筆者はコーヒー好きであります。1日5~6杯のコーヒーを飲むため、いちいちレギュラーコーヒーを淹れるのが面倒。でも、保温で煮詰まってしまったコーヒーは嫌いなこともあって、オフィスではインスタントコーヒーばかり。休日は家でハンドドリップを楽しむこともあるのですが、できれば仕事中も気軽に挽きたて淹れたてを楽しみたい……。そんな筆者に「ツインバード工業が、すごくこだわった全自動コーヒーメーカーを出すらしい」と耳よりな情報が。これは行くしかありません!
「コーヒー界のレジェンド」が監修した全自動コーヒーメーカー
今回、ツインバード工業が発表したのが「全自動コーヒーメーカー CM-D457B」(実売価格4万3070円)。“コーヒー界のレジェンド”と言われているカフェ・バッハの店主、田口 護(たぐち・まもる)氏が監修した、豆から挽ける本格的なコーヒーメーカーです。
まずは本機開発の背景ですが、同社によると、日本国内コーヒー消費量は右肩上がりで伸びてるとのこと。カフェブームやコンビニコーヒーの登場など、いつでもどこでもおいしいコーヒーが飲める環境が整ってきているからです。とはいえ、実は家庭で飲む量が圧倒的に多く、その傾向はこの10年間変化していません。
一方、タイプ別で見ると缶コーヒーの消費量は減少し、代わってレギュラーコーヒーが増加しています。挽きたて淹れたてのコーヒーに対するニーズが増加しており、それに呼応して全自動コーヒーメーカーの市場も年々拡大しているのです。
「おいしいコーヒーとは何か?」ゼロから開発がスタート
こうした背景から、同社では、「世界一おいしいコーヒーを自宅で楽しんでもらおう。われわれが持つテクノロジーと燕三条の品質ならコーヒーメーカーにイノベーションを起こすことも可能なはずだ」(ツインバード工業プロダクトディレクション部の岡田 剛氏)と考え、開発を始めました。しかし、早々に壁にぶち当たったといいます。
「技術はあっても、コーヒーの味づくりに関してはド素人。何をもっておいしいコーヒーとするのか、何が正しいのか、さっぱりわからない。そんな状況が長く続きました」(岡田氏)
出口のない迷路をさまよい続けるなか、岡田氏は一縷の望みにかけて地元の本屋に飛び込みました。単に、コーヒーをイチから勉強すべく、関連書籍を探そうと考えてのことでしたが、そこで、本棚に並ぶ田口 護氏(先述)の著書の数々を目にします。以降、開発陣は「珈琲大全」をバイブルとして読み込んで豆の挽き方や淹れ方を学び、さらにそれでは飽き足らず、岡田氏たちは直接カフェ・バッハに乗り込んだそうです。
ダメ元で訪れた「コーヒー界のレジェンド」は意外にも快諾
「田口先生に監修をお願いに行った時はダメでもともとのつもりでした。コーヒーはカフェで飲むもの、気持ちを込めてハンドドリップで淹れるものと、真っ向から否定されるのでは、と戦々恐々でしたが、先生の返事は真逆でした。先生は、自分たちが丹精込めて作ったコーヒー豆を家庭で楽しんでもらえることが一番大事。豆を買ってくれるお客様を大切にしたい、と協力を快諾してくれたのです」(岡田氏)
当の田口氏はどう思ったのでしょうか。
「とうとう来たか、という心境でした。市販のコーヒーメーカーは一つの淹れ方しかできず、家庭ごとに味をカスタマイズできない。その大きな弱点に私達はあぐらをかいて商売してきた。逆に言えば、それが私達の仕事の誇りでした。私達にとって、家庭でおいしいコーヒーが作れるマシンはイヤな存在だけど、一方で、それが実現するとテイクアウトの豆が売れる。家でおいしいコーヒーが飲めれば、またお店に帰ってくるだろう」
それが協力に踏み切った理由だそうです。
「イヤなのができたなあ」がひと口めの感想だった
「とはいえ、最初は期待していなかった。というのも、これまでコーヒーメーカーは何百種類と登場したけど、コーヒーショップの味を再現できたものはほとんどないから。これはもう私が生きているうちは実現不可能ではないか」と思っていた田口氏。しかし、ツインバードの完成品をひとくちテイスティングしたところ、「イヤなのができたなあ(笑)」というのが正直な感想だったそうです。
「でもその一方で、ここまで来たかと心からうれしくも思っています。味がとてもまろやかでおいしく、最高の一杯が家庭で提供できるるようになった。これで、ホームコーヒーの販売量が飛躍的に拡大するのではと期待しています」
レジェンドにここまで言わしめた「全自動コーヒーメーカー CM-D457B」とは、どんな製品なのでしょうか。もうこの時点で、すでに期待度はMAXです。
独自設計の着脱式低速臼式ミルを開発し、挽きムラを抑える
まず、田口氏の教え「おいしいコーヒーの基本は、粒度をそろえることと湯温83℃」を忠実に再現しているとのこと。粒度(りゅうど)とは、豆を挽いた粉の粒の大きさ。細かいものは苦味とコクがあり、粗いものは酸味がありすっきりした飲み心地といわれています。この粒度によって味が変わってしまうため、挽きムラをなくすことが肝要なのです。ツインバードでは今回、地元、燕三条製のステンレス刃を採用した独自設計の着脱式低速臼式ミルを開発し、この課題をクリアしました。
湯の温度帯と蒸らし時間が選択できる
湯温は83℃と、ちょっと高めの90℃の2つの温度帯に設定できます。豆の煎り具合、鮮度などによってユーザーが自分で温度を変え、味や香りの変化を楽しむことができるのです。
すべての豆を挽き終わったらミルは自動的に停止し、抽出モードに切り替わります。ここに1つのこだわりポイントがあります。それは、蒸らし時間を変えられるということ。挽いた粉を最初に蒸らすのは大切な行程で、この蒸らし時間によって味が変わってしまうため。また、飲む杯数によってコーヒー粉の量が変わるのだから、当然、蒸らし時間も変えなければなりません。一般的なコーヒーメーカーには蒸らし時間を調節する機能はありませんが、CM-D457Bは、最初に蒸らし用のシャワードリップが出てから30秒ほど蒸らし、さらに、1~3杯の分量によって蒸らし時間を調節できるダイヤルを搭載しています。
ドリップが目視できるよう約2cmの隙間を設けた
次にドリップです。シャワーは6方向から噴出されますが、ハンドドリップのように断続的に噴出し、さらにはフィルター内側の粉の壁を壊さないように内向きにシャワーします。ここでも杯数によってシャワー円の大きさを調節します。これにより、余分な雑味や苦味が抽出されないのです。
ここにはさらに2つのこだわりが。1つは、一般的なコーヒーメーカーはドリッパーがケースに覆われているため、抽出の様子を外部から目視することができません。CM-D457Bは、シャワー噴出口とドリッパーとの間に約2cmの隙間があります。これにより、ドリップするシーンを見て楽しめ、さらに、立ちこめるコーヒーアロマを直接かぐことができるのです。この隙間は「コーヒーを淹れるところを五感で楽しめるように、あえて作った」(岡田氏)とのこと。コーヒーを完全に抽出し終えると、自動的に保温モードに切り替わります。
ハンドドリップを再現するため、楕円形のドリッパーを採用
もう1つは、ドリッパーの形状。上から見ると楕円の形をしているのですが、これは「ハンドドリップする時に、人間の腕は真円ではなく楕円の動きをする」(岡田氏)からだそうです。全自動だけではなく、ハンドドリップが楽しめるモードも搭載しているのですが、その際に、より均一にお湯を注げるようにとの配慮です。うーむ、これはすごい。
なお、ドリッパーには除電レバーが搭載されており、これはミルで豆を挽くと豆同士の摩擦で静電気が置き、粉が周囲に散らばってしまうことを防ぐため。マシンの外観だけでなく、使う時に周囲を汚さないことで美しさを保つ。これもデザインのこだわりです。
試飲ではマシンの繊細な抽出を実感
さて、ひと通りの説明が終わったところでお楽しみの試飲タイムです。説明会場にはカフェ・バッハによる中深煎りの「バッハブレンド」を細挽きで、浅中煎りの「パナマ・ドンパチ」を中挽きで、それぞれその場で豆から挽いて抽出したものが振る舞われました。
ともに雑味がなく、まろやかな苦味。透き通るような漆黒と、強い芳香。五感をフルに働かせて、コーヒーを感じる体験がそこにありました。豆がいいだけじゃないか? と思う方もいるかもしれませんが、本機にはそれ以上のものを感じます。煎りの違い、挽きの違い、何より豆の違いが舌の上ではっきりと味わえる。それだけ、このマシンが繊細な抽出をしているということですね。
全自動コーヒーメーカーはこれまでも多くの家電メーカーが発売していますが、ハンドドリップに比べるとどうしても味が薄くなりがち。一方で、家庭でハンドドリップをやろうとすると、抽出のスピードが一定にできないなど、プロの技術を再現できません。その結果、雑味や苦味が前に出て満足のいく一杯を作れないわけですが、CM-D457Bはこうした不満、悩みを手軽に解消してくれそうな1台です。コーヒー党には、間違いなくオススメですよ!
協力:楽天市場