年末年始は旅行へ行ったり帰省したり、日常から離れる機会が増える時期。暮らしている街とは違う景色やものに触れ、ゆっくりと自由に過ごせる旅時間は楽しいけれど、それも束の間で終わってしまうもの。そんな非日常の思い出を、空気感まで封じ込められるのが、スクラップブックです。
「制作しながら、もう一度旅行をしているような気分になれるのが楽しいんです」と話すのは、紙もの作家として活躍している永岡綾さん。
「実は、いわゆる“思い出のアルバム”のような観光名所や友人たちとの記念撮影の写真だけでなく、その隙間をつなぐ、移動や休憩などのシーンで出会った景色やものをスクラップすると、そのときの気持ちの変化まで表現できて、自分らしいスクラップブックになるんです。ただし、やみくもに写真を撮って集めるのは疲れてしまいますから、旅の間になんとなくテーマを考えておき、それを意識しながら写真を撮ったり素材を集めたりできたらベストですね。それに、ひとつの旅に、テーマはいくつもの選択肢があるもの。スクラップブックは気持ちの向くまま、いくつも作って楽しんでくださいね」
では永岡さんは、どのようなスクラップブックを作っているのでしょうか。お手本として見せてもらいました。
「写真や紙ものをぎっしり隙間なく詰め込んだスクラップブックもかわいいですが、ややハードルが高いのも事実。そこまで詰め込まなくても、スクラップブックはもっと気軽に楽しめるんです。この2冊は、写真はすべて正方形で同サイズにそろえ、ページの中央にレイアウト、とあえてシンプルな構成に。写真の周囲には、洋書の切り抜きを貼り付けたり、クロモスや古切手を添えたりする程度で、全体的に大きく余白をとりました。思い切って余白をとることで、主役である写真が引き立つんです」
続いて、私たちスクラップブッキング初心者でもすぐにマスターできる、基本的な制作方法を、順を追って教えてもらいましょう。
①まず用意するのはスクラップブック。市販されているオーソドックスなタイプでも、台紙にはクラフト紙や黒い紙が使われているので、“それっぽい”感じが作れます。超初心者なら、まずは書き込みしやすい茶色のクラフト紙タイプがおすすめ。
②スクラップする写真をざっと多めにピックアップし、あらかじめプリントしておきます。写真の一般的なサイズはL判(89×127mm)ですが、その縦横比にとらわれず自由な大きさに。さらに、それぞれ一番かわいく見えるようにカットしてもOK。
③ページに写真を並べてみて、使う写真を決めます。お気に入りの写真がたくさんあれば、あれもこれもと盛り込んでしまいがちですが、そうすると散漫な印象になってしまいます。ポイントは詰め込まないこと! 絶対に見せたい数枚を選び抜いて。
④使う写真が決まったら、旅に関わるそれ以外の素材をピックアップ。ここでは、レシートや美術館のチケット、カフェでもらった木製のフォークを入れることにしました。完成をイメージしながら、大体のレイアウトも決めていきます。ポイントは、最初から貼ってしまわないことと、意識して余白を作ること。
⑤レイアウトが決まったら、いよいよ貼っていきます。使うツールは、マスキングテープ、スティック糊、接着剤など。写真は、スティック糊で貼ったあとにマスキングテープを無造作な感じに添え、華やかさをプラス。レシートなど薄手の紙にはスティック糊を、小物には接着剤を使います。紙ものはあえてきっちり貼り付けずにクリップを使っても。
⑥最後に、余白にイラストや文字を書き込みます。でも、センスよくデザインされた文字なんて書けない……という場合は、無理せずスタンプなどの力を借りるべし。こうして細部を整えたら、完成です!
かわいいと思ったものは何でも素材になるんです
「スクラップブックの主役はやっぱり写真。失敗を気にせず、気になるものがあったらどんどん撮影しておくといいと思います。また写真とともに旅の思い出を彩るのが、旅先で出会った紙ものたちです。飛行機のチケットやカフェのレシート、ショップの紙袋など。最近、海外の美術館で増えているブローチタイプの入場チケットも、アクセントになってかわいいですね。あと、公園などで落ち葉を拾っておいたり。見ただけで、その街のことや旅のエピソードを思い出せる、そんな素材を集めておきましょう。
さらに、帰ってきてから素材として付け足したいのは、普段から集めておいたパーツです。マスキングテープやレース、ラインストーン、押し花、クロモス(花や生物のモチーフがくり抜かれた、ヨーロッパ生まれの装飾品)などをストックしておいて。ヨーロッパの蚤の市には掘り出し物がたくさんあるんですが、国内なら手芸用品を売っているお店が便利ですよ」
“スクラップブッキング”と呼ぶだけに、以上のように、ノートに切り貼りするのが当たり前。でもときにはちょっと趣向を変えて、こんな“スクラップ”を楽しんでみてはどうですか? 最後に、永岡さんにこんな3つのアイデアを教えてもらいました。
Idea 1 封筒にまとめてみる
スクラップと同様、写真を中心に関連したパーツを、トレーシングペーパーやグラシン紙製の透け感のある封筒に小分けにしてしまっておく、というアイデア。サイズやものにバリエーションをつけると、それらしく見えます。コルクボードにピンで留めて飾ったり、引き出しの書類やノートの合間にしまっておき、ふとしたときに取り出して“息抜き”にしてみたり、なんて素敵ですよね。
Idea 2 箱の中に小さな世界を作ってみる
小さな紙の箱を開けると、中にはこぢんまりと詰められた写真や小物。写真を軸にテーマを決めてコラージュすれば、引き込まれるようなミニチュアの世界を作れます。写真は、落ち葉を撮ったイメージ写真を主役に、ミニチュアの人形やカップを添え、模型製作で森として使う“ターフ”などの草素材を敷いたもの。自分で眺めて楽しむのはもちろん、友だちへギフトとして贈りたいですね。
Idea 3 アコーディオンファイルに放り込んでみる
手紙や領収証など、散らばりがちな書類を整理しながら1冊にまとめられるアコーディオンファイル(蛇腹式の状差し)。写真やポストカードなどをポンポン放り込んでいくだけと簡単ですが、開いたときの、まさにアコーディオンのような形がかわいく、中身がさりげなく覗くのがポイントです。本棚にしまってたまに取り出して眺めるだけじゃなく、開いて置いておいてもサマになりますよ。
取材・文=@Living編集部 撮影=真名子
【プロフィール】
紙もの作家 / 永岡 綾
ハンドメイドのアート製本“ブックバインディング”にイギリスで出会い、コラージュやスクラップブッキング、紙を使った雑貨づくりをはじめる。フランスなど世界各地の蚤の市を巡り、ヴィンテージの雑貨や紙ものを収集、スクラップブッキングに役立てている。『スクラップホリックの本』『マスキングテープでコラージュ』『お裁縫気分で楽しむフレンチ・コラージュ・レッスン』(すべてエディシォン・ドゥ・パリ)など著書の執筆・編集や、ワークショップの開催など精力的に活動中。12/30、BS朝日「金曜日くらい褒められたい」に出演予定。
【URL】
何気ない日常を、大切な毎日に変えるウェブメディア「@Living(アットリビング)」