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2024/6/19 18:30

Google AIでなにができるの? 7万円台の「Pixel 8a」で検証してみた

5月14日にグーグルが発売したAndroidスマホ「Google Pixel 8a」(以下、Pixel 8a)が好調のようです。本機には独自設計の最新プロセッサー「Tensor G3」が搭載され、「Google AI」のさまざまな機能が使えます。価格は7万2600円(税込)。

 

このAIスマホを1か月ほど使ってみた筆者がおすすめする、Pixel 8aの実践的なAI機能を紹介します。

 

片手持ち操作も快適な6.1インチ。バッテリーも長持ち

Pixel 8aはディスプレイのサイズが6.1インチ。最大120Hz駆動に対応する有機ELの「Actuaディスプレイ」は、自然な色再現と滑らかな動画表示が特徴です。背面には広角64MP・超広角13MPのデュアルレンズカメラを搭載しています。前面の13MPカメラと合わせて、本機で撮影できる写真や動画のクオリティはとても安定しています。

↑コンパクトな6.1インチ。片手持ち操作も快適にこなせます

 

↑有機ELを採用する「Actuaディスプレイ」は発色が自然

 

Tensor G3チップは最先端のAI機能を高速に処理できる​パフォーマンスを備えていますが、同時にAIに関連する機能を1日中ふつうに使いながら、むやみにバッテリーを消費しないように駆動効率の最適化も図っています。グーグルが公式スペックに記載するバッテリーのスタミナは「24時間以上持続可能」となっていますが、実際には1日半ぐらい持つ印象です。最大72時間のバッテリー持ちを実現する「スーパーバッテリー セーバー」の機能もあります。

 

「a」が付かないPixel 8/Pixel 8 Proとの違いは「バッテリーシェア」の機能がないことです。PixelスマホでQi対応デバイスをワイヤレス充電できる機能で、対応イヤホンや2台持ちしているiPhoneがPixel 8aだとチャージできない点はピンチが訪れたときに不便さを実感することがあります。

 

本体はPixel 8よりも縦横サイズが2mmほど広くなりました。筆者の実感としては、Pixel 8の方が手に持つとグリップ感がより安定します。

↑左がPixel 8a、右がPixel 8。Pixel 8aの方が縦横のサイズが2mmほど広くなっています

 

AI画像編集機能はプロ向けソフトなみの実力

Pixel 8aが搭載するGoogle AI機能は多岐に渡りますが、筆者はやはりAIによる写真と動画の加工機能がとても役に立っています。

 

Google Pixel純正の「フォト」アプリにはさまざまなAIによる写真・動画の編集機能があります。特筆すべき良いところは、写真などはPixel 8aで撮影した素材でなくても、フォトアプリで読み込めれば独自のAI編集ができることです。Pixel 8aがあれば、PCと画像編集ソフトで時間をかけて写真を補正する手間はもう必要ないかもしれません。

 

筆者がよく使う「ボケ補正」は、​手ブレなどで精細感を欠いてしまった写真のディティールをAIと​機械学習の力で​直す​機能です。夜景などは、撮影したその場で確認するとキレイに撮れているように見えても、PCに取り込んでみたら輪郭がぼんやりしていることがよくあります。そんなときに、フォトアプリの「編集」から「ボケ補正」を選ぶだけでシャキッとした写真になります。加工があまり不自然にならないように、補正レベルは0から100の間で細かく調整できます。

↑フォトアプリの「ボケ補正」。補正レベルを細かく調整できます

 

大勢が写るグループ写真は、誰かの目線や表情がイケてない場合が多々あります。同じ場所で複数のショットを撮っておけば、あとからGoogle Pixelの「ベストテイク」機能で、各人のいいとこ取りをしたベストな1枚を合成して残せます。

 

貴重なフォトチャンスを逃してしまっても、Pixel 8aがあれば「やり直し」が効くところがGoogle AIの魅力です。たとえば旅行に行って歴史的建造物の前で自撮りをパシャリ。スマホの画面でプレビューを入念にチェックしたはずなのに、写真に写る自分が建物の手前に被りすぎていることもよくあります。Pixel 8aの「編集マジック」を使えば写真に写る自分の立ち位置や大きさを変えて、背後に写るランドマークの方をより目立たせた写真に加工できます。

↑黄色い印を付けたアイコンが「編集マジック」。被写体のサイズや配置を自由に変更できます

 

ただし、被写体を動かした元の場所にある画像はAIが機械学習によって復元してくれるのですが、建物などの場合は復元された画像が不自然になる場合もあります。あとで編集マジックを使う前提だとしても、自撮り撮影の際にはプレビューチェックを欠かさないようにしましょう。

↑左が編集前、右が編集後の写真。建物の形などはAIがキレイに復元していますが、人物の影は元の位置のままでした

 

不要な画像・音声をAIで消す

AIによる写真補正機能といえば、Pixel 6シリーズから搭載する「消しゴムマジック」の便利さが図抜けています。観光地など人通りが絶えない場所で、背景に人が写り込んでいない写真を撮ることは困難です。Pixel 8aの「消しゴムマジック」があれば、フォトレタッチの技術がなくても不要な被写体をサクッと消せます。

↑「消しゴムマジック」で背後に写る人物を消去。SNSにも公開しやすくなります

 

Pixel 8シリーズから搭載が始まった「音声消しゴムマジック」も、ビデオに収録された音声の種類をAIが自動で分類して、たとえば「人の声だけ残して、ノイズを消す」といった後加工が簡単にできる機能です。観光地のきれいな風景を動画で撮影中に、クルマのクラクションが鳴っても「うるさいノイズだけを消す」こともできます。使いこなせるようになると動画撮影の幅がグンと広がる実感があります。

↑「音声消しゴムマジック」の機能。動画に含まれる音声を自動で分類して、消したい音だけを消せるようになります

 


↑元の動画。背景で盛大にノイズが鳴り響いています

 


↑音声消しゴムマジックをかけると、ノイズだけが消えて、人の声や自然の音だけが残ります

 

メインカメラでの撮影時には最大8倍の超解像ズームが効きます。遠くの被写体もPixel 8aなら手ブレを抑えながらキレイに撮れます。

 

グーグルの生成AI「Gemini Nano」で何ができる?

カメラ系以外のGoogle AI機能の中では「かこって検索」が便利です。Pixel 6以降のモデルや、サムスンのGalaxyシリーズの一部機種などが対応しています。たとえば誰かがSNSに投稿したギターの写真にグッときたときも、画像を「かこって検索」すれば即座にWebで検索したり、取り扱っているショップを調べたりすることができます。

↑インスタで見つけた気になるギターを「かこって検索」で調べると、機種や扱っているショップなどをすぐに調べられます

 

Pixel 8aは今後予定しているグーグルのFeature Dropアップデートにより、デベロッパーオプションとしてグーグル独自のモバイル向け生成AI「Gemini Nano」が使えるようになることが予告されています。

 

Gemini Nanoに一足早く対応したPixel 8 Proでは、Pixel純正のレコーダーアプリで録音した音声のテキスト文字起こしを「要約」できるほか、メッセージアプリなどでGboardを使ったスマートリプライ(テキストをAIが先読みして提案する機能)が搭載されました。これらの機能はPixel 8 Proがオフラインの状態でも使える、デバイス上に搭載された生成AIベースの機能です。日本でも使えるのですが、対応する言語が英語のみなので、正直あまり筆者の生活の中で活躍する場面はありません。Pixel 8aへの対応と、日本語対応を期待しながら待ちましょう。

↑Gemini Nanoが実現するレコーダーの「要約」機能。今のところ日本語の要約には対応していません

 

グーグルの下取りサービスを使えばさらに安く買える

価格面において、携帯通信キャリアによる割引サービスを上手に活用すれば上位のPixel 8がPixel 8aに並ぶお得な価格で買える場合もあります。一方で、上位のPixel 8でなければ力不足、と感じることもないと思います。ですので、最先端のGoogle AIをとりあえず体験してみるのに、Pixel 8aは最適といえます。

 

Googleストアの下取りプログラムを活用してPixel 8aを買う場合、Pixel 6aからの買い換えは最大1万4000円、Pixel 7aからであれば最大1万9000円の値引きが適用されます。また、グーグルはPixel 8aに対して、今後7年間に渡ってOSアップデートとセキュリティアップデートを提供し続けることを宣言しています。Google AIのアップデートもPixel 8aで長く楽しめる可能性も考えれば、7万円台のGoogle AIスマホは十分にお買い得だといえそうです。

 

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