ビルの多い都心部でも一歩裏道に入ったり、下町に行ったりすると路地はたくさんあります。ここでいう路地は、絵になる狭い道のこと。人の息遣いや人情味のあふれる路地は、カメラを向けたくなります。情緒あふれる路地の撮り方をご紹介いたします。
路地写真のよくある失敗 ×
ただ路地を撮っただけの記録写真になりがち
路地であることはわかるが、何に魅力を感じて撮ったかといった主題が、まったく伝わってこない。また光や人などのような画面のアクセントもなく、ただただ単調な写真である。
ここが残念 ×
1 薄曇の天候で人影もなくて寂しい → 解決法①
2 目を引く主題がない → 解決法②
3 よくある光景で面白みにかける → 解決法③
心惹かれて路地にカメラを向けてしまいますが、あとで写真を見ると、何に心惹かれたのか疑問に思ってしまうこともあります。「この路地に心惹かれた」部分をどうすれば表現できるのでしょうか。
効果的な被写体と光を取り入れて路地の雰囲気を引き出そう
一言で路地といっても、その雰囲気はさまざまです。下町の路地は人の生活感にあふれていて、繁華街の路地は商店の裏口などがあり雑多な印象、京都の路地は板塀など歴史を感じさせる趣きがあります。まずは、こうしたその路地特有の雰囲気を盛り込むように撮りましょう。その際にポイントとなるのが光です(街灯の明かりなども含む)。天候や時間帯などによって光は変わるので、どんな光が最適か見極めることが大切です。さらに、路地に合う被写体を取り入れられれば完璧です。
残念ポイント①薄曇の天候で人影もなくて寂しい
【解決法①】その路地にあった最適な時間帯や天候に撮る
天候や時間帯によって光の強弱や角度、さらには色味も変わる。特にフォトジェニックなのは、太陽の角度が低い晴天時の朝と夕方の時間帯だ。光と影がドラマチックな光景を生み出すことが多い。とはいえ、路地によって光の当たり方や街灯の有無、人通りや雰囲気などはまちまちだ。まずは、その路地にあった天候や時間帯を探ろう。
中華街の路地は、明かりが灯る夜のほうがフォトジェニック
上の2枚の写真は、同じ通りを同じ方向から撮影したもの。昼間は背景のビルに溶け込んで目立たなかった提灯飾りも、明かりの灯る夜になればこのとおり。夜のほうが中華街の鮮やかな色彩を表現できた。
残念ポイント②目を引く主題がない
【解決法②】路地の雰囲気に合う被写体を主題にしつつ、奥行きも出す
路地を撮る際は、路上と同様にその奥行きを生かしたい。路地を中途半端に切ってフレーミングすると、ただ街の一角を切り取ったようになり、路地の雰囲気は出ない。また、特徴のない路地だと上で見せている失敗写真のように単調になってしまう。路地の奥行きを生かしつつ、そこに合う被写体を主題に置くと印象深くなる。
×
左の写真は手前に自転車を入れているが、日陰に入ってしまい目立たない。もう少し主張するように撮ると、メリハリのある写真になる。右の写真は路地にある店先で、自転車をメインに撮影。道が写っていないため、路地の雰囲気はあまりない。
子ども用の自転車を主題に捉えて路地感を出す
下町の路地にあった子ども用自転車に着目。広角レンズの遠近感を活用し、左側に路地を入れて奥行きを強調した。また路地の奥に自転車に乗る人を入れてアクセントとし、生活感のある下町の都市風景に仕上げた。
27ミリ相当 絞り優先オート(F4.5 1/80秒) -0.3補正 ISO200 WB:オート
残念ポイント③よくある光景で面白みにかける
【解決法③】見慣れた場所も、逆光ならドラマチックな表現ができる
いつも見ているありふれた路地風景も、逆光下では思わぬ美しさを見せてくれることがある。光と影のコントラストは、画面に立体感や奥行きを作り出し、肉眼とは違った視覚効果が得られる。また、光を感じさせる太陽や反射光を入れれば、画面のアクセントになってより印象的になる。
光があると画面にメリハリが生まれる
同じ場所を違う日に撮影。曇りの日の左写真では少し間の抜けたように感じてしまう空間も、右写真のように逆光で撮ると途端に奥行きが生まれ、ドラマ性を感じさせる1枚になった。人物などの動いている被写体をさりげなく配置するのもコツだ。
ゴーストを意図的に入れて逆光のインパクトを引き出す
逆光時は太陽の入り具合によって、ゴーストやフレアなどが出ることがある。風景写真などではこれらを入れないのがセオリーだが、路地写真では光を強調するための要素として入れても◎。ドラマチックな夕方の光景に仕上がった。
18ミリ相当 絞り優先オート(F3.5 1/80秒) -0.3補正 ISO100 WB:太陽光
都会だからこそ、狭い路地に、人の息遣いや人情味を感じたりします。そういう情緒あふれる路地を撮影する時は、どこにフォーカスするのか考えながら撮影しましょう。