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2025/4/11 17:00

これぞ”粋” 春の屋形船でお酒と江戸の情緒を堪能する噺

提供:宝酒造株式会社

「せんべろnet」管理人・ひろみんさんのナビゲートで“ひとり飲み”の魅力を体験しているタレントの中村優さん。ある日、隅田川沿いをランニング中に川を眺めると、そこには屋形船でお花見を楽しむ光景が。お酒を片手に船で和む姿に興味を持った彼女は、後日知人を誘って屋形船「晴海屋」の乗り合いコースを予約し、屋形船を楽しむことに。

 

今回は“ひとり飲み”シリーズ番外編。中村優さんが、春の屋形船でお酒と料理と江戸の粋を堪能します!

 

 

屋形船の歴史

屋形船といえば、川を下る船の中で天ぷらなどのご馳走とお酒を楽しみながら、観光名所を遊覧する伝統文化。その歴史はいつごろ始まって、どのように親しまれてきたのでしょうか。

 

ルーツを紐解くと、それは古墳時代の「舟遊び」にまでさかのぼります。402年に、仁徳天皇の子にあたる履中天皇が、両枝船(ふたまたふね)で遊宴を楽しんだという記述が『日本書紀』に残っています。

 

やがて平安時代になると、貴族の間で定着。「龍頭鷁首(りゅうとうげきしゅ)」と呼ばれた船で、音楽や詩歌、舞楽などが親しまれていたそうです。

 

以後も、江戸時代初頭までの「舟遊び」は将軍や大名といった上流階級の道楽でしたが、世が平和になり河川の整備が進むと、裕福な商人なども楽しむようになりました。特に、水上交通が発達していた江戸では、船による遊覧が盛んになります。

 

そして、江戸の大川(隅田川)では夏の風物詩として人気に。船も大型化し、内外装も競うように豪華になっていきました。いまと同じ意味での「屋形船」という言葉も、このころには一般層に浸透していきます。

↑「吾妻橋夕涼景」(国立国会図書館デジタルアーカイブ)

 

17世紀後半以降「舟遊び」は大衆化が進み、町人たちは船宿や料理屋が所有する「屋根舟(やねぶね)」で遊ぶようになります。これは小型の船に柱と屋根だけというシンプルな設計で、18世紀後半には50~60艘だった屋根舟が、19世紀初頭には500~600艘にもなったとか。

 

こうして幅広い層の人たちが楽しむようになった江戸(東京)の屋形船ですが、質素倹約が求められた太平洋戦争を機に衰退していきます。さらに、戦後から高度成長期にかけては、水質汚染やコンクリート護岸化によって水辺で遊ぶことは難しくなり、屋形船はそのまま鳴りを潜めることとなりました。

 

息を吹き返し始めたのは、1970年代後半。一軒の老舗船宿が屋形船を復活させました。1980年代に入るとバブル期となり、屋形船は豪華な遊びとして注目され、界隈の船宿は釣り船を改装する形で新規参入。さらに、東京湾には東京ディズニーランド、レインボーブリッジ、お台場といった新名所もでき、屋形船は宴会、デート、観光など様々なシーンで不動の人気を誇るようになりました。訪日外客数が過去最高を更新し続けている現在では、訪日外国人観光客からも注目のスポットとなっています。

 

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屋形船の楽しみ方

↑両国乗船場で船の到着を待ちます。

 

本日、中村さんが乗船するのは、「晴海屋」の屋形船「かちどき」。両国乗船場から隅田川を南下してお台場方面へ向かい、帰路は東京スカイツリーまで北上して両国に戻る「乗合屋形船スペシャルコース」です。

↑お花見コースの一例(今回の記事のコースとは異なります)。

 

「晴海屋」は1901(明治34)年に月島で開業し、1954(昭和29)年に江東区東砂町へ移転。その後1988(昭和63年)に釣り船業と併行して屋形船を始めました。

 

まずは出船前に、船頭のひとりである折本祐介さんから屋形船の楽しみ方を伺いました。

↑船頭の折本さん。佃(東京都中央区)生まれの江戸っ子。

 

中村 今日は久々の屋形船で、楽しみにしてきました! これまで何回も乗っているわけではないんですけど、屋形船には定義というか、決まった形があるんですか?

 

折本 ご乗船ありがとうございます! 特に「これがないと屋形船ではない」みたいなものはないと思いますが、基本的な設えや料理が和風であることが屋形船の特徴ですね。

↑今回乗船した屋形船「かちどき」。

 

中村 確かに、今日の船は畳敷きで掘りごたつの座敷ですもんね。ちなみに、洋式のクルーズ船も営業しているんですか?

↑船内は掘りごたつ式の座敷になっている。

 

折本 「晴海屋」にはありませんが、リバークルーズと呼ばれる比較的小型なタイプが運航されていますね。クルーザーは座敷ではなく洋式のテーブルとイス席で、メニューもオードブルとスパークリングワインという欧風スタイルが多いと思います。

 

中村 「晴海屋」さんは“浮かぶ料亭”をウリにしていますし、料理は和食だと思うのですが、洋食を出される屋形船もあるんですか?

 

折本 うちでも以前、洋食のプランはあったので、他社でやっている屋形船はあるかもしれません。ユニークなタイプですと、鉄板を用意してもんじゃ焼きを提供している屋形船があると聞いたことがあります。

 

 

なぜ、屋形船といえば“天ぷら”なのか?

中村 屋形船といえば天ぷらのイメージが強いんですけど、なぜ天ぷらなんですか?

 

折本 屋形船はもともと貴族や上流階級の遊びだったそうです。それが江戸時代に入り、大衆文化として一般化していったようですが、屋形船は高嶺の花であり、天ぷらも当初は高級品でした。釣り合った組み合わせとして屋形船で天ぷらがふるまわれたという説があります。

もうひとつは、もともと釣り船屋だったからという説もあります。良漁場を熟知していて釣りも得意ですから、船上で釣った魚をさばいて揚げて提供したという背景ですね。

 

中村 どちらの説にも真実味がありますね。「晴海屋」さんの名物料理も天ぷらですが、お店のこだわりはどんなところですか?

 

折本 ネタで一番力を入れているのは穴子と海老です。穴子は冷凍ものを使うのが主流ですが、うちでは香り高くて食感がやわらかい生の穴子を仕入れます。海老に関しては冷凍ものですが、一般流通しやすいバナメイ海老ではない、より大粒でおいしい海老を天然ものにこだわって使っています。

また、衣は軽めでサクッとした食感に仕上げ、そのぶん穴子ならふわふわ、海老ならしっとりプリプリとした身の弾力が楽しめるよう揚げています。

↑船内の調理場で天ぷらを揚げる。

 

中村 船内揚げたてですし、おいしそう! 楽しみです。

 

折本 ご期待ください! 専属の職人による揚げたてのおいしさも自慢なので。あとは、水上移動で流れていく借景を楽しみながらお召し上がりいただけるのも、屋形船ならではですよ。

 

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海外からの観光客には日本酒が人気

中村 お酒は、どんな種類が人気ですか?

 

折本 日本のお客様はビール、酎ハイ、ハイボールが主流ですが、寒い時期は熱燗の日本酒が好評です。そして海外の方には圧倒的に日本酒が人気。でも、飲み方は年間を通して冷やが多いですね。

 

中村 天ぷらに日本酒というペアリングは相性ぴったりですよね。

 

折本 はい。海外の方は慣れていないからか冷酒が多いのですが、肌寒い日は燗酒もオススメしたいですね。一方で夏場にオススメなお酒はやはり、炭酸が効いた酎ハイやビールです。

 

中村 あと、船上でお酒を飲む際の注意事項はありますか?

 

折本 船酔いと、お酒の酔いとの相関性はわかりませんが、船酔いしやすい方やお酒が強くない方は、ふだんよりも体調に気を使われたほうがいいかもしれません。お酒の合間に水を飲んでいただいたり、船上のデッキに出て風に当たったりしていただくことをオススメします。

 

 

いざ、出船!

他のお客様も乗船したところで、いよいよ出船です。中村さんも着席してさっそくドリンクを注文。一杯目はレモンハイで乾杯です。

 

中村 今日は天気もいいし、まずはレモンハイで気分も爽快に。うん、キリッとしていて今日もおいしい!

 

↑酎ハイは「宝焼酎」がベース。

 

テーブルの上にずらっと並んだ前菜や刺身など数種のおつまみについて折本さんが解説してくれました。

 

折本 先ほどお話しした天ぷらはもちろん、それ以外の料理にもこだわりが満載です。特に大切にしているのは旬であること。例えば春は山菜やアサリ、冬は根菜やカニといった内容で用意します。

 

中村 景色ともリンクするから、料理の季節感も大事ですよね。では、お刺身からいただきますっ!

 

お造りの内容は、マグロ、マダイ、カンパチ、甘海老。そのおいしさに、中村さんも舌鼓を打ちます。

 

中村 マグロやカンパチは想像以上に脂がのっていて、マダイはハリがよくて超新鮮! 甘エビもとろける甘みで絶品です。

 

船内では折本さんが、お客さんへの挨拶やコース紹介などのマイクパフォーマンス。佃島のルーツは徳川家康が江戸入府する際に摂津国(現在の大阪市西淀川区佃)佃村の漁民を移住させたことに由来するなど、通りがかった場所や名所について、様々な解説で楽しませてくれます。

 

中村 佃島って佃煮の佃島ですよね。そのルーツは初めて知りました。屋形船は観光の側面もあるから、こういう知識は勉強になって面白いです!

↑勝鬨橋(かちどきばし)を通過する「かちどき」。

 

 

料理と景色を堪能する

そして船はレインボーブリッジ付近へ。ここで数分間停止し、その間はしばしの自由時間。中村さんは外のデッキへ出て、お台場エリアの景色を満喫します。

↑川からレインボーブリッジを眺める中村さん。

 

中村 春風が心地いい! タイミングよく桜も咲いてるし、昼間の屋形船もいいですね。

 

15分ほど停止して、船は東京スカイツリーに向けて再始動。船内では揚げたて天ぷらの提供がはじまりました。

 

折本 穴子と海老のほかは季節によって変わりますが、今日はノドグロ、オナガダイ、タチウオ、蓮根、カボチャを揚げていきます。天つゆと大根おろし、塩をお好みでお使いください。

↑揚げたてのアナゴ・タチウオ・オナガダイ。

 

中村 揚げたてなのがまずうれしいし、本当にサクサク軽く、身はしっとりしていておいしい! これはもう、日本酒でキュッといきたい気分です。

 

すかさずオーダーしたのが、松竹梅「豪快」の熱燗。その味わい、天ぷらとのペアリングはいかが?

 

中村 キレのある辛口ですけど、燗によるほっこりしたうまみとふんわり甘い香りも心地いいです。ホクホクの天ぷらとも好相性で、これは進みますね~。

 

その後も「和牛の陶板ステーキ」や「筍と桜海老の炊き込み御飯 香の物」などの美食とお酒を合わせ、悦に入る中村さん。そうしてしばらく和んでいると、船は東京スカイツリーに到着し、向かいの隅田公園では早春の桜もお出迎え。再びデッキへ出て記念撮影を楽しみました。

 

中村 乗ってみると、あっという間の150分間でした。お酒も料理も、そして折本さんのトークや景色も最高でした! 屋形船って敷居が高そうだけど、料金を考えたら、少人数の仲間と一緒に居酒屋でおいしい料理を食べたり、ちょっとしたイベントで宴会場を貸し切って盛り上がるのとそんなに変わらないですよね。次はまた、夜景を楽しむ屋形船にも行きたいです。

 

 

屋形船と聞くと貸し切りで大人数の宴会をイメージしている方も多いと思いますが、近年は2人組(基本的に屋形船の乗船予約は2人から)での乗り合い乗船も人気で、少人数だからといって肩身の狭い思いをすることはありません。

 

春はお花見、夏は花火や納涼。秋は紅葉、冬は脂がのった味覚と、どの季節でもそのときならではの楽しみ方がある屋形船。皆さんも、今度友人を誘って屋形船で一杯やりませんか?

 

撮影/我妻慶一

 

<取材協力>

屋形船晴海屋

東京都江東区東砂6-17-12
https://www.harumiya.co.jp/

乗船の予約や料理のコースなど詳細はHPまで。

 

記事に登場した商品の紹介はこちら▼

・宝焼酎
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