXが持つシャープやノイズリダクション、さらに色再現性や豊かなグラデーションなどが富士フイルムXシリーズでも楽しめる。
クオリティアップしたRAWデータを使い慣れたソフトで扱えるのが魅力
「SILKYPIX RAW Converter」を実際に使用してみて感じたのが、とても手軽に扱えるということだ。いつものワークフローに別ソフトの処理を追加するのは読むだけだと面倒に感じるかもしれないが、使ってみると操作がシンプルでわかりやすく、違和感なくスムーズに作業できた。それでいて解像感や質感再現、さらに色調再現でも大きなクオリティアップが可能になる。
「SILKYPIXに興味があるけど、慣れたRAW現像ソフトでの作業は変えたくない」という人には、ぜひ使ってもらいたいソフトだ。
SILKYPIX RAW Converter
価格
7,700円 (税込)
※14日間無料で試用可能
動作環境
- Microsoft Windows 11 / 10 64bit版
※32bit版、Windows 10 のタブレットモードには非対応 - Intel Core 2 Duo 以上 または AMD Athlon 64 X2 以上のプロセッサー
- 4GB以上のRAM (8GB以上推奨)
- 20GB以上の空き容量のあるハードディスク
- 1024×768以上の画面解像度をサポートするディスプレイ
→「SILKYPIX RAW Converter」の詳しい情報はこちらをチェック!
〈協力〉株式会社 市川ソフトラボラトリー