許容量を超えると発症するとする説「コップ理論」に根拠はない
――花粉の話に戻ります。花粉症について、意外な事実などがあれば教えていただきたいのですが。
大谷 よく話題になる「コップ理論」や「バケツ理論」と呼ばれている説はご存じですか? アレルギーのない人でも花粉などのアレルゲンを浴び続けていると、コップやバケツの水があふれるように身体の許容量を超えてアレルギー症状が出てくる、という説です。あれ、実は根拠がないんですよ。私もテレビ局に言われて根拠を探したんですが、まったく出てこなかった。それに、花粉症の根本治療が「舌下(ぜっか)免疫療法」であるという事実にも矛盾しています。舌下免疫療法は、スギ花粉の成分を精製したエキスを毎日なめていく治療法。これで身体をアレルゲンに慣らしていくんですが、これですごくラクになります。ただ、この治療法が有効だとすると、「コップ理論」や「バケツ理論」は成り立ちませんよね。
――たしかに。バケツもコップも漏れる一方で、症状が悪化するはずですよね。
大谷 また、花粉の量と花粉症の症状が一致しないということもポイントです。たとえば、予報ではすごく花粉が飛んでいるはずなのに、体調がラクだということもある。年によってラクな年、ラクじゃない年もある。これは花粉の量と免疫、つまり抵抗力とのバランスじゃないと説明がつかないんです。実際は、コップよりもシーソーをイメージしたほうが正しい。花粉の飛散量やストレスが増して、身体の抵抗力を上回るとシーソーが大きく傾き、シーソーの下の風船が爆発して花粉症を発症する、というイメージです。反対に、免疫バランスさえ保たれていれば、適切にシーソーが保たれていて症状が軽くなるんですね。
――なるほど。では、個人の免疫の状況しだいで、症状は大きく変わるわけですね。
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「花粉症にいい食べ物」は、和歌山県の幻の果実「じゃばら」
――ちなみに、薬以外で症状を軽くする方法はありますか? たとえば、花粉症にいい食べ物などご存じないでしょうか。
大谷 ひとつ言われているのは、トマトジュース。食品メーカーと病院が組んで、共同研究をアレルギー学会で発表していました。あとはベタですけど、乳酸菌ですね。ヨーグルトは「免疫バランスを調整する」との日本の論文がありました。花粉症は免疫バランスが大きく影響するので、それが調整できるなら有効です。もうひとつ、「じゃばら」ってご存じですか? これはゆずに似た柑橘類で、和歌山県の北山村という村の特産品。生産量が少なくて「幻の果実」のようなものなんです。
このじゃばらのパウダーを、テレビ番組で4人の方が2週間摂取するという実験をしたら、みなさん症状が改善しました。その後、10人程度で基礎データを取ったのですが、そこでもいい結果が出ていました。妊婦や車の運転などで薬を飲めない方のためにも、臨床試験でさらに有効性を検証する予定です。食べ物以外でいえば、花粉や他のアレルゲンを取り込まないよう工夫すること。服はレザーやポリエステルなどの花粉が付着しにくいものを着て、家に入る前に全身を叩いたり、粘着テープで取り除いたり、いい空気清浄機を使うことですよ。
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空気清浄機を選ぶポイントは「高性能フィルター」と「大風量」
――やはり花粉症対策に空気清浄機は欠かせないと。ちなみに、大谷先生自身は空気清浄機を何台使っておられるんですか?
大谷 病院に3台、自宅に5台。自宅はリビング・寝室・書斎の全部屋に置いています。私の家は玄関を入ったらすぐにリビングなのでリビングに1台で済んでいますが、一般的な住宅ならば玄関にも1台あったほうが良いと思います。最も人の出入りが多く、かつ外の空気の侵入が多い場所なので、高性能なモデルが欲しいところですね。
――大谷先生が考える、空気清浄機を選ぶ基準は何でしょうか。
大谷 花粉はもちろん、カビの粒子やハウスダストも捕れる高性能なフィルターは必須。具体的には、1μm以下の粒子を捕らえられる性能がほしいところです。帰ってきてすぐ家でリラックスしたいなら、捕集するスピードも重要。部屋に侵入した花粉を素早く吸引してくれる、大風量のモデルが良いでしょうね。
――花粉症の基本から具体的な対策まで教えていただき、今回は勉強になりました。ありがとうございました!
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