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【スイセンの撮り方①】凸凹のある立体的な花を撮影すると“影”が出る!その解決策とは?

一般的にスイセンといえば、ニホンスイセンを思い浮かべると思います。白い花びらに黄色いカップ形の副花冠がついた独特な形状で、2cmほどの小さな花が房状に広がっています。12月から2月にとてもよい香りを放ちながら咲く冬の花です。

 

 

スイセン写真でよくある失敗

一見きれいに見えるが、部分的に詰めがあまい

主役に光が当たっていたり、前ボケが入っていたりと一見きれいに見える。しかし、花をよく見ると陰が強くてうるさい。また前ボケも薄暗くて色もなく、濁った印象である。

 

ココが残念×

1 光が強くて花の影がうるさく感じられる→解決法①
2 前ボケがあって立体感はあるが、背景が暗くて平坦→解決法②
3 せっかくの前ボケだが色がないうえ暗くてきれいではない→解決法③

 

華やかさはあまりないので、彩りを意識しながら狙ってみよう

ニホンスイセンは、日本の海岸線などで群生していますが、公園や道端でも見ることができます。野山に咲いたり、都心の公園などでも見られるスイセン。昨今は広大なスイセン畑が観光の目玉となっている場所もあります。西洋系の輸入品種もあって、大柄なものが多いです。身近な花ですが、華やかさはあまりないので、彩りを意識しながら狙ってみましょう。

 

 

残念ポイント①光が強くて花の影がうるさく感じられる
【解決法①】立体的な花は影が出やすいので逆光で撮る

スイセンは凹凸のある立体的な形状なので、強い光の下では花にきつい影が出てしまう。特に、真横や斜めから光が当たると顕著だ。しかし、逆光で撮ると手前側が全体的に陰になるので、フラットに写るし、透過した光が花びらを輝かせる。また、日陰や曇天時は透けた感じこそないが、フラットな光で影が出にくい。

 

逆光では透過光で花びらが透ける
後ろから弱めの光が当たっているので、花びらが透けて輝いて見える。順光やサイド光のようなきつい明暗差はないが、光はあるので程よい立体感も出る。背景の花々にも逆光が当たっているので、ぼけていても輝きを感じる。
 

 

日陰のやわらかい光ならきつい影は出ない
日陰の花は逆光のような輝きや立体感は出ないが、直射日光が当たらないので花びらのトーンが滑らかに写る。このシーンは、主役は日陰だが背景は日向であるため、花のトーンは滑らかながら、明るく輝いた背景になっている。
 

 

残念ポイント②前ボケがあって立体感はあるが、背景が暗くて平坦
【解決法②】背景をぼかしすぎると平坦に写るので注意しよう

背景をぼかせばすっきりして花が引き立つが、大きくぼかしすぎると背景の雰囲気がなくなるうえ、画面が平坦に見えてしまう。背景にあるスイセンをぼかすと丸い形になり、光が当たっていれば輝く。ぼかしすぎず、シャープになりすぎず、程よい大きさの丸いボケ(玉ボケ)を取り入れると、爽やかな写真になる。

 

80ミリ相当


 

 

300ミリ相当


 

 

〇135ミリ相当


 

ここでは135ミリ相当の背景が玉ボケもあってきれい
花の大きさが同じになるように、焦点距離と撮影距離を変えながらボケ方の違いを撮り比べてみた(絞りはF2.8固定)。焦点距離が短いと細かいボケで、ごちゃごちゃして見える。一方、300ミリ相当では大きくぼけてはいるが、ぼけすぎて丸いボケにはなっていない。ここでは中間の135ミリ相当で写したものが、程よい大きさとなった。
 

 

残念ポイント③せっかくの前ボケだが色がないうえ暗くてきれいではない
【解決法③】明るいきれいな前ボケを作るには逆光がおすすめ

大きな前ボケを作るには、絞りを開ける、焦点距離の長いレンズを使う、前ボケとなる被写体に近づく、主役と前ボケを離す、この4つが挙げられる。しかし、大きなボケであっても、それがきれいでなければ意味がない。きれいな前ボケを入れるには光の選び方が大切だ。順光は影が強く出やすいほか、ぼかしてもそのコントラストは残るためイマイチ。逆光の当たる前ボケがきれいだ。

 

逆光を浴びるスイセン畑では前ボケもきれいに輝く
スイセン畑全体に逆光線が当たっていた。主役の花びらが透過光によってきれいに輝いている。同様に前ボケの花も輝いているため、前ボケも明るくきれいにぼけた。主役も前ボケも背景の一部も白いため、プラス1.3の露出補正を行って明るめに仕上げることで、より光りあふれるイメージになった。

300ミリ相当 絞り優先オート(F2.8 1/1250秒) +1.3補正 ISO200 WB:晴天

 

 
写真・解説/吉住志穂