ファッション
スニーカー
2022/5/29 6:00

あなたの知らないヴィンテージスニーカーの世界。専門店「soma shimokitazawa」で話を聞いみた。

ヴィンテージスニーカーをモチーフに、ピカピカの新品スニーカーをベースに退色させたシューレースに付け替えたり、ミッドソールを黄ばんだようにペイントすることで、あえて経年劣化したよう味付けしたセルフカスタム。一方、ヴィンテージモデルを模して、あらかじめユーズド加工を施した新品スニーカーのことを、“ネオ・ヴィンテージスニーカー”と呼んでいます。

 

ヴィンテージムーブメントが目立ち始めている昨今のスニーカーシーン。本家本元のヴィンテージスニーカー界のリアルな現状を知るべく、東京都世田谷区下北沢にあるヴィンテージスニーカー専門店「soma shimokitazawa」店長・徳永さんを訪ねてみました。

 

90年代の日本のような状況がタイや東南アジアで発生中

soma shimokitazawa店長・徳永勝文さん

20代はカナダにて庭師として過ごし、帰国した2003年に下北沢でヴィンテージスニーカー専門店「soma shimokitazawa」をオープン。以来、自らバイヤーを務めながらお店を運営。ここ10年は北米やヨーロッパ在住のバイヤーから仕入れを行い、コロナ禍以降も滞り無く珠玉の一足を日本に広めている。

 

――日本では90年代にヴィンテージスニーカーブームが起きていましたよね。私はドンピシャの世代なんですけど……。その後ヴィンテージスニーカーブームは、いつぐらいに終焉を迎えたのでしょうか?

 

徳永 たしかに90年代の日本はヴィンテージスニーカーとハイテクスニーカーが同時に高い人気を得ていましたね。1996年頃だと「ナイキダンク」や「ナイキ ターミネーター」のオリジナルの価格がかなり高騰していたのはもちろん、そのフェイクにすら高値が付けられていました。今思い返してもおかしな時代でしたね(笑)。

 

しかし1998年頃にはハイテクスニーカーと、「ナイキACG」などのアウトドア系スニーカーの人気が完全に上回りました。なので、その頃にはヴィンテージスニーカーブームがすでに下火になっていたと思います。そして僕が日本に帰国して2003年に「soma shimokitazawa」をオープンさせた時には、スニーカー自体の人気がだいぶ落ち着いていましたね。その後、2016年頃から再びスニーカーブームが起きて、ここ最近ではヴィンテージスニーカーの人気も再び盛り上がってきています。

↑soma shimokitazawaの店内。壁一面にギッシリと陳列された、お宝ヴィンテージモデル群。この光景を見るだけでも訪れる価値はありますね!

 

――90年代のヴィンテージスニーカーブームはわずか2年ぐらいだったんですね。そして第2次ブームがきていると。ところで、海外でのヴィンテージスニーカーの人気というのはどうなのでしょうか?

 

徳永 日本の90年代のような状況が、タイなどの東南アジアで起こっていますね。少しずつ価格が高騰し始めていて、特にコンバースの人気が高いですね。香港や上海ですと、日本と同じような感覚でナイキが人気です。コンバースのスニーカーで言うと、70~80年代の「ジャックパーセル」が人気ですね。

↑オールスターマニアにはたまらない、通称“83カモ”と呼ばれる1983年製のオールスターもしっかりと網羅

 

増えることはなく減る一方のヴィンテージスニーカー

――90年代の時点で、70~80年代のスニーカーがレアでした。2022年になり、なおさらレア度が高まっていますよね?

 

徳永 たしかにそうなのですが、90年代当時と2022年では状況が少し違っています。今はほとんどの人気スニーカーに復刻モデルが登場していますが、当時は復刻モデルが無かったので、もっとレア感が強かった。90年代は街で70~80年代に登場したスニーカーを見れば、オリジナルそのものでしたが、今は街で見かけてもオリジナルなのか復刻モデルなのか分りません。さらには復刻モデルでも、最近の復刻なのか、2000年代初期に登場した復刻モデルなのかも分かりづらい。

 

オリジナルは増えることはなく減る一方なので、価格が上がっていくことは避けられませんね。このお店を始めた当時“30年前のモデルですよ”と説明していたスニーカーが、今では同じ物を“50年前のモデルですよ”と言う説明になっている。価格も当時は5万円で仕入れていたスニーカーが、今では10万円になったりなど当たり前ですからね。

 

オリジナルモデルしか存在していない90年代とは違い、新品の復刻モデルが普通に流通している現在。昔のスニーカーをとり入れたファッションを楽しむには、決してオリジナルにこだわる必要もないと思います。

↑ヴィンテージスニーカーではボックスも大事な要素。箱だけで約2000円の価値が付くとのこと

 

海外セレブがヴィンテージスニーカーの火付け役に

――日本では90年代にヴィンテージブームが起こって以来、ここ最近のネオ・ヴィンテージが注目を浴びるまで、長い期間ヴィンテージへの関心が薄れていましたが、海外でのヴィンテージスニーカーへの関心はどうなのでしょうか?

 

徳永 北米やヨーロッパでは、日本よりも早くからヴィンテージスニーカーの動きが活発化していましたね。現代にはSNSがあるから、そこにアップするためにヴィンテージスニーカーを集めている人も大勢います。当初はラグジュアリーブランドとのコラボレーションスニーカーなどハイプ系ばかりを収集していた人たちが、さらにヴィンテージスニーカーも集め出しました。

 

――ただでさえプレミアムな価格で流通するハイプスニーカーに加えてヴィンテージスニーカーもコレクションするとは、すごい財力ですね。

 

徳永 そうなんですよ。海外のヴィンテージスニーカーコレクターってセレブが多いのですが、そのセレブのレベルが、日本とは桁違い(笑)。ヨットやクルーザーをポンッと買えちゃうようなお金持ちばかりです。

 

――最近ではアメリカの有名なラッパーがオリジナル(1985年製)と思われる「ナイキ エア ジョーダン 1」を履いているコーディネートをSNSにアップしていましたね。

 

徳永 そうですね。ビジネスの成功者(実業家)や世界的人気のミュージシャンなどセレブたちが、ヴィンテージスニーカーをSNSにアップしたりして“今までと違うネタを発信してやろう”という動きが見て取れますよね。そして、SNSを見たファンたちが憧れ、真似もしたりする。これらの要因がヴィンテージスニーカーへの関心が高まっている理由と言えます。

 

アメリカのスニーカーカルチャーにおいて、ピカピカの新品を履くことは成功者の証で、ステータスにありました。しかし、今はさらに一歩先にいき“古いモノにも大金を出せる”という具合に、価値観が次のレベルに発展したのかもしれません。

↑アディダスのメトロアティテュードやプロモデルと言った80年代バッシュのオリジナルはマニア垂涎

 

↑ガラスのショーケース内にはナイキのワッフルトレーナーやLDVといったレトロランニングモデルを保管

 

スニーカーが長持ちするか否かはソール次第

――現状で残っているヴィンテージスニーカーの素材などの特徴はありますか?

 

徳永 長い間残っていくスニーカーの条件と言えるのが、ゴムのソールですね。90年代以降のスニーカーのソールはポリウレタンを使用しているので、必ずと言っていいほど、時間が経つと加水分解してしまいます。アッパーはナイロンやコットン、レザーなどを使っているので耐久性が高いのですが、残念ながらソールだけがダメになってしまう。EVAだったら加水分解のようにボロボロになることはないですが、硬化する可能性は高いですね。

 

しかし、今はソールのリペア技術がかなり発達しているし、差し替えることも可能なので、ソールを交換して履き続けることもできますよ。

↑取材当日の徳永さんの足元をふと見ると、プーマの「スリップストリーム ロウ ザ ネバーウォーン」を履いていました。1987年にリリースされたバスケットボールシューズのデッドストックを再現した新作。ヴィンテージスニーカーの専門家がネオ・ヴィンテージモデルを履くとは意外!

 

――ヴィンテージスニーカー初心者にオススメなモデルはありますか?

 

徳永 80年代中頃にナイキからリリースされた「ザ マック」ですね。これは当時のテニスプレーヤー「ジョン・マッケンロー」が着用したモデルで、価格も2万円そこそこだしオススメでした。しかし最近、トラヴィス・スコットが着用したことで、一気に値上がりしてしまいましたね(笑)。ヴィンテージ市場も、ファッションアイコン次第で大きく動くんですよ(笑)。

 

somaオススメの今旬ヴィンテージスニーカー4選!

せっかくなので、somaがオススメする4モデルをピックアップしていただきました。いずれもコンディションが良くキチンと履きこなせることが可能。ただし一点物なので、気になる方はお早めに!

↑80年代にリリースされたアディダスの「スーパースター」。スーパースターマニアも唸るフランスメイドで、ブラック×ホワイトのシュータンのカラーリングから、フランスメイド最終モデルと予想されます。サイズ:6.5インチ、6万9800円(税込)

 

↑プーマの代表的モデル「スエード」。ユーゴスラビアで製造されていた80年代のモデルで、アッパーとソールを接着剤で接合するセメント製法を採用。現行モデルと違いソールのサイドにステッチが入っていません。サイズ:9.5インチ、4万3780円(税込)

 

↑ボクらの“永久定番”コンバースの「オールスター」。90年代のU.S.A.モデルで、シルエットが若干細身と言われています。サイズ:9.5インチ、1万5290円(税込)

 

↑「ナイキ SP ナイロン」。70年代にリリースされたナイキの超初期モデルで、まさかのジャパンメイド。ソールの減りも少なく好コンディションを維持している。サイズ:5インチ、9万8780円(税込)

 

【店舗情報】

soma shimokitazawa

住所:東京都世田谷区北沢2-33-6 飯島ビル202

電話番号:03-3481-0307

 

撮影/大田浩樹

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】