グルメ
ラーメン
2019/10/24 17:30

ラーメン好きの極み! 「自作ラーメン」の深すぎる世界をのぞき見

ラーメン専門店の新出店は依然として活盛で、一説には全国に3万店以上の店舗があり、7000億円市場にもなっているようです。しかし、特に新出店、あるいは専門店は、だいたいどこもフツーに美味しい。美味しいことはもちろん良いことですが、逆に言うと「驚きの味」に出会うことがあまりなくなったようにも思います。

 

かつて何度かのラーメンブームではたいていブームを牽引するような「驚きの味」がありました。今のラーメンは巨大産業に飛躍した代わりに、味が平均化されてしまい、そういう「驚きの味」はなかなか生まれにくいのかもしれません。クラシカルな町中華が見直されている要因の一つも、こういったことにあるのかなぁ……なんて思ったりもします。

ところで、こういった「ラーメンの今」を、マニア度の高いラーメンファンたちはどう見ているのでしょうか……。と思って調べてみると、もはや食べ歩きをはるかに超越して、「もう自分で作る!」と、自作ラーメンにハマっているマニアの方が増えているようです。前述した筆者のような思いからなのか、はたまた単に好きすぎて自作にハマっていったのか……。これは人それぞれ理由は異なるはずですが、いずれの自作ラーメンも凝りに凝った、珠玉の驚きラーメンばかりです。

 

今回は、これら自作ラーメンマニアの方々のメニューをご紹介しつつ、ラーメンのさらなる深い魅力に迫りたいと思います。

 

【その1】オーソドックスなラーメンから、ラーメンケーキまでの創作ラーメンの大研究!

ーー神田武郎さん

↑紐をギュッと巻いたチャーシューとオイリーなスープがおいしそうなラーメン

 

最初のご紹介は、facebookの「自作ラーメン研究会」を主宰し、多くの人々と自作ラーメンの魅力や技を共有し合っている神田武郎さんのラーメン。シンプルでいかにも美味しそうなラーメンから、タコや松茸や貝殻を使ったラーメン、はたまたラーメンを使ったラーメンケーキまでと、次々と新しいラーメンを作り続ける神田さん。

↑自家製きしめんとあっさりスープにタコをトッピングしたお洒落なラーメン

 

↑なんと3色の麺を使った彩も綺麗なあさりラーメン

 

神田さんが自作ラーメンを始めたのは、今から約20年前のことだそうです。最初は「好きだった女性が『美味しい!』と言うラーメン店の味を再現しよう」として始められたそうですが、そこから平均して年間100杯以上、数千杯ものラーメンを作り続けているそうです。これだけの経験、ノウハウがあるからこそ、こんなにバラエティに富んだメニューが生まれているのかもしれません。

↑松茸を乗せた、丼の中はすでに秋なラーメン

 

↑これは驚きました、ナルトに顔まで描かれたかわいいラーメンケーキ

 

ただし、「自作ラーメンを始めたきっかけの一杯はまだ作れていないので、いつかたどり着きたい」と神田さん。そのラーメンが完成した日、かの日の女性と再会し、一食されることがあったらなんてロマンチックなことでしょうか!

 

【その2】二郎から燕三条背脂ラーメンまでの男らしいラーメンを自宅で!

ーー佐藤広宣さん

↑豚の拳骨、背ガラ、腕肉を贅沢に使ったという家二郎

 

続いてのご紹介は、いかにも男らしい脂ガッツリの自作ラーメンを行なっている佐藤広宣さんのラーメン。佐藤さんは「創作自作ラーメン」というより、ご当地ラーメンや有名ラーメン店の味を模すことをポリシーにされているらしく、現在までに20種類くらいのインスパイアラーメンを作ることができるとのことでした。上の写真の通り、確かに二郎風や燕三条背脂風の自作ラーメンが多く、どれも実在するお店で見る感じと変わりなく映ります。

↑背脂コッテリの燕三条背脂ラーメン風

 

↑動物系不使用スープに、背脂で補強したお洒落なラーメン

 

その作り込み方も本格的で、自家製麺はもちろん、ガラや節などのあらゆる食材を試されているようでした。

↑佐藤さんご愛用のオーション(強力粉)による自家製麺

 

↑ガラだけでなく、カツオ節にもこだわる本格派!

 

今後も「クオリティーを上げていきたい」とストイックに語る佐藤さん。いつか、佐藤さんの男らしいラーメンをどこかで食べられるといいなと勝手に妄想する筆者でした。

 

【その3】湿度が高い夜が来ると、製麺したくなる……オールジャンルの自作ラーメン!

ーー熊谷渉さん

↑透き通ったガラスープがたまらない!

 

最初は「家族が好きなチャーシューやメンマを、思いっきり食べて欲しい」という理由から、自作ラーメンを始められたという熊谷渉さん。ただし、作り始めるうちにどんどんハマっていったようで、自作歴約10年になる今は、年間170杯オーバーにも至ったそうです。

↑背脂コッテリの男らしいラーメン

 

↑大胆に毛ガニの殻を一杯分作った映えラーメン

 

↑イタリアの風を感じるホワイトラーメン

 

↑創作性の高い彩豊かなホワイトラーメン

 

上の写真を見る限り、創作的な斬新なメニューが多いかと思いきや、こだわりを聞くと、「シンプルに旨いスープに、旨い中華麺を合わせて楽しむ」とのことで、やはりラーメン作りの基本はしっかりと押さえた上で、これだけのバラエティ溢れるメニューに転じられているようでした。「湿度が高い夜が来ると、製麺したくなる」という熊谷さん。その日常には、常に自作ラーメンがあるのかもしれません。

 

【その4】地元・栃木にないラーメンを作る!本格自作ラーメンの試み

ーー星飛鳥さん

↑手打ちの麺、炭焼チャーシューを使ったという白河ラーメン

 

大学生時代に東京に住み、さまざまなラーメンを食べていたという星飛馬さん。就職で地元・栃木に戻ったそうですが、東京に比べてラーメンの種類が少ないことに落胆。ならいっそ……と自作を始められ、現在までに50種類以上、全200杯ほどのラーメンを作り続けているそうです。上の写真は、星さん版・白河ラーメンで、もちろん、麺は手で打ったもの。

↑炭を使って、吊るしチャーシューを作るの図

 

一般に、煮豚が多いチャーシューですが、きちんと炭で焼き上げた「焼豚」も実現しておられます。星さんは栃木のラーメン事情を憂う一方で、「気軽に家で炭焼きできるのは、栃木ならではだと思います!」とも語っておられました。

↑完成した照りっ照りのチャーシュー

 

↑チャーシュー断面図、超ウマそう!

 

今後の星さんの夢は、「素材を理解し、それらを活かしたラーメン作り」「減塩、脂が少なくても美味しいラーメン作り」、そして、「栃木の名店『手打焔』の手打ち麺の再現」とのことでした。どこか知的でストイックな星さんの自作ラーメンもまた今後の展開に期待です!

 

【その5】150種類ものラーメンスープに挑戦してきた珠玉の自作ラーメン!

ーー丹澤徳昭さん

↑スープボーンという部位をグツグツ煮込んだという鶏白湯!

 

元々料理することが好きで、好きなラーメン屋さんの味を再現したくなり、自作ラーメンを始めたという丹澤徳昭さん。麺打ちはしないそうですが、スープにこだわられているようで「醤油・塩・味噌、動物系・魚介乾物系・鮮魚系、清湯・白湯・泥系等ジャンルは問わず150種類くらい」の自作経験があるとのことでした。

↑コクがありそうな醤油スープに映えるネギと麺!

 

↑程よいオイリーさがたまらない醤油ラーメン

 

上の写真の、トッピングを極力減らしたラーメンからも、スープへのこだわりを感じられますが、一方で、「高級食材にこだわらず、身近で手に入る食材で最高に旨い一杯を作りたい」ともおっしゃっていました。この辺りも趣味だけで終わらせない丹澤さんの矜恃を感じます。

↑ハナマサの豚骨用麺を使ったという冷やし醤油かけそば

 

↑あっさりしながらコクもしっかりありそうな醤油ラーメン

 

「今後は麻辣系、スパイスをふんだんに使ったエスニック系にも挑戦したい」と丹澤さん。いつか完成するそれは、単に辛かったり、スパイシーだったりではない、奥ゆかしい味なのだろうなと勝手に妄想する筆者でした。

 

【その6】自作パスタから自作ラーメンへ。こだわらないことがこだわりの1000杯以上の経験

ーー近藤真生さん

↑鯖鮮魚出汁のアジアンスパイス塩ラーメン

 

学生時代に料理にハマり、パスタを中心に様々な自作を行ってきたという近藤真生さん。会社の同僚の方から安価でパスタマシンを譲り受け、製麺にハマり、自作ラーメンの世界へ。現在では、スープや麺の開発が日々のライフワークとなりなり、これまでに1000杯以上の自作ラーメンを作ってきたそうです。このハマりようを知った同僚の方が、今度はラーメン丼ぶりをプレゼントしてくれるなど、マニア度が高まっているそうです。

↑麺のゴリゴリが美味しいスープを持ち上げるの図!

 

ただし、近藤さんの自作ラーメンには一貫したこだわりがないようで、「無化調」「自家製麺」に限らず、町中華系、二郎系、アジア系までなんでも作られているようです。

↑同僚から安価で譲り受けたパスタマシンで製麺する近藤さん!

 

↑具を揚げ麺で覆った麻婆焼きそば

 

↑同僚からプレゼントされたという「麺屋近藤」のラーメン丼

 

上の写真の「鯖鮮魚出汁のアジアンスパイス塩ラーメン」や「揚げ麻婆焼きそば」などは、近藤さんならではの味のよう。近藤さんは、近々レンタルキッチンを借り、お世話になった方100人をもてなすラーメンイベントも計画中とのこと。こうやって自作ラーメンを披露し、交流を深めるのも実に楽しそうです!

 

【その7】原稿を書きながら、編集しながらの自作ラーメン

ーー松田義人

↑北海道で冬場採れる魚、ごっこのスープに、ごっこの卵をのせました!

 

そして、最後は僭越ですが、筆者の自作ラーメンをご紹介させてください。筆者はフリーのライター・編集者ですが、自分の事務所があるエリアには食事をする場所があまりに少ないため、このように原稿執筆や、雑誌編集などをしながらスープを炊き、昼や夜に自作ラーメンをすすっています。

↑鯛の頭スープ8+基本スープ2の超淡麗ラーメン

 

自作ラーメンを始めたきっかけは、大好きな四谷三丁目の「一条流がんこラーメン」の一条さんが、この地に開店した当初ブログで大胆にも「ラーメンのレシピ」を公開していたのを見たからでした。

↑葱油ならぬアーリーレッド油を最後にかける塩ラーメン

 

この一条さんのレシピ通りに作ってみたらあら不思議。本当にラーメンが出来上がってしまいこれが面白くなり、どんどんハマっていきました。ここまでにご紹介した方々には及ばず、まだ自作歴3年くらいですが、この自作ラーメンのおかげで、休日は事務所で製麺会と称した宴会、ラーメン試食会と称した宴会などをよくやっています。

↑台湾・台南名物の担仔麺

 

自作ラーメンの世界はあまりに奥が深いですが、始めると、ラーメン店の事情が少しずつ理解できるようになり、これもすごく楽しいです。興味がある方は臆することなく、やられてみてはいかがでしょうか。

↑ラーメン花月の壺ニラを再現し、そのままかけた激辛ラーメン

 

今回ご紹介した自作ラーメンの数々は、いずれも神田武郎さん主宰のfacebookの「自作ラーメン研究会」に参加されている方々によるもので、筆者も自作ラーメンを始めた頃より参加させていただいています。同研究会では、参加者同士で自作スープを郵送で交換しあったり、交流も盛ん。興味のある方はぜひチェックしてみてください!

 

「自作ラーメン研究会」

https://www.facebook.com/groups/268197746553960/

 

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