ビルの多い都心部でも一歩裏道に入ったり、下町に行ったりすると路地はたくさんあります。ここでいう路地は、絵になる狭い道のこと。人の息遣いや人情味のあふれる路地は、ふとカメラを向けたくなります。情緒あふれる路地の撮り方をご紹介いたします。
色やアングル、動感表現など大胆なアレンジをしてみよう
路地は「コレ」という明確な被写体がないので慣れないうちは絵にしにくい。そこで小ワザではあるが、路地写真の演出テクニックを紹介する。まずは色味だ。曇天時などで色彩が乏しいと感じたら、思い切ってモノクロやセピアにしてみよう。下町や古めかしい路地ではこれらの表現が実にマッチする。また、動感を加えることでも印象深くなる。動く被写体をスローぎみのシャッター速度で狙えばいい。極端なアングルで撮影して見慣れない視点にすることもインパクトが出て有効だ。
基本テクニック
現場の雰囲気にマッチした色合いにする
人間の記憶は、街や風景を色で覚えているという説もあるが、写真を撮るときも自分の感じた色を表現するのが正解。その際、かならずしも正確な色に再現する必要はないし、そもそもカラーである必要もない。ホワイトバランスや仕上がり設定の調節によって、好みの路地写真に仕上げよう。
△WB/オート
○WB/太陽光
見た目の色合いに再現するにはWB「太陽光」がベター
さまざまな光源が混ざり合う飲食店が並ぶ路地。ホワイトバランスを「オート」で撮影したら、少し冷たい雰囲気に写ってしまった。「太陽光」に設定すると、見た目に近い温かい色合いに再現できた。
応用テクニック①
ブレ表現を取り入れる
路上の撮り方でもスローシャッターによるブレ表現を紹介したが、もちろん路地を撮る際も有効である。生活道路である路地では、人や自転車をぶらして取り入れるといいが、それらは大きくぶらすよりも、被写体が何なのかわかるブレ具合のほうが路地の臨場感が引き出せる。なので、シャッター速度は1/15~1/60秒程度でよく、手持ちでも十分に撮影可能だ。
前ブレを入れて、画面に奥行きと迫力をプラス
高架下の路地に、赤い自転車が止まっていた。まずは、自転車と手前のマンホールでシンプルな構図を作る。これだけでは味気ないので、通過する自転車をぶらして取り入れる。ぶれたホイールの向こうに、赤い自転車が見える理想的な結果になった。
応用テクニック②
極端なアングルで路地を狙う
路地の写真でインパクトを出すのはなかなか難しいので、極端なカメラアングルで撮ってみよう。地面ギリギリのローアングルで狙うなら、周囲の状況を写し込める広角レンズがおすすめ。高台などから見下ろすハイアングルでは、望遠で路地を切り取るといい。どちらのアングルでも画面の中にきちんと主題を決めて狙うことが大切だ。
街が見渡せる高台から望遠レンズで路地を切り取る
街が見渡せる高台から、学校帰りの姉妹を狙って、望遠200ミリ相当で撮影。もう少しアップでも撮れたが、道や家屋の屋根が入ることでこの街の様子が伝えられると思い、この構図を選んだ。
カメラを地面に置いてローアングルで狙う
カメラを地面に置き、ライブビューで構図とピントを確認しながら、広角レンズで座るネコを撮影した。ネコに近づき表情を捉えつつ、広い画角によって路地の様子もわかる。見慣れないアングルによってインパクトも出ている。
路地の雰囲気を最大限に表現するために、極端なアレンジも時には必要になります。ホワイトバランスや、シャッター速度、アングルなどを調整しながら、大胆な演出を試みてみましょう!