GIGABYTEは、ゲーミングブランド「AORUS」「AERO」シリーズの新ゲーミングノートPC、および新ゲーミングディスプレイの2025年新製品発表会を実施しました。
今回の発表会で紹介・展示されたのは、ゲーミングノートPC5製品、ゲーミングディスプレイ2製品の計7製品です。今年1月に米ラスベガスで開催された「CES 2025」で発表・展示されていたモデルも多く、「AORUS MASTER 18」「AORUS MASTER 16」といった一部製品はこの発表会に先行して販売開始されています。
音声コントロールも可能な独自AIアシスタントを搭載する初の試み
GIGABYTEは、マザーボードやグラフィックスカードといった自作PCパーツの開発・販売で有名な台湾の老舗PC・周辺機器メーカーです。近年はゲーミングPC市場の盛り上がりを受け、完成品のPCやディスプレイといった分野にも手を伸ばしており、ハイスペックなゲーミングPC、クリエイターPCなどで日本でも人気を博しています。


同社ゲーミングノートPCの2025年モデルは、いずれも筐体デザインを一新したうえで、GIGABYTE独自開発のAIエージェント「GiMATE」(ジーメイト)を搭載するのが従来モデルと大きく異なる特徴です。




GiMATEの導入にあたり、PCの負荷状況を反映してのCPU・GPU性能や冷却性能、ファン回転数(静音性)の変更といったパフォーマンス調整項目はGiMATE内の「G-Cellコントロールセンター」に統合されました。たとえば高負荷時に本体性能をブーストする、低負荷時に本体温度を見ながらファンの回転を止めるといった判断を、AIベースで実行してくれます。加えて、聴取環境をAIが判断してのオーディオ最適化、マイクのノイズキャンセリング、画面の前を他人が通りがかった際に警告表示や画面暗転によりプライバシーを守る「AI Privacy」などの機能も利用可能となっています。


また専用ツールとして、Stable DiffusionやFlux.1 AIといった生成AIモデルをシンプルな統一UIで操作できる「GiMATE Creator」も内蔵。AI開発プラットフォーム「Hugging Face」の個人アカウントとの連携が必要ですが、ノートPCで複数の生成AIモデルを使って画像生成を頻繁に行なう人にとってはうれしい機能でしょう。
GiMATEが一際ユニークなのは、独自の大規模言語モデル(Large Language Model、LLM)を活用してのテキスト・音声コントロールにも対応している点です。PCのタスクバー上にはツールの立ち上げボタンが用意されているほか、キーボードにも専用のホットキーを用意。起動したアシスタントにテキストチャットや音声で「ゲームがしたい」「ファンの音を落としたい」などと話しかけるだけで、簡単に本体のパフォーマンス調整が可能となっています。




AIエージェントのコントロール範囲はハードウェアのパフォーマンス変更のみに限定されており、「ChatGPT」のように幅広い用途に使えるわけではありませんが、音声コントロールに関しては競合メーカーでも採用されていない試みです。なお、これらのAI機能はすべて端末上で動作するため、インターネットに接続していない状態でも利用できます。
GeForce RTX 5000シリーズ搭載でゲームもクリエイティブも快適
発表された5機種のうち、「AERO X16」はクリエイティブ用途も考慮したマルチタスクユーザー向けとなりますが、基本的にはいずれの製品もグラフィックス描画性能が高いNVIDIAの最新GPU「GeForce RTX 5000」シリーズのモバイル版を搭載するゲーミングを意識したスペックが魅力のひとつです。


モデルごとの最大スペックに関して言えば、コアゲーマー向けのAORUS MASTER 18とAORUS MASTER 16がRTX 5090搭載モデルをラインナップするほか、ミドルゲーマー向けの「AORUS ELITE」および先述のAERO X16がRTX 5070搭載モデルを用意。カジュアルゲーマー向けの「GIGABYTE GAMING A16」に関しては前世代のRTX 4000シリーズ搭載モデルもあるものの、こちらも最上位モデルではRTX 5070を搭載しています。
フレームレート(1秒あたりの画面描画回数)を向上させるNVIDIAの超解像技術「DLSS 4」も活用すれば、フルHD~WQHDクラスの描画解像度はもちろん、タイトルによっては4Kでのゲームプレイも快適にこなせるだけのポテンシャルを備えていると言っていいでしょう。もちろん、比較的持ち運びやすい画像・動画編集向けPCとしても適性があります。


CPUは機種によりAMDのRyzen AI 300/200シリーズやインテルのCore Ultra(シリーズ2)などを採用。コスパを重視するため旧世代CPUを採用したGIGABYTE GAMING A16を除き、CPU内蔵のNPU(Neural Processing Unit。AI処理を得意とするプロセッサー)でAI処理能力を担保しているのも重要なポイントです。
総じて、どのモデルもヘビーに使い倒せる性能・機能の高さを備えており、AIのトレンドもおさえた”長く使いやすい”製品と言えそうです。
ゲームもクリエイティブも楽しめるGIGABYTE AERO X16


ゲームもクリエイティブも楽しみたいマルチタスクユーザー向けモデル。従来の「AERO」シリーズはクリエイティブモデルとしてプッシュされる側面が強かった印象ですが、この世代からはコスパや筐体の可搬性も意識した薄型製品という立ち位置に落ち着いています。


複数スペックをラインナップしており、CPUは「Ryzen AI 9 HX 370」「Ryzen AI 7 350」、GPUにはRTX 5070を搭載。メモリーは最大で64GB(DDR5)、ストレージは最大4TBまで搭載可能です。マイクロソフトの「Copilot+ PC」に準拠するほか、NVIDIAのクリエイター向けプラットフォーム「NVIDIA Studio」認定も取得しています。近年のゲーミングPCに搭載されることが多い、ゲームプレイ時などのGPU性能を最大化できる「MUX Switch」もサポートします。


本体重量は約1.9kg、本体厚16.75mmと、ハイスペックながら薄型・軽量の持ち運びやすい筐体が特徴。ディスプレイは16インチ、画面解像度はWQXGA(2560×1600ドット)で、アスペクト比16:10とやや縦に長い液晶パネルを採用しています。液晶パネルのリフレッシュレートは最大165Hzを確保しつつ、クリエイティブもカバーできるモデルらしく、色域はsRGB 100%カバーに加え、Pantoneのカラー認証を取得しています。
画面占有率92%、4辺スリムベゼルの狭額縁仕様に加え、Dolby Atmosのサラウンドサウンドに対応するデュアルスピーカーを搭載することも考えれば、エンタメコンテンツの視聴PCとしても優秀でしょう。
価格は27万円~で、発売は5月上旬を予定しています。
フラッグシップらしい性能と質感のAORUS MASTER 16、AORUS MASTER 18


GIGABYTEのゲーミング向けフラッグシップモデルが、AORUS MASTER 16およびAORUS MASTER 18です。冒頭でも述べましたが、両モデルともすでに発売済みとなっています。
どちらもCPUにIntel「Core Ultra 9 275HX」、GPUはRTX 5090またはRTX 5080(AORUS MASTER 16のみRTX 5070 Ti搭載モデルあり)を採用するなど、内部スペックは似通っています。メモリーは最大で64GB(DDR 5)、ストレージは最大4TBまで搭載可能といった点も同様です。


一方で、両モデルの大きな違いは液晶パネルと本体サイズ、冷却システムの構造、スピーカーとなっています。18インチのAORUS MASTER 18はリフレッシュレート240Hz・応答速度3msのmini LEDディスプレイを採用しており、解像度はWQXGA(2560×1600ドット) 、輝度は最大1200nits、色域はDCI-P3 100%をカバーするなど、極めて高い性能が特徴です。


また、底部に配置されているファンは4台構成で、大面積のベイパーチャンバーや気流を整えるラテラルハウジングの併用により、最大270Wの排熱処理が可能であるとしています。ちなみにこの世代から、冷却システムの名称が「WINDFORCE Infinity EX」に変更されているとのこと。内部スピーカーは6台構成で、Dolby Atmosをサポートします。


16インチのAORUS MASTER 16は、リフレッシュレート240Hz・応答速度1msの有機ELディスプレイを採用。解像度はWQXGA(2560×1600ドット) 、輝度は最大500nits、色域はDCI-P3 100%カバーとなっています。こちらは本体サイズを抑えていることもあり、底部に配置されているファンは2台構成で、最大230Wの排熱処理に対応できます。スピーカーはDolby Atmosをサポートする4台構成です。
そのほか、天板にはナノインプリント・リソグラフィ(NIL)による12層の光学素材を重ね合わせたAORUSロゴを採用するなど、外観にもこだわっています。余談ですが、2モデルともUSB PD 3.0に対応するThunderbolt 5ポートを備えているのも注目です。あまり外に持ち出すPCでもなさそうですが、いざというときには役立つでしょう。
AORUS MASTER 16の実売価格は46万円前後~、AORUS MASTER 18の実売価格は64万円前後~。


カジュアルユーザー向けのGIGABYTE GAMING A16


GIGABYTE GAMING A16は、コスパ志向のカジュアルユーザー向けモデルです。1世代前のGPUである「RTX 4050」を搭載したモデルはすでに発売済みで、RTX 5070を搭載した新モデルが5月中旬から販売開始される見込みです。
複数スペックをラインナップしており、CPUは「Ryzen 7 260」「Core i7-13620H」、GPUはRTX 4050またはRTX 5070を搭載。メモリーは最大で64GB(DDR5)、ストレージは最大4TBまで搭載可能です。CPUの世代が最新ではないこともあり、Copilot+ PCには準拠していません。
コスパ重視モデルながら本体厚19.4mm、重量2.2kgと、ゲーミングノートPCとしてはまずまずのコンパクトさを確保。ディスプレイは16インチ、画面解像度はWQXGA(2560×1600ドット)で、液晶パネルのリフレッシュレートは最大165Hzです。また、本モデルに採用されている「ゴールデンカーブキーボード」は、従来モデルから押下圧を55~60gまで引き下げており、打鍵による疲労感の軽減をうたっています。
実売価格は13万9800円前後~。
世界初のWQHD・500Hzゲーミングディスプレイも発表


発表されたディスプレイ製品は、世界初のWQHD(2560×1440ドット)解像度でリフレッシュレート500Hzを達成した27インチディスプレイ「AORUS FO27Q5P」に加え、27インチで4K(3840×2160ドット)・240Hz表示が可能な「GIGABYTE MO27U2」の2モデルです。いずれも高速なゲーム向けの仕様が特徴で、現時点では発売日が確定していないとのことですが、コアゲーマーにとっては今から登場が楽しみなモデルと言えます。
AORUS FO27Q5P


1秒間に500回もの画面更新を実現する、最大リフレッシュレート500Hzを実現可能なモデルです。実際にゲームなどで500Hzを最大限活用するには相応のPCスペックが必要となりますが、現時点では世界最速のWQHDディスプレイと言えます。


パネルは有機EL製で、応答速度は0.03ms(GtG)と超高速。色域はDCI-P3 99%をカバーするほか、Pantoneのカラー認証を取得。さらに、輝度性能と暗部のディティール表現を保証する「DisplayHDR 500 True Black」、動画表示の鮮明さを評価する「ClearMR 21000」といった認証を取得するなど、単に高速なだけでなく、画面表示の美麗さも特徴と言えます。インターフェイスに関しては、伝送速度80Gbpsを実現するDisplayPort 2.1 UHBR20をサポート。有機ELパネルで懸念されがちな画面の焼き付きを防ぎ、ディスプレイの寿命を延ばすAI ベースのパネル保護システム「GIGABYTE OLED Care」を搭載しています。








そのほか、ゲーミングディスプレイらしいサポート機能も複数用意。FPSゲームなどでフラッシュグレネードの激しい発光を自動的に調整して目の不快感を軽減する「フラッシュ調光」、ハードウェア上で画面サイズを24インチモードに縮小したり、アスペクト比を4:3や5:4に変更できる「タクティカルスイッチ 2.0」、暗部表現を調整する「ナイトビジョン」「ブラックイコライザー2.0」などを利用可能です。
発売時期・価格は未定です。
GIGABYTE MO27U2


27インチサイズながら4K(3840×2160ドット)解像度に対応することで、166PPIと精緻な画面を実現しているのがGIGABYTE MO27U2です。リフレッシュレートが最大240Hzと高速なため、ハイスペックPCと組み合わせれば、4K解像度で滑らかなゲーム描画を堪能できるでしょう。


パネルは有機EL製で、応答速度は0.03ms(GtG)。色域はDCI-P3 99%をカバーし、Pantoneのカラー認証に加えて「DisplayHDR 400 True Black」「ClearMR 13000」認証を取得するなど、こちらも十分に美麗な画面表示が可能と言えます。また、AORUS FO27Q5Pと同様にパネル保護システム「GIGABYTE OLED Care」を搭載しています。
発売時期は未定ですが、価格は15万円前後となる見込みです。
ゲーミングPCにもAI時代到来!
冒頭でも少し述べましたが、ゲーミングノートPCに専用のAIエージェントを搭載したのはおそらくGIGABYTEが初めてでしょう。音声コントロールなどの機能にどれだけ利便性があるのかは試してみないとなんとも言えないものの、いよいよゲーミングPCにもAI時代が到来しつつあり、その嚆矢となるのが今回発表された新製品群である、ということは言えるのではないでしょうか。各モデルはもちろん、GIGABYTEの今後の展開にも期待したいところです。
撮影/ヒゲ企画