こんにちは。GetNavi web編集部の玉造です。ビジネスマンにとってはひやひやの年末を乗り越え2019年を迎えましたが、年始は年始で各所へのご挨拶などでいきなり忙しい! なんて方も少なくないのでは?
外出の多いビジネスマンに最適な13.3型ノートパソコンにおいて、世界最軽量(※1)の重量が更新されました。富士通クライアントコンピューティング(FCCL)の新しい最上位ライン「X(テン)」から生まれた、13.3型ノートパソコン「UH-X/C3」は、長距離出張でも真価を発揮する軽さを実現しています。
つい先日、私も長距離出張へ出かけたのですが、UH-X/C3のおかげでとても快適に年末仕事を処理できました。本記事の前編にあたるその様子をまずはご覧ください。
UH-X/C3の真価を探る出雲旅 前編はこちら
お蕎麦を食べたり縁結びを祈ったりとただの観光かと疑われそうですが、じっくりとUH-X/C3の実力は体感しましたよ! 試す内に数々の疑問が生まれましたが、結局は「なぜこんなに軽いのか?」という疑問に集約されていきそう。私自身はここまでの旅でUH-X/C3の有用性と軽さのメリットをとても実感していますが、皆様にきちんとその詳細を言葉にして伝えるべく、FCCLのノートパソコンを製造している島根工場を暴きまくってやろうと思います!
あらためてUH-X/C3の基本性能をおさらいしてから、禁断の島根工場見学をご覧ください!
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軽量化した約50gの内訳は「60%が筐体、35%が液晶&キーボード、5%が…」
さてやってきましたよ、「島根工場」こと島根富士通さん!
今回の旅路でUH-X/C3を使って玉造が疑問に思ったことは、おおむね「なぜこんなに軽いのか?」というシンプルなものですが、細かくおさらいしてみたいと思います。
「見た目のサイズより軽く感じるのはなぜ?」
「軽いながらも堅牢性が上がっているのはなぜ?」
「端子が増えているのに軽くなったのはなぜ?」
「顔認証カメラが増えているのに軽くなったのはなぜ?」
「バッテリー駆動時間が強化されているのに軽くなったのはなぜ?」
「キーボードが打ちやすくもあるのに、こんなに静かなのはなぜ?」
実はUH-X/C3の開発キーマンであるお二方にも事前にお話を伺っています。その上で試して、これらの疑問を持って島根工場にやってきたわけです。
島根工場で約50gの秘密を探る上で、とても貴重なお話を聞けたのでその内容と合わせてレポートしていきます!
まず、先にお伝えしておくと約50gの軽量化にキーボードも大きく寄与しています。旅の前にお話を伺った開発キーマンの河野さんと松下さんによると、「約50gの内訳は、60%が筐体の改善、35%が液晶とキーボードの改善、残りの5%が細かな部位設計見直しの積み重ね」とのこと。島根工場でもまずキーボードについて、驚くべき事実を目の当たりにしてきました。
【キーボードの秘密1】独自設計の超軽量ネジ72本で設置している
キーボードが軽量化に関わる最大のトピックは、キーボードを止めるネジがいちから独自設計されたということ! 既存品との違いは、ネジの頭が小さく薄くなっている点です。そのネジを全部で72本使って止めているのですが、72穴というのもなるべく軽量化するために剛性を保てるギリギリの数にしたそうです。
これだけ小さいネジですから人の手では締められず、UH-X/C3のキーボード設置には島根工場が誇る「ネジロボ」が大量に稼働しています。
こういった細かな研鑽が700gを下回る軽さの実現を支えているのですが、ネジをいちから設計する軽量化への徹底ぶりと、ロボを稼働して実現する技術力にいきなり舌を巻いてしまいます…!
【キーボードの秘密2】静音性を重視した樹脂の採用と徹底した打鍵試験
UH-X/C3のキーボードは、金属ベースのパンタグラフではなく、樹脂製のものを採用しています。カシャカシャ音が抑えられている要因は、樹脂のおかげだったのです。
UH-X/C3の設計理念は「ユーザビリティの高さを担保した上での最軽量」とのことで樹脂の採用も頷けますが、島根工場ではその理念を支えるために多くの試験が行われていました。UH-X/C3に限りませんが、工場の製造ラインではキーを自動打鍵して異常がないかを調べるセクションを用意。
またライン上だけでなく特別な試験として、理想の押し感を再現するための打鍵試験も行っています。
この試験は、打ちやすい設計数値になっているかを確かめるもので、キーを打つ強さも人の強さを想定しています。モデルの構造によってキーボードがたわみやすいところも変わるそうで、設計から齟齬がないかを数値上で丁寧に確かめています。スペースキーなど長いキーは、端っこや真ん中など複数点をチェックする徹底ぶり。
複数の試験と機械を見て思いましたが、これだけ丁寧に設計と確認を繰り返していれば…そりゃあもうキーボードの質と静音性の高さも納得するしかないです。まいりました。
キーボードだけで多くの技術が投入されていることがわかりましたが、ここから一気にボディと中身の秘密に迫っていきますよ!
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【ボディの秘密1】軽さを求めたマグネシウムリチウム合金素材と筐体設計
前述した通り、今回の軽量化で最も大きなポイントは筐体の見直しです。見直しというと細かいブラッシュアップを想定するかと思いますが、お話を聞く限りはほとんど全見直しですね…! まずはカバー素材ですが、前機種の一部天板に用いていた軽量性に優れるマグネシウムリチウム合金を全面的に採用。
ただマグネシウムリチウム合金は、前機種まで採用していたマグネシウム合金に比べると剛性で劣ります。その点をカバーしているのは冒頭に述べた天板側面の肉厚アップと内部を補強形状にした、成形によるキーボード側カバーの構造です。キーボード側カバーは鍛造成形で立ち壁を作り、底面カバーと組み合わせることで強固の作りとしています。写真で見てみましょう。
実はこの成形、組むのに工夫が必要なんですって…! 具体的には今までは端子類を底面カバーに載せるように配置するだけで済んでいたのが、今回はカバーに用意されたポートにハマるように設置しなければいけなくなっています。
現場で他のラインと工程を見比べましたが、明らかにこの設計により工程が増えている印象。数秒に一回針の穴に糸を通しているような…! しかし、作業工程の見直しとチームの教育徹底で、製品クオリティと効率には影響のないようにしているとのことでした。
軽量化と堅牢性を生み出しているのは、設計の飽くなきこだわりであることはもちろんですが、島根工場のモノづくりに対する対応力の高さも寄与しているのだと痛感。不器用な私には、あの作業は途方もない…!
軽量化の秘密はまだ続きますが、端子についてここで触れておきましょう。「端子が増えているのに軽くなったのはなぜ?」という疑問を私は持ちましたが、設計の考え方としては繰り返しになりますが「ユーザビリティ優先」となっているため、そもそも軽量化と平行して端子の増加は決めていたそうです。
最後まで設計で悩んだのが有線LANポートを残すか否か。有線LANポートの重さが約10g。710g前後まで削いでいったところで悩んだものの、ポートをなくすことはせずに先ほどのネジなど細かな部分の軽量化を選択しています。まさに執念によって生まれた約698g(※5)。
【ボディの秘密2】振動、圧迫に耐える強いボディを追求する試験体制
堅牢性を保ちつつギリギリまで肉を削いで仕上がった究極の軽量ボディ。その信用性を保つために島根工場では特別な耐圧、耐振動試験を行っています。
加圧試験は「満員電車でぎゅうぎゅうの状態」くらいの加圧を想定(※3)。たしかに現実的に起こる加圧ってそれくらいですよね。 耐震試験は自転車試験と呼ばれる試験で、自転車のカゴを模したカゴに同じシチュエーションをイメージした振動を加えるというものでした。これも現実的によくあることですよね。
これまで耐震、耐圧って耐えられる最大値で試すものというイメージを持っていたのですが、きちんとシチュエーションをイメージして検査することを初めて知りました。ユーザーの目線を忘れずモノづくりをする島根工場のスピリットを感じた瞬間です。
約50g軽量化の60%を占める筐体にかけられたリソースをこうして見ていくと、「軽くて丈夫の良さが実感しにくい」なんて言ってた記事冒頭の自分を引っ叩いてやりたくなりますね。軽くて当たり前なんて理想の裏には、これだけの技術と努力があったのです。残った秘密もあと少し。最後はUH-X/C3の「液晶」と「中身」に隠された秘密を暴いていきます。
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【液晶の秘密】立てられないほど薄型化したLCD液晶の意外な管理方法
液晶が軽量化に関わる理由はシンプルに薄型化したからですが、薄型になるともちろん割れやすくなり、ライン上でも繊細な管理が求められてきます。
従来のライン工程では、すぐに取り出し組み立てできるように液晶パネルは縦に保管していましたが、今回は縦置きでは割れる可能性が高いため、LCDが入荷された状態のままラインに常備するという新たな方法が生み出されました。
写真の梱包から取り出して縦置きで管理していくのが従来でしたが、そのまま出さずに直接設置していくという方法。ライン内でのスペースはとるものの、毎回取り出す手間が減って効率化にも繋がっています。
開発当初、島根工場のみなさんは「縦置きで割れちゃうような薄い液晶、どうやって設置するんだろう…」と途方に暮れたそうですが、LCDメーカーと話し合いを重ねて今回の方法に至りました。良きモノを作るためにラインの体制を変える発想に驚きます。
【中身の秘密】限界まで突き詰めた基板設計と細かすぎるカメラの設置
軽量化の追求として、基板の全面見直しも図られたUH-X/C3。省スペース化するために、全てをオンボード化して面積を15%少なくすることに成功しています。
ここまで読んで頂いたみなさんならおわかりかと思いますが、薄型化した部材は強度が低くなり取り扱いが難しくなります。島根工場では細心の注意を払って取り扱われていました。
ファンの位置が変更されているのは熱効率の向上を狙ったものですが、風量を上げるためにファン自体も大きくなっています。しかし、板金をアルミ化することでなんとファンもトータルでは軽くなっているそうです。開発力の高さに驚くばかりですが、開発の松下さんによると「基板での軽量化はほぼ限界値」とのこと。
ところで島根工場で基板の設置について見学していたら、恐ろしい工程を見てしまいました。今回の取材で一番驚いた点でもあります。新しく備わった顔認証カメラの設置工程なのですが、天板に補強形状を入れたというのは繰り返しお伝えしていますが、そのカバーがカメラの動線にまたぐため、非常に繊細な設置方法となっていたのです! 写真でご覧ください。
見えますか? ダメ押しでくぐらせている穴を正面から見てみましょう。
ラインが流れて稼働しているところもぜひ見てほしかったのですが、コンマ1秒にこだわっているところ、数秒はかかりそうな工程が増えているので相当大きな作業となっていると理解頂ければ。しかし、島根工場のみなさんが全く動じずに動線を設置して、「お客様の求めるクオリティに必要なら」と笑顔を見せていると、ただただ敬礼したい気持ちに駆られてしまいました…。
開発者と製造者の密なコミュニケーションがなければ、数千、数万個単位の数のモノづくりで、ここまでのこだわりは注げません。稲佐の浜でサッとスカイプできたのも、この工程があったおかげなんですよね。
大ボリュームでお届けした島根工場見学もこれにて終了。秘密を暴いているつもりが、卓越した匠の技術に感服するしかなくなってしまいました。しかし、今はハッキリと断言できますが、UH-X/C3の約50g軽量化は確かな裏付けと信頼があってのものです。UH-X/C3のボディは軽さを徹底していますが、詰め込まれた思いは決して軽いものではないのです。
【最後に】バッテリーが秘めた軽量化の可能性
大長編となった本記事にお付き合い頂いたみなさんに、最後に残された秘密「バッテリー駆動時間が向上したのに軽いのはなぜ?」にまつわるお話をしたいと思います。
公称値におけるUH-X/C3のバッテリー駆動時間向上は、液晶側の省電力機能が向上したことで実現されています。液晶に表示している部分が動画か静止画かを、液晶全体ではなく部分的に判断し、画面変化のない静止画エリアについては液晶側のみで描画処理をすることで、メモリからの読み出しやGPUの動作に必要な電力が削減されるため、装置全体の駆動時間向上に大きく寄与しています。
開発の河野さんに「今後さらに軽量化する際、手を加えるとしたら?」という質問をしたところ、「バッテリー」という答えが返ってきました。考えられる限りの肉を削いできたUH-X/C3ですが、バッテリーにはまだ手を加えられていないとのことです。
バッテリーの製造技術も進化しており、薄く軽くかつバッテリーも長持ちするように研鑽されています。軽さについては私も今回の旅で、期待以上の実感を得られたわけですが、バッテリーに関してもさらに突き詰めてほしいとも思いました。理想論ではありますが、ACアダプタを持ち歩かなくても今回の旅ができるくらいの容量に進化させることは、FCCLの開発力、そして島根富士通の匠の技があればできると信じています!
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【SPEC】
●OS :Windows 10 Pro 64bit版 ●CPU:インテル® Core™ i7-8565U プロセッサー(1.80GHz-最大4.60GHz) ●メモリ:8GB ●ストレージ:約512GB SSD ●液晶ディスプレイ :13.3型ワイドフルHD(1920×1080)液晶ディスプレイ(IGZO)、ノングレア仕様 ●グラフィック:Intel® UHD Graphics 620(CPUに内蔵) ●外部インターフェイス左側:USB 3.1(Gen2)Type-C端子×1、USB 3.1(Gen1)Type-C端子×1、HDMI出力端子×1、USB 3.0 Type-A端子×1、ヘッドホン端子×1/右側:SDメモリーカードスロット×1、USB 3.0 Type-A端子×1、有線LANポート×1 ●無線通信 :IEEE802.11a/b/g/n/ac準拠、Bluetooth v5.0準拠 ●バッテリー駆動時間:約11.5時間 (※2) ●サイズ(※4) /質量:約W309×H15.5×D212mm/約698g(※5)
※1:13.3型ワイド液晶搭載ノートPCとして世界最軽量。2019年1月1日時点、富士通クライアントコンピューティング調べ。
※2:JEITA測定法Ver2.0による測定値。
※3:無破損、無故障を保証するものではありません。
※4:突起部含まず。
※5:平均値のため各製品で質量が異なる場合があります。
撮影/高橋敬大、我妻慶一