今、さまざまな企業がリモートワークを導入し、通勤自粛を促しています。でも、急に家で仕事をするように言われても、家で仕事に集中できる環境が整っていない人も多いのではないでしょうか? 10年前から自宅をオフィスにして働いている“先輩”にコツを聞いてみましょう。一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の代表理事・平田麻莉さんに、ご自宅での実践例をもとに、在宅ワーク環境を整えるためのノウハウを教えていただきました。
在宅ワーク環境の整え方———自宅環境編
そもそも休むための場所である自宅で仕事をするのは、慣れない人には気持ちの切り替えが難しいもの。通勤時間はなくなっても、朝は通常通りの時間に起きて着替えてメイクするなど、きちんと身なりを整えてから作業するといった、意識して仕事をするためだけの気持ちと環境を作ることが大事です。
普段、ふたりの子どもを育てながら、リビングルームに自身のオフィス空間を設けている平田さんに、自宅の環境の整え方を見せていただきました。
1. 「ダイニングでは仕事に集中できない……」
→ 仕事とプライベートの仕切りをつくる
在宅で仕事をする方の中には、ダイニングテーブルにパソコンを置いて仕事している人もいるのではないでしょうか。しかし、空間に余裕があるなら、仕事とプライベートの場所が分かれるよう工夫すると、より快適な作業環境を作れます。
「子どもや同居している家族がいる場合は、触ってほしくないものや書きかけの書類などをダイニングテーブルに置いておくより、仕事をする場所がしっかりある方が、ストレスなく過ごせます。我が家ではリビングの一角を本棚とデスクで仕切り、子どもたちにも仕事場だから入らないよう伝えています。リビングが見渡せるようにデスクを置くことで、家族の様子を見ながら仕事ができ、仕事と家事や育児の両立がスムーズです」(一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 代表理事・平田麻莉さん、以下同)
2. 「ダイニングチェアで身体が痛くなってきた……」
→ 腰が痛くなりにくいオフィス用チェアを導入する
在宅ワークに切り替えた方からよく聞くのは、「家で仕事をするようになったら、腰が痛くなった……」という嘆き。硬いダイニングチェアに長時間座っていたり、地べたに座ってローテーブルでPC作業をしていたりすると、どうしても腰や下半身に負担がかかってしまいます。
「椅子はどんなメーカーのものでもいいのですが、背もたれがあり、しっかり上半身を支えてくれるものがオススメです。会社にいるときと違って座りっぱなしになるので、オットマンのような台に足を乗せて下半身がむくまないようにしたり、マッサージクッションを導入したり、途中途中で屈伸や伸びなどの簡単なストレッチを入れたりして、身体が凝り固まらないよう注意してください。ノートPCで作業する方は、“スマホ首”にならないよう台に乗せて画面を目線の高さまで上げると、目や首が疲れにくいですよ」
3. 「紙の書類が多くて散らかってしまう……」
→すべてデータ化し、紙は一定量に抑える
できる限りデジタルデータ化している平田さんは、どうしても出てしまう紙の書類の置き場を、この棚だけに収めているそうです。紙を使わなくなると文房具も少なくて済むので、収納に困らなくて済みます。
「紙の書類はデジタル化し、紙の方は捨ててしまうのですが、どうしても紙で取っておかなくてはならないものだけを、この棚に入る分だけ保管しています。打ち合わせに書類を持参するときは、事前にその書類をデータで相手に送っておき、当日はノートパソコンを見ていただきながらお話を進めています。会議のあと膨大な資料を持って帰っていただく手間もないし、会議前に資料を慌てて探すこともありません」
編集部選・在宅ワークにおすすめのアイテム
ここで、@Living編集部がセレクトした、在宅ワークをはじめるときにおすすめしたいアイテムを紹介します。
1. 文具やパソコンをひとまとめにできるバッグ
LIHIT LAB.「HIMENO スタンドポーチ」
S 2700円/M 3300円/L 3950円(いずれも税別)
L字にひらいた状態で自立するポーチは、外出先で使うとき、パーテーション代わりにもなって便利。リバーシブル設計なので、ポケットを外側にするとバッグインバッグのように使うこともできます。滋賀県高島市で織り上げられた国産帆布は丈夫で、しっかりした造り。
2. 書類の持ち運びと収納の両方を兼ね備える
LIHIT LAB.「SMART FIT ALTNA ツールバッグ ライト」
2800円+税
オフィスの書類を自宅に持って帰るときにオススメしたいのが、このバッグ。ひとまとめにしておき、そのまま棚に収納しておけば、書類の紛失を防ぐこともできます。分厚いファイルもすっぽりと入り、収納したあと引き出しやすいよう取っ手もついています。
3. クリアホルダーを自立するポーチにまとめて片づけ
コクヨ「ドキュメント<Katasu>」
2800円+税
中仕切りやポケットがついていて書類の分別もしやすい自立型バック。クリアファイルで整理している書類を収納しておけば、書類探しに時間がかからず、自宅での作業もスムーズに行えます。
4. 機能優秀で見た目もかわいい文具で気分を高める
コクヨ「KOKUYO ME」
120円+税〜
消しゴムやテープのり、ノートなどの文具も気に入ったデザインのものを使って、在宅ワークのテンションを上げたいもの。機能的でありながらも、明るく楽しく仕事ができるものを取り入れてみましょう。
5. 環境や体調に合わせてデスクの高さ自在
ぼん家具「昇降式テーブル プロキオン」
1万1800円+税
自宅にデスクなどの作業環境がない方は、高さが変えられるキャスターつきのテーブルがおすすめ。正しい姿勢で作業できると効率もよく、体への負担もありません。プレゼンテーションなどの際は立ってパソコンを使うことができ、キッチンに持っていけば料理動画やレシピを閲覧しながらの調理も楽にできます。
在宅ワークに切り替えるとき、何よりもいちばんに整えたいのがPCの環境です。これがなくては仕事にならないという方が多いですよね。次のページで、インストールしておきたいアプリなども含めて、引き続き平田麻莉さんに紹介していただきます。
在宅ワークの整え方———PC環境編
在宅ワークに切り替えるとき、何よりもいちばんに整えたいのがPCの環境です。これがなくては仕事にならないという方が多いですよね。インストールしておきたいアプリなどもまとめました。
1. 「資料の閲覧や作成がしにくい……」
→PCにほかのPCやテレビを接続し、デュアルディスプレイにする
家で資料作成やリモート会議をする際、仕事の効率をよくするのも悪くするのも、パソコンの環境次第です。平田さんは普段、外出先でのメールチェックや打ち合わせ用にノートパソコンを持っていますが、自宅ではデスクトップパソコンでデュアルディスプレイに。また、はじめて在宅ワークに切り替える人は、ノートパソコンをHDMI端子でテレビに繋いで、テレビを特大のディスプレイにする方法もおすすめです。
「ノートパソコンだけだと資料が見づらくて、時間がかかってしまうんですよね。エクセルの細かい表やマップ形式の資料などは、大きな画面でチェックした方が、全体像が見えますし作成もしやすいです。デュアルディスプレイにすれば、いちいち画面を変える手間もなく、左側の画面に見るべき資料を出しておいて、右側の画面では作成、というように使い分けられます。これでかなりの時間短縮ができるんですよ」(一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 代表理事・平田麻莉さん、以下同)
2. 「リモートでもスムーズにコミュニケーションをとりたい!」
→便利なアプリを活用する
在宅ワークで必要とされるのは、リモートで会議できる環境やツール。そのため、在宅ワークに必要なアプリケーションはさまざまありますが、ビデオチャットなどコミュニケーションに必要なアプリは重要なツールです。
「リモート会議に使うアプリは主に、zoom、Hangouts Meet、Slack、Wherebyなどが人気ですね。いずれも画面上で書類の共有ができますし、グループで話すのもスムーズでストレスもありません。普段の会話はChatworkやFacebookメッセンジャー、Slackなどのチャットツールで。
他には、Adobe ScanやEvernote Scannable といった、スマホで撮影した画像をPDF化してくれるアプリがあると、スキャナーがなくても手書き書類やデータのない書類をPDFで送ることができます。ちなみに私は、名刺も書類も、いただいたらその場でスキャンしてデータ化しています。会社がある方ならともかく、フリーランスで自宅が職場になる人にとっては、書類を保管しておくスペースがたくさんはとれませんし、データ化しておいた方が持ち運びも検索もスムーズです」
在宅ワークで便利なコミュニケーションツール
・zoom https://zoom.us/jp-jp/meetings.html
・Hangouts Meet https://gsuite.google.co.jp/intl/ja/products/meet/
・Slack https://slack.com/
・Whereby https://whereby.com/
・Chatwork https://go.chatwork.com/ja/
・Adobe Scan https://acrobat.adobe.com/jp/ja/mobile/scanner-app.html
・Evernote Scannable https://evernote.com/intl/jp/products/scannable
使っているPCにカメラやマイク機能がなくてもスマホを使えばOK!
オンラインで会議をする際、平田さんはスマートフォンを利用しているそうです。「デスクトップPCには、マイクやカメラが内蔵されていないのですが、スマホを使えばリモート会議ができるので、PCを買い換える必要はありません。Bluetooth接続タイプのヘッドセットも併せて使えば、相手の音声が明瞭に聞こえますし、ちょっと飲み物を取りに行く間にも会話を続けられます。
また、スマホを使う場合は、PCの画面の上部にスマホを引っかけて使うと、自然と目線の高さにカメラがくるので、表情が暗くならずにすみます。ノートPCでリモート会議に参加している人は、顔がうつむきがちになったり、角度によってはあごを上げたように映り、偉そうな表情に見えてしまうことがあるので、PCをなにか台に乗せて目線の高さに持ってくるのもオススメ。最近は背景を変えられるツールもありますし、楽しみ方が増えています」
プラントロニクス「Voyager Legend」
1万455円(メーカー推奨税込売価)
コンパクトで高音質の会話ができるヘッドセットがあると、オンライン会議も快適に。柔らかなグリップで耳が痛くなりにくく、長時間ストレスなく使えます。
それでもやはり、1日家で仕事をしていると、気が滅入ったり気分転換が上手にできなかったりしがち。そんなときにひと息つくための方法も、平田さんに教えていただきました。
在宅ワークの整え方―――ストレス対策編
ハード面の環境が整って、スムーズに在宅ワークへの切り替えができても、その閉塞感から「一日中ひとりで仕事するのはさみしい」「外に出られなくてストレスが溜まる」という声が上がっています。在宅ワークが楽しくできるようなアイテムについても、平田さんに伺いました。
1. サブスクでお花がポストに届く
平田さんオススメのストレス緩和アイテムは、月額制で届けてくれるお花の定期便「Bloomee LIFE」。お花のボリュームや、毎週、隔週、毎月など配送のリズムもチョイスすることができます。
「毎日家にいると、何か変化がほしくなりますよね。お花の定期便は、毎回違うお花を届けてくれるので、部屋に飾るのも見ながら仕事するのも楽しくなります。お届けもポストにしてもらえるので不在時も受け取れ、気楽にはじめることができますよ」
Bloomee LIFE
ポストで受け取れるお花の定期便。500円〜1200円(送料別)と、暮らしに合わせてプランを選択できる。ポストで受け取れるので、受け取りの負担がないのがうれしいですね。
2. 香りと音楽で自分の機嫌がよくなる気分転換を
自宅作業で大切にしたいのは、合間の休憩時間や、気分転換になるアイデアをたくさん持っておくこと。朝起きてから夜眠るまでパソコンの前で仕事にかかりきりになってしまうと、疲れやストレスが慢性化してしまい、プライベートな時間を作りにくくなってしまいます。
「ちょっとお茶を入れたり、アロマスプレーをして深呼吸したり、音楽をかけたり、安らぎや癒しになるようなことは、どんどん取り入れながら仕事するといいと思います。在宅ワークでは、好きな音楽を聴きながら作業したり、お香を焚いたりと、仕事中に好きなことができるのも魅力のひとつなんです。わたしは、よく作業用BGMをYouTubeで流しながら仕事しています。また、今日は仕事は終わり、という区切りを作った方がいいでしょう。やるべきことがあって、やれる環境があると、ついだらだらと夜中まで作業してしまうので、そこは仕事とプライベートをきちんと分け、自分の時間も大切にしてください」
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3. ランチは作り置きして温めるだけ
外出していたりオフィスで仕事ができるときは、ランチタイムに外食するのもひとつの楽しみだったかもしれません。しかし、なかなか外食ができない事態になった今、できるだけ手間をかけずにおいしいものを食べることが、日々のストレス緩和にもつながるはず。
「作業が捗っているときに、わざわざ自分のためだけに昼ごはんを作るのは大変ですよね。ランチはできるだけ温めるだけで済ませて作業にすぐ戻れるよう、我が家では、家事代行サービスを使って、作り置きのものを冷凍庫にたくさん常備してもらっています。現在の状態になってからは、普段テイクアウトのなかったレストランもテイクアウトメニューを作っているので、デリバリーやテイクアウトなども上手に使って、食べる楽しみも大事にしたいですよね」
4. 誰かと話したい!そんなストレスは雑談スレで解消
ひとりぼっちで自宅で仕事していると、「今日一日誰とも話していない……」というさみしい環境にもなりがち。フリーランス歴が長い平田さんは、普段から仲間たちと雑談できるスレッドを立ち上げて、そこでさまざまな人とコミュニケーションをとっているそうです。
「フリーランス協会の事務局メンバーは全国に散らばっているので、未だかつて全員で集まったことはないんです。でも、日々チャットでやりとりをしているので気持ちの距離は近く、会ったことがなくても、何も困らずに一緒に仕事ができています。仕事だけでなく、子どものことや日々のことなどを話せるスレッドがあると、さみしさも半減しますよ。また、これまでは『飲みに行こう』と言っても同じエリアの人しか来られなかったのが、最近は“オンライン飲み会”で、場所の垣根を越えてたくさんの人と関われるようになりました。これをチャンスと考えて過ごすのもいいですよね」
こんなときだからこそ、ストレスなく日々が楽しくなるよう、前向きになることが大切。自宅にオフィスと同じような仕事環境を整えるのは難しいものですが、できるだけ快適に過ごせるよう空間を整えれば、作業効率は上がり、毎日気持ちよく仕事に向かうことができるはずです。
【プロフィール】
一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 代表理事 / 平田麻莉
慶應義塾大学総合政策学部在学中に、PR会社・ビルコムの創業期に参画。リンクアンドモチベーション、リクルートスタッフィング、インテリジェンス(現パーソル)などの広報経験を通じて、企業と個人の関係性に対する関心を深める。ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院への交換留学を経て、2011年に慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了。同大学ビジネス・スクール委員長室で広報・国際連携を担いつつ、同大学大学院政策・メディア研究科博士課程で学生と職員の二足の草鞋を履く(出産を機に退学)。現在は、フリーランスで広報や出版、ケースメソッド教材制作を行う傍ら、プロボノの社会活動として2017年1月に同団体を設立。日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2020」受賞。