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2020/1/17 16:00

1週間で先行品が完売したコカ・コーラ初の家電「&Drip」。世界初を盛り込んだ発明誕生の舞台裏

昨秋「スゴく「コカ・コーラ」らしい!ベンチャー魂で新開発したコーヒーマシンは発明品レベルの名作だ」で紹介した「&Drip」(アンドドリップ)。本機はクラウドファンディング「Makuake」発のプロジェクトでしたが、先行の400台が1週間で完売と好調なスタートとなり、12月6日に一般発売となりました。

 

↑「&Drip」。赤と白があり、本体価格は税込1万5180円。カプセルは1箱12個入で税込799円(一杯あたり税込67円)より

 

一般発売から約10日後(取材時)の状況を聞くと、クラウドファンディング時のペースを超える売れ行き記録しているとのこと。そこで今回は開発担当者へのインタビューとともに、好調の裏に隠されたポイントを明らかにしていきます。

 

 

消費者の声から生まれた「喫茶店のマスターの味」を実現

うかがったのは、日本コカ・コーラの藤井亨子さん。「&Drip」は取材日時点で、楽天市場の「コーヒーメーカー・エスプレッソマシン」カテゴリー内、ウィークリーランキングの売り上げ1位。21件のレビューで評価は4.52という好調ぶりです。こちらについて、感想を聞いてみました。

 

↑藤井亨子さん。新規事業開発本部 プロジェクト リードシニアマネジャーとして、「&Drip」の開発を担当しています

 

「うれしいです! コカ・コーラが家庭向けの電化製品を発売することは、おそらく世界的に見ても初めての試み。前例がないため、販売先も、蔦屋家電様、楽天市場、Amazonのみとなっていますが、おかげさまで私たちが期待している以上のご好評をいただいています」(藤井さん)

 

支持を得ている理由は、ほかにない特徴にあります。国内のカプセル式コーヒーマシンの多くがエスプレッソを得意としているところ、「&Drip」が得意とするのはハンドドリップのおいしさであること。機器の手入れに関する手間を極力なくした、利便性の高さ。シンプルなデザインとコンパクトなサイズで、インテリアになじみやすい存在感など。

 

↑手入れに関して画期的なのは給水面。タンクが取り外せて洗浄が簡単。また同社ならではなのが「い・ろ・は・す」の555mlボトルを直接セットできる点で、衛生的にもメリットが高いのです

 

「着想は、消費者のみなさんが家庭用のコーヒーに抱いている要望でした。喫茶店やコンビニなどでは簡単においしいドリップコーヒーが飲める一方、家でそれを実現しようとすると手間がかかってしまうといったものですね。インスタントコーヒーは簡単であるものの、できれば同じぐらい簡単に本格的なコーヒーを飲みたいと。そこで、喫茶店のマスターがハンドドリップで淹れるコーヒーのおいしさを、ワンタッチで気軽に実現できるマシンを目指しました」(藤井さん)

 

↑ブラックコーヒーの抽出は約60秒、カフェラテは合計約90秒でOKとスピーディ。抽出部の洗浄を、ワンボタンでできる手軽さもポイントです

 

以前の部署で、家庭で飲むコーヒーの消費者調査を担当していた藤井さん。その実績から、2017年の6月に当プロジェクトへジョイン。現在は3人のメンバーを中心に、社内の各エキスパートの協力を得ながら開発を進めているそうです。では、マスターによるハンドドリップコーヒーのおいしさは、どのように再現しているのでしょうか。

 

「高品質な豆の鮮度を保てるよう、酸化から守る特殊なバリア素材をカプセルに採用しました。さらに内部側⾯に溝を⼊れることで、カプセル全体にお湯がいきわたり、マスターが円を描きながら均⼀に注ぐハンドドリップを再現しています。そのうえで抽出温度・湯量・ドリップ時間のバランスが最適になるようテストを繰り返し、コーヒー⾖の⾹りやうまみを余すところなく抽出できるようにしています」(藤井さん)

 

↑カプセル上面のフタを特別に開封したところ。なかにはコーヒー豆、フィルター、ドリッパーと、コーヒーを抽出するために必要な要素がすべて詰まっています

 

目指した味わいは、“どまんなか”のコーヒー。老舗喫茶店から気鋭のコーヒースタンドまで、数多くの有名店を巡りながら味の方向性を吟味しつつ、自社の知見や消費者調査から得た情報も元に決定したとか。

 

「味わいに関しては、これで完成ではありません。というのも、発売後の感想のなかには『ちょうどいい』という方もいらっしゃれば、『濃い』『薄い』という声も少なからずあったんですね。現在、アイスコーヒーなど新しいフレーバーの販売を予定していますが、今後もお客様の声に耳を傾けながら、それぞれの方の“どまんなか”のおいしさに応える商品作りをしていきたいと思っています」(藤井さん)

 

 

 

世界のどこにもない機能を2つも採用している

「&Drip」は、世界的デザイナーの佐藤オオキさん率いるnendoが監修しているのも特徴。個人的にはスピーカーのようなルックスだと思うのですが、これはイメージされたものなのでしょうか。

 

「スピーカーありきではないですね。キッチンではなく、リビングになじむ美しいデザインを求めたら、この形になりました。フォルムは主張しすぎないよう、インテリアに馴染むシンプルなキューブ型に。キッチン以外に置くことを考え、正面の丸い取り出し口は、ドリップ時にコーヒーが周囲に飛び散らないよう工夫しているのもポイントです。色は社内で検討を繰り返し、この2色に決定しました」(藤井さん)

 

↑フラットで、すっきりしたデザインは裏側も同様。「い・ろ・は・す」を装着した場合もボトルを隠せるようになっています

 

「い・ろ・は・す」を使えるというのはコカ・コーラならではでしょう。この着想ははじめからあったのでしょうか。また、そのほかに苦労した部分は?

 

「nendoさんには2018年に『い・ろ・は・す』のグラスボトル入り炭酸水をデザインしていただき、想い入れを持っていただいていたんです。それでnendoさんからこのアイデアをいただきまして、もちろん即採用となりました(笑)。特に苦労したのは使わない時はボタンが隠れるタッチパネルと、ギター音を流す機能です。同様の機能をもったコーヒーマシンは世界のどこにもない、と技術者側から言われまして」(藤井さん)

 

↑操作は内蔵のタッチパネルで。ボタンは左から、カフェラテ用のミルク、カフェラテ用の濃いコーヒー、レギュラーコーヒー、アイス用コーヒー、洗浄、電源となります。また、コーヒーのでき上がり時などの音はエレキギターをシミュレートした音像になっています

 

未知なる最先端の機能が詰まったプロダクトを追い求め、行き着いたのはカプセル式コーヒーマシンの先進国であるドイツとスイス。同カテゴリーにおける世界最高峰の技術者と協業することで実現しました。

 

「カプセル式コーヒーの普及は、欧米の方が日本よりも進んでいます。私は2011年に3か月ほどアメリカに住んでいたことがあるのですが、そのときにも強く実感しました。また、ヨーロッパの普及率はそれ以上とも言われていますし、カプセルでもマシンでも、圧倒的にメーカーの数が多いんです。ただ、日本でもこれからカプセル式を利用する方が増えると思っていますし、当社としてはチャンスでもあります。そういった背景も『&Drip』誕生の理由ですね」(藤井さん)

 

画期的なコーヒーマシンではあるものの、コカ・コーラとして家電に取り組みのは初めてのことだらけ。そこでクラウドファンディングを活用し、コアユーザーであるアーリーアダプター(新しい商品やサービスの流行に敏感で、自ら情報収集を行い判断する層)の意見を聞く販売手法を試みたそう。

 

「なかでも、新製品に対するクラウドファンディングの実績が多いMakuakeさんを利用させていただきました。目標の400台を1週間で完売できて、非常によかったです。今後は新カプセルの発売も控えていますし、自社でもさらにディスカッションを重ねて開発を進めていきたいと思います」(藤井さん)

 

↑公式サイトより。2月にはダージリンティー、3月にはアイスコーヒー用カプセルの販売を予定

 

2月発売予定のダージリンティーは、ティーバッグではない喫茶店のポットティーのおいしさを、家庭で実現できることを目指した商品。このように、コーヒー以外を楽しめるのも「&Drip」の魅力ですが、今後のカプセル展開はどのように考えているのでしょうか。

 

「当社にはコーヒー以外に紅茶や緑茶など、様々な飲料の知見がありますが、『&Drip』で商品化するかどうかはお客様の声次第だと考えています。今後もお客様の欲しいカプセルを展開することで、ご家庭で愛される存在になっていきたいですね」(藤井さん)

 

 

現在、店舗として実物を置いているのは蔦屋家電のみですが、サイズ、質感、音、味などを試してみたい人は、ぜひ二子玉川へ足を運んでみましょう!

 

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