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2019/7/26 17:00

「スナックって何?」と聞かれてどう答える? 大学教授に聞く「夜の社交場」スナックの成り立ちの噺

 

スナックはカウンター越しに接客しなければならない

小林 では、いよいよスナックの基本についてうかがっていきます。そもそも、スナックって何なんでしょうか? その定義から教えてください!

 

谷口 実は、明確な定義はないんです。私が「スナックって何?」という質問に答えるときは、「ママがいてカウンター越しに接客する店」だと言っています。従業員とお客さんとの位置関係はひとつのポイントですね。もしお店にソファなどがあっても隣には付きません。

小林 ああ、いわれてみれば!  そこがキャバクラやクラブとの違いですか?

 

谷口 そうですね。大きな違いとして、キャバクラやクラブは風俗営業の許可を取っているお店。風俗営業の許可があるお店は、客の隣に座る「接待行為」ができる。一方、スナックは風俗営業の許可がない「深夜酒類提供飲食店」なので、客の隣に座ってはいけないんです。法規制以外で見れば、キャバクラなどは基本的に時間料金制で、女性の指名制がありますよね。でもスナックの場合、都心部などの店舗賃料が高いケースを除いては、おおむね時間制ではありません。またスナックには指名制もありませんね。

 

スナックは形式上、軽食(snack)を出すバーから発展した

小林 そういえば、ガールズバーもスナックと同様、カウンター越しの接客ですよね。スナックとはどう違うんでしょう?

谷口 ガールズバーはスナックと同じく、風俗営業ではない「深夜酒類提供飲食店」です。基本的に指名制もないですが、時間制のチャージを払い、カウンター越しに接客する女性のドリンク代も払うシステムになっていることが多い。また、ガールズバーの女性従業員はおおむね20代。若くても30代以上が取り仕切るスナックとは年齢層が違いますね。

 

小林 では、「スナック」という名称はどこから来ているのでしょうか。

 

谷口 これは文字通り、「軽食」(=snack)に由来します。スナックの前身は「スタンドバー」というお店なのですが、1964年の東京オリンピック開催を機に風向きが一変。多くの外国人が来日することもあって風俗営業への取り締まりが厳しくなり、深夜営業が難しくなったんです。深夜喫茶やスタンドバーは、深夜まで音楽をかけて踊るなど騒音が問題となっていて、不良がたまる場所として問題視されていた。こうして、「スタンドバーなどのお酒を提供する業態は営業させない」と法律が改正されたんです。そこで、営業する側も一計を案じ、「スナック」つまり、軽食を出すという「スナックバー」という形式で対抗。「飲むだけの店」ではなく、「食べる店」ならば深夜まで営業できるでしょう? というわけです。これがいまのスナックにつながっていくわけですね。

 

小林 へえ、スナックにとっては、前回の東京オリンピックが転機だったと。2020年の東京オリンピックが近づくいま聞くと、歴史を感じてちょっと感慨深いです……。

 

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