ダイソンは、扇風機と空気清浄機の1台2役が特徴の空気清浄ファン「Dyson Pure Cool」の新モデルを発表。「検知」「清浄」「循環」の3つの機能を強化し、大幅な進化を果たしています。筆者個人としては、風が直接肌に当たらず、寒く感じない送風モードに注目したいところ。4月12日の発売にともない、その製品説明会が開催されたので、以下でレポートしていきます。
もっとも体内に取り込む量が多いのが空気
新製品は空気清浄機能を強化していますが、なぜダイソンがここ日本で空清に力を注ぐのか。その前提として、国立研究開発法人産業技術総合研究所主任研究員の篠原直秀氏が、日本の屋内空気環境を説明しました。
「1990年代から住宅の高気密化・高断熱化が進んだ結果、換気性が悪くなり室内の空気質が悪化していきました。人は1日に平均約20㎥の空気を体内に取り込んでおり、水を含めほかのどんな飲食物より摂取量が多い。また、1日のなかで自宅で過ごす時間は55-85%、職場や学校を入れると実に1日の90%を室内で過ごしています。いかに室内の空気環境が大切かがわかります」(篠原氏)
室内は屋外よりも多くの化学物質があふれている
また、室内は実に多くの化学物質があふれています。カーテンには難燃剤として有機リン酸エステル類、クローゼットには防虫剤としてパラジクロロベンゼン、壁の合板・壁紙の接着剤としてホルムアルデヒドといったVOC(揮発性有機化合物)、キッチンのガスコンロや石油ストーブ、窓を開けた時に入る車の排気ガスからはNO2(二酸化窒素)。さらに、ホコリや花粉、PM2.5といった微粒が漂っています。
「規制によって屋内の化学物質の濃度は下がっていますが、屋内と屋外の比率を見ると、ほとんどの物質で屋内のほうの濃度が高くなっており、屋内の対策が必要なことがわかります。新たな化学物質が登場しているほか、日本の場合はカビも問題となります。高温多湿でカビが生えやすいうえ、冬も高気密住宅内で加湿器を使うことで、窓や壁が結露してカビの温床になっています。こうした有害物質を除去するには、換気、空気清浄機、こまめな掃除といった複数の対策を組み合わせることが効果的です」(篠原氏)
室内環境を整えるため重要なのが「検知」「清浄」「循環」の3つの機能
このような背景を踏まえて、「Dyson Pure Cool 空気清浄ファン」は開発されました。ダイソン ヘルス アンド ビューティー部門のバイス プレジデントであるポール・ドーソン氏は、「日本の室内環境を整えるためには、3つの機能が重要。『室内にどのような汚染物質があるのかを検知する機能』『それを捕らえて清浄する機能』、そして『きれいな空気を循環させる機能』です」と説明します。
3つのセンサーで感知した情報をディスプレイに表示
まず“検知”ですが、今回新たに3つのセンサーを搭載しました。レーザー計測によって粒子物質の量を検出・分析する微粒子(ホコリ)センサー、VOCやNO2を検出する有毒ガス・ニオイセンサー、そして温度・湿度センサーの3つです。これらセンサーが汚染物質を検知すると、新搭載のカラーLCDディスプレイにその種類が表示され、リアルタイムで処理する様子を見ることができます。「実際のリビングと同じ空間を作り、7万5000時間のテストを経て作り上げたアルゴリズムによって、ベンゼンやホルムアルデヒド、二酸化窒素、一酸化炭素などを検知できるようになりました」とドーソン氏。
フィルターと活性炭の量を増やし、パッキンで隙間を埋めて汚れた空気を逃さない
次に空気を清浄する機能のポイントですが、まず、外装のフィルターケースに従来より60%多いHEPA剤(高性能フィルター)を導入。グラスHEPAフィルターには、従来より3m長い9mのものを200回以上折ってプリーツ状にしたフィルターを搭載し、PM0.1レベルの微粒子を99.95%除去します。有害ガスやニオイを吸収する活性炭フィルターも、従来比で活性炭の量を3倍以上に増やしました。
「汚染物質やニオイをフィルターに1回通しただけで、全てを確実に除去することが重要。日本市場の上位3ブランドのモデルは、吸い込んだスモークが吹出口から出てきているが、ダイソンは全く出てきません。これは、吸い込んだ空気を完全に清浄しているからです」とドーソン氏は胸を張ります。
これはフィルター周りの構造の違いによるものです。一般的な空気清浄機の場合、各種フィルターは本体に簡易的にセットされているだけで、フィルターと本体の間には隙間があります。そこから清浄されていない空気が再度部屋に排出されるのに対し、ダイソンの場合は、フィルターの周囲をゴムパッキンで囲み隙間を作りません。このため、吸い込まれた空気は余すところなくフィルターで清浄されてから排出されます。なお、フィルターは清掃などのメンテナンスは不要で、交換目安は約1年間(1日12時間使用の場合)。
毎秒290Lの空気を送り出し、350°の首振り機能で空気を循環
最後はきれいな空気を循環させる機能について。360°全方向から吸い込む空気清浄部本体と、毎秒290Lの空気を送り出すAir Multiplier テクノロジーに加えて、350°の首振り機能が部屋中の空気を強力に循環させます。従来、首振り機能は70°しかありませんでしたが、新製品では45/90/180/350°の4段階に調節できるようになりました。
さらに、従来は正面方向にしか送風できませんでしたが、「冬が寒い」というユーザーの声を受け、新たにディフューズモードを搭載しています。これは、本体側面に設けたスリットから後方45°に向けて吹き出すもので、開口部を広くしてワイドな風を送り出すことにより寒さを低減し、さらに風の音も小さくなりました。
アプリ対応もスマートスピーカー対応は「様子見」状態
スマートフォン用の「Dyson Link アプリ」も新しくなりました。オン/オフ、首振り角度の調節、風量の調節、予約/スケジュールなどのリモコン機能のほか、本体のセンサーで捉えた自室の空気の状態をいつでもどこでもモニターでき、空気清浄機能の効果も確認できます。
なお、本機はWi-Fi機能を搭載していますが、今回はスマートスピーカーとの連携機能には非対応です。ドーソン氏はその理由について次のように説明しました。
「当社としても対応を検討はしています。スマートスピーカーは複数の規格があるので、どれがユーザーにとって最適なのかを見ているところ。スマートインテリジェンス製品において最も重要なのはシンプルなこと。ユーザーがITに詳しくなくても簡単に設定、操作ができるものを選びたいです」
Dyson Pure Coolは「これまでにない新しいカテゴリだ」
また、ダイソンではDyson Pure Coolを、空気清浄機とも扇風機とも呼ばず「空気清浄ファン」と呼んでいます。「われわれは新しいカテゴリを誕生させようとしています。Dyson Pure Coolは空気清浄と空気を循環させるファンの機能を持った、これまでにない製品だと考えているからです。売り場でも、古いカテゴリに入れるのではなく、新しい売り場を作っていきたい」とドーソン氏は意欲を見せました。
また今回は“cool”の発表でしたが、ダイソンでは温風機能付きモデル“hot&cool”もラインナップしています。その後継機の開発については、「これから先、また『エキサイティングな新製品を用意している』とだけ答えておきます」と、ドーソン氏は不敵な笑みを浮かべました。温風で肌に当たって乾燥することを嫌がる人も多いので、ぜひディフューザーモードを搭載した“hot&cool”も期待したいところ。あるいは、よりエキサイティングな新機能を持つ新モデルが出る可能性も……。今後もダイソンの空気清浄ファンから目が離せません。