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【星景ポートレートの撮り方①】星空? 人物? どちらを基準に撮影するの?

星空と人物を一枚の写真に収める星景(星空)ポートレートは、幻想的な写真撮影が可能ではありますが、少しテクニックが必要です。星空と人物を一枚の写真の中で、両方ともきれいに写し出すためには、“長時間露光で星”を、“フラッシュの光で人物”を撮影します。その撮影方法についてご紹介いたします。

 

  1. 星空? 人物? どちらを基準に撮影するの?
  2. こんな写真撮れるの!? 重要なのはライティングの配置
  3. 光の演出で印象に残る華麗な一枚を撮ろう
  4. 様々なライティングでオリジナリティあふれる一枚を撮ろう

 

 

星景写真のよくある失敗 ×

星と人物、背景の露出のバランスをいかに整えるかが重要

星がきれいに撮れていても人物がぶれて黒い影ができたり、白とびしたりといった失敗が多い。逆に背景が暗く星がわずかしか写っていなかったり、メリハリがなかったりするケースも多い。

 

ここが残念 ×

1 背景が暗く写っていない → 解決法①
2 フラッシュが正面から当たって平面的な写り → 解決法②
3 街灯が明るくメリハリがない → 解決法③

 

星空の撮影だけでも難しいが、ポートレートとなると、どこに標準を合わせればいいのかわからなくなって、どっちつかずの写真になりがちです。どうすれば両方ともにきれいに撮れるのか、対策をご紹介します。

 

背景の星空を基準に露出を決定してフラッシュの光で人物を明るく照らす

撮り方でいちばん重要なのは撮影手順です。パソコンを使ってのレタッチが前提となるので撮影はRAWで行います。手順は、まずホワイトバランスと背景の露出、構図を決めます。露出は背景に合わせたシャッター速度をまず決め、最適なF値を設定。 ISO感度で明るさを調整します。ライブビュー拡大でピントを合わせ、ライティング(フラッシュ)の位置を決めて発光して撮影します。

 

残念ポイント①背景が暗く写っていない

【解決法①】大口径レンズを使用して十分な明るさで星の光を取り込むことが重要

背景が暗く、星空があまり写っていない場合の大きな原因としてF値が暗すぎる、シャッタースピードが短い、又はISO感度が低いといった点がある。なかでも重要なのがレンズ選びで、F2.8以上の大口径レンズを使わないと、星を十分な明るさで撮ることができないケースが多い。ISO感度を上げたり、シャッタースピードを長くしても星の光が弱いためにきれいに写すことができないのだ。

 

背景の露出を決めてから、人物にピントを合わせ、露光中にベールをフワッと浮かせて撮影。ベールの動きを見ながら、最適な位置でフラッシュを発光させた。

16ミリ相当 マニュアル露出(F2.8 25秒) ISO2500  WB:3850K

 

上の写真では、このように人物の左右からフラッシュを発光。右からのフラッシュ光をメインにして、明るさにメリハリを付けた。

 

残念ポイント②フラッシュが正面から当たって平面的な写り

【解決法②】人物の両サイドからフラッシュを当てる「クロスライティング」が基本

フラッシュは正面から当てても悪くはないが、人物の立体感が失われてしまう。こうした場合に効果的かつ基本となるのが、人物の両サイドからフラッシュ光を当てる「クロスライティング」だ。片方だけだと、反対側の輪郭が暗くなってしまい、ぼやけた印象になってメリハリのない写真になりがちだ。

 

構図は2分割を意識し、地上と空の割合を5:5にした。棚田の角に人物に立ってもらうことで、奥行き感を出している。地上に光が当たらないように、スポット光に近い光で人物を照らしているのがポイントだ。

13ミリ相当 マニュアル露出(F2.8 25秒) ISO3200 WB:3600K

 

人物の両サイドとなる5時と8時の方向よりクロスライティング。ドレスの中にもフラッシュを1台入れ、ドレスを幻想的に写した。フラッシュは人物の肩の高さ。

 

背景は棚田で、下からのアングルだと水面が撮れず、車の上から撮影。ライティングを行う前に背景の構図や人物の位置を決定し、最後にフラッシュの位置を決めるのがポイント。

 

残念ポイント③街灯が明るくメリハリがない

【解決法③】街明かりや月明かりが明るいと人物の残像が写ってしまうので要注意

街明かりなどの光がある場所で撮影する際は、撮影中に人物が動くと人物が透けたような残像が写ってしまう。そのため、街の明かりや月明かりがない場所や時間帯を選んで撮影するのがポイント。自分撮りをする場合もセルフタイマーを使用して、ポーズを決めた状態で撮影すると失敗しにくい。

 

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街灯が当たる場所で動きものを撮影すると左の写真のように人物が透けてしまう。もし動きものを撮影したいのであれば、背景が暗い場所を探すとよい。月明かりがあると失敗するので新月のタイミングを狙って撮ろう。

14ミリ相当 マニュアル露出(F3.5 30秒) ISO1600 WB:3400K

 

 

星景ポートレートは、星景撮影だけでも難しさを感じますが、まずは、星景撮影での設定に行い、人物に関しては、フラッシュ等のライティングで、立体的にしっかり撮影しましょう。フラッシュやライティング以外の灯りがあると、透明になって残像ができたりしますので、そのあたりも注意しながら撮影してください。

 

 

写真・解説/関 一也