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【星と月の撮影の基本⑤】きれいな夜空を撮りたい!最適なシャッター速度

星空のきれいな景色(星景)を見ると撮影したくなるもの。カメラが好きな人にとって、一度は挑戦してみたい!被写体です。星や月、惑星など撮りたい気持ちはあるのだけれど、「難しい!」「真っ暗!」「星が映らない!」など撮影方法の悩みは尽きません。これから流星群や皆既月食、火星の接近など、天体撮影では、イベントも盛りだくさん。カメラを通してきれいに撮る方法やテクニックをご紹介いたしましょう。

 

 

シャッター速度、つまり露光時間が長くなるほど星や月の軌跡が長くなり、シャッター速度を短く(速く)すれば星や月を点像として写せます。また、シャッター速度は露光量を制御する役割もあり、絞りとISO感度が一定ならばシャッター速度を長くすれば明るく、短くすれば暗くなります。

月や星の動きは見かけ上はゆっくりなので、広角レンズなら15秒程度でもほぼ止まりますが、天体望遠鏡で拡大撮影すると、数秒の露光でもぶれてしまいます。ただ月は明るいので、数十分の1秒など速いシャッター速度を切れることが多く、被写体ブレの問題は少ないです。

むしろブレは、月面などの拡大撮影時にシャッター作動時の振動によって発生しやすく、注意が必要です。広角レンズでの星撮影でも、点像や軌跡となって写る星はわずかなブレでも思いのほか目立ちます。ミラーアップや電子先幕シャッターなどを使用して、極力ブレを防ぎましょう。厚紙などをレンズの前で開閉してシャッター代わりにすると、極限までブレを防げてベストです。

 

 

【 星空のシャッター速度 】止めて写すには20秒以内で撮る

三脚に固定した広角レンズで星景を撮るときは、20秒以内のシャッター速度なら星はほぼ止まって写る。30秒を超えるシャッター速度の場合や、望遠使用時における10秒程度のシャッター速度では、赤道儀で追尾しないと星を点像に捉えることはできない。確実に星を点像として捉えるには赤道儀を利用するのがベストだが、追尾時間が長いほど地上の風景はぶれたように写ってしまう。

 


20秒露光で星を点像で捉える

山並みのシルエットを生かしつつ、北極星と夏の天の川を広角20ミリで撮影した。星と山並みを止めて写したかったので、三脚に固定してシャッター速度を20秒に設定。開放F1.8の単焦点レンズは、シャッター速度を短くするのに有効だ。

20ミリ相当 マニュアル露出(F1.8 20秒) ISO6400 WB:オート

 

 

【 星空のシャッター速度 】流す場合は5~20分程度の露光が必要

露光時間が長くなると軌跡も長くなる。広角レンズを使って20分前後露光すると、適度な長さの軌跡となり、星の流れを美しく捉えられる。星を止めるとたくさんの星が写りすぎて星座の形がわかりづらいが、5分程度露光すると明るい星が目立って星座がわかりやすくなる。なお、北極星付近と天の赤道付近では見かけ上の星の動く速さが異なる。北天の日周運動をぐるりと円を描くように撮影するには、数時間の露光時間が必要だ。

 

20分露光で日周運動を写し描く

左ページの下の写真と同じ場面。こちらは約20分露光することで、円を描く北天らしい日周運動を捉えられた。画面の右下にある北極星は止まって見えるが、北極星を離れて天の赤道に近づくほど大きな弧を描いている。

20ミリ相当 マニュアル露出(F1.8 22分) ISO100 WB:オート

 

 

【 月のシャッター速度】広角では20秒以内、拡大撮影では高速に設定

月は星のように軌跡で見せるより、月の輝きや形、月面模様を生かすために止めて撮るほうが向いている。広角レンズで月景として狙うなら、星と同様に20秒以内で撮ると止めて写せる。天体望遠鏡を利用した拡大撮影では、月齢によって異なるが、数十分の1秒より速いシャッター速度となるので容易に写し止められる。ただ拡大率を上げると月はぐんぐん動いてゆくため、赤道儀での自動追尾が望ましい。

 

月を写し止めるため感度を上げて8秒露光

日の出1時間前、 東の低空が茜色に染まり始めたころ、 月と金星が明るく輝いていた。 ISO6400に感度を上げて8秒露光で撮影することで、月や星々を点像として捉えられ、夜明けらしい臨場感を引き出せた。

20ミリ相当 マニュアル露出(F2.8 8秒) ISO6400 WB:晴天

 

 

 

星空を撮る時に、絶対に設定が不可欠な「シャッター速度」。点の星空を撮りたいのに、シャッター速度を早くしすぎてブレたり、逆に短くしすぎて、星が写ってない!なんてこと、みなさん経験しているはず。星の点像、軌跡、月、それぞれにあわせて、シャッター速度を調節しましょう。

 

写真・解説/深澤武