提供:パナソニック株式会社
LEDが普及し始めてから約20年。蛍光灯からLEDへの置換も進んだいま、照明に求められる役割は、明るさ、省エネといった機能価値だけではなくなってきています。
次世代の照明に求められるものは何か……? その課題に挑戦し続けているのが、電設資材大手のパナソニック エレクトリックワークス社(以下、EW社)です。同社はこれまでも、従来にない演出を可能にした球場照明や、照明を通してオフィスの快適さをアップさせる空間づくりなど、様々な挑戦を行ってきました。
そして、2024年11月からの新たなチャレンジとして、新無線照明制御システム「LiBecoM(以下、リベコム)」を発表しました。
リベコムは最大250台までの無線個別制御に対応した照明器具に、ビーコンを埋め込むことでユーザーの位置情報取得機能を付与。省エネの実現はもちろん、“メリハリ”のある照明で空間価値を向上させ、商業施設のマーケティングやオフィスの生産性アップなどにも貢献する、次世代の製品です。
EW社が目指す照明の未来像と、リベコムにかける想いについて、同社ライティング事業部の大塚勇治さん、田上直紀さんにお話をうかがいました。
次世代の照明に求められる「心の豊かさ」の実現
EW社ライティング事業部の事業コンセプトは「光は、心を動かす」。このコンセプトには、同社が目指す、次世代の照明の姿が詰まっています。これまでの照明が、省エネや寿命といった機能面だけが重視されていたのに対して、“人の心”にアプローチしていこうというのがEW社の考えです。
「ライティング事業部では、エコに加え、『心の豊かさ』を実現する製品開発を行なっています。たとえば球場などのスタジアムのLED照明は、高い省エネ効果を発揮するだけでなく、従来では不可能だった演出を可能にし、観客に新たな感動を届けています。
オフィスの照明でも、必要なところに適切な明るさを届ける『メリハリ照明』により、従業員の集中力を引き出したり、空間の魅力を高めたりすることができます。労働人口が減っていくなかで、従業員の働きやすさや生産性を向上させるためにも、オフィスの空間価値を高める意義は大きくなっています」(大塚さん)
次世代の照明に求められる「心の豊かさ」という新たな価値。11月から発売されるリベコムも、その価値を実現すべく開発された製品です。
無線通信で多数の照明をカスタマイズできる
リベコムは、1システムあたり、最大250台の照明器具を無線通信で個別制御できるシステムです。対応する照明器具のバリエーションは4000品番にもおよび、多彩なニーズに対応します。
「リベコムを導入すると、多数の照明器具を専用アプリから個別に調光・調色できるようになります。アプリからの直接操作だけでなく、スケジューリングをして、時間帯によって自動で照明を切り替える設定もできます。また、屋外からの外光や、空間の人の数を検知し、それによって照明の明暗を自動制御することも可能です」(大塚さん)
つまり、リベコムを導入した施設では、照明のカスタマイズの幅がグッと広がるということ。窓からの明かりが入る時間帯は暗めに、夜は明るめに。あるいは、人のいるところをピンポイントで照らす……といった状況に合わせた照らし方が可能になり、空間の快適性を高めながら省エネも実現できるというわけです。
省エネ状況を「見える化」し、施工の省力化にも貢献
従来にも、無線制御に対応した照明器具は存在しました。しかしリベコムは、それらにはなかった機能を備えています。省エネ状況の可視化と、設定・施工の省力化です。
「リベコムの操作画面では、照明のカスタマイズによって、全灯時と比べてどの程度の省エネができるのか、パーセンテージで表示。照明を操作しながら状況をシミュレーションできるので、電気代を効率的に節約できます。そのため、弊社のメリハリ照明とも相性の良いシステムになっています。また、従来の無線制御照明は、通信のための親機と子機を照明とは別に設置する必要がありましたが、リベコムは照明器具同士が通信できるのでそれらが不要になり、短時間で施工ができるようになったのもメリットです」(大塚さん)
照明器具が取得した位置情報で魅力的な店づくりやヒト・モノの管理をサポート
リベコムのもうひとつの特徴が、個々の照明器具に人やモノの位置情報を測位できるビーコンが内蔵されていること。田上さんによると、位置情報を測るビーコンを搭載する機器として、照明器具は適した存在だそうです。通常、机の上などに設置されるビーコンですが、周囲の障害物によって、通信が邪魔されてしまうことも。しかし、天井からであれば、その心配が少ないというわけです。
「照明器具は天井全体にムラなく設置されているため、これにビーコンを設置すると安定した通信ができるので、正確な測位が可能。屋内の位置情報測位サービスは年20%程度の規模で持続成長していますが、リベコムが屋内位置情報サービスのインフラの地位を獲得できればと考えています」(田上さん)
では、ヒトやモノの位置情報を取得することで、いったい何が実現できるのでしょうか?
「たとえばスーパーなどの店舗では、来店客の人流を測定・分析することで、効果的な売場づくりをサポートします。ECで顧客のデータをトラッキングするのと同じようなことが、実店舗でも可能になるのです。来店客に対しても、店舗に入った瞬間に自動でクーポンを表示する、来店ポイントを付与するといった、新たな価値を提供できます」(田上さん)
EW社はリベコムの導入先として、店舗のほかにも、オフィス、工場、病院といった施設を想定しています。たとえばオフィスでは、フリーアドレスオフィスで最も多い困りごとである「誰がどこにいるのかわからない」という問題を位置情報によって解決。どのあたりの席が多く利用されているのか、運用状況を可視化できるので、より効率的なオフィス管理を可能にします。
一方で、位置情報の取得による個人のプライバシー保護については気になるところ。
「本人の許諾なしに位置情報を取得することはありません。また、プライバシーへの配慮という面では、オフィスで使われる場合、トイレなど特定のエリアでは位置情報を取得できないようにするなど、ユーザーが安心して使えるよう配慮しています」(田上さん)
このほか、工場ではフォークリフトの位置情報を測定することで、その稼働率を把握することが可能。フォークリフトはリース契約であることが多いため、稼働状況に応じてその数を増減し、経費を節減できるというわけです。また膨大な数の医療機器を抱え、これらを移動させることも多い病院では、位置情報を取得することで管理にかかる工数を削減することができます。
「心を動かす光」をより多くの人に届ける
このように、リベコムは個別制御による調光・調色で空間の魅力を高めながら、ヒト・モノの位置情報の取得によって新たな分析ツールを提供。魅力的な店づくりや労働環境の改善に貢献するなど、従来にない価値を創造します。本製品はEW社のコンセプトである「光は、心を動かす」を、体現した製品のひとつといえるでしょう。
そのコンセプトの策定メンバーの1人である大塚さんは、「照明によって、喜びや落ち着きといった感情がもたらされることを、より多くの人に知って欲しい」と語ります。店舗やオフィス、病院といった、たくさんの人が利用する施設への導入が見込まれるリベコムは、そんな大塚さんの願いを叶えるものになりそうです。
リベコムを詳しく知りたい方はこちら
取材・文/畑野壮太