GetNavi webではニューバランス関連のニュースやレビューを多々扱っていますが、今回ぜひとも取り上げたいのがゴルフシューズ。
というのも、昨年には同ブランドを象徴する一足である「1300」からインスパイアされた「MG1300JP」が登場。また、ランニングシューズではお馴染みの素材「フレッシュフォーム」を搭載しているなど、ニューバランスのライフスタイル商品やランニング商品と地続きで語れる部分がたっぷりあるからです。
コロナ禍によってゴルフの魅力が再定義され、ゴルフ熱も高まっています。ゴルフには広い場所で身体を動かしながら一緒にプレイする人とじっくりとコミュニケーションが取れるという特性を持つので、新しい生活スタイルとして単に趣味で行うスポーツ以上の価値があるアクティビティになっています。
さて、今回紹介するのは、「UG2500」から派生してダイヤル式を実現した「UGB2500 O」というモデル。本商品は、ディテールを見ていくほどにニューバランスらしさを表現した一足となっており、ゴルフプレーヤーはもちろん、これからゴルフを日々の生活に採り入れたいと思っている人には避けて通れないプロダクトなのです。
【ニューバランスゴルフ「UGB2500 O」の写真を先見せ(画像をタップすると拡大表示されます)】
「UGB2500 O」はいいとこ採り系
ニューバランスの「UG2500」は同社のゴルフシューズのフラッグシップであり、東京オリンピック女子ゴルフ競技で銀メダルを獲得し、2020-21シーズンの賞金女王にも輝いた稲見萌寧選手が愛用しているモデルでもあります。
しかし2500シリーズはプロモデルのため、これまで紐タイプしかありませんでした。この紐タイプというのがポイント。
というのも、プロゴルファーとアマチュアゴルファーはシューズの選び方が分かれます。プロゴルファーは毎週木曜日から日曜日まで試合で4日間着用し、月曜日から水曜日も練習ラウンドやプロアマ大会でコースを歩くのでフィット感を重視。足の形やコンディションによって締め方を自由に調節できる紐タイプを好む選手が多数派です。
一方で、アマチュアゴルファーは1週間に6~7日もコースを歩く人はほとんどいませんから、着脱がスムーズで紐がほどけるわずらわしさがないダイヤル式が圧倒的に好まれています。ダイヤル式というのは、シューズ側面などに搭載されたダイヤルでシューズのフィット感を調整できるもの。ゴルフショップでの販売足数も7~8割がダイヤル式になっています。
履き心地の紐タイプと、着脱のスムーズさのダイヤルタイプーーそう、プロゴルファーが好む履き心地をダイヤル式で実現したのが「UGB2500 O」というわけです。
BOAが目指すのはパフォーマンスフィットソリューション
というわけで、「UGB2500 O」の要となるダイヤル式の構造について説明。同商品にはBOAテクノロジー社のBOAフィットシステムが搭載されています。
回り道にはなるのですが、ダイヤル式を巡る変遷を知ることでより理解が深まり、「UGB2500 O」のこだわりがわかるため、少し手前から解説していきます。
そもそも、ダイヤル式ゴルフシューズが誕生したのは2006年。着脱の煩わしさから解放されるということで、多くのアマチュアゴルファーが魅力を感じ、ダイヤル式に履き替えた、という過去があります。
BOAが多くのゴルファーに受け入れられたのは脱ぎ履きのしやすさ、細かな調節のしやすさでしたが、BOAテクノロジー社が目指したのはさらにその上、各シューズメーカーがシューズに落とし込んだ性能をより引き出すためのフィットソリューションでした。
同社の研究施設内ではさまざまな運動をシミュレートした生体力学的研究を行っており、その結果、足を包み込むような形状のアッパーをBOAフィットシステムでフィット制御する構造が、左右のすばやい切り返しなど主要な動作においてパフォーマンスを向上させることを証明しました。それが「パフォームフィットラップ」と呼ばれる構造です。ニューバランスのハイパフォーマンスモデルである「UGB2500 O」もこの構造に着目し、BOAとの共同開発によって「Wing Wrap POWERED BY THE BOA FIT SYSTEM」を採用しているのです。
ちなみに筆者はパフォームフィットラップ構造が採用される以前のモデル「MG1001v2」を愛用しており、それで十分に満足しているのですが、「UGB2500 O」を履いてみたら違いがよくわかりました。従来の構造でも足をしっかりホールドしてくれるのですが、パフォームフィットラップ構造のほうが履き心地が柔らかく、動きも滑らかです。プロゴルファーが愛用するモデルはこれほどまで繊細な動きができるのかと驚きました。
ニューバランスの企業DNAである「フィット感」を、ゴルフに最適化した形で実現。日常生活ともランニングとも違うフィールドで、ニューバランスの快適さが表現されている点において「UGB2500 O」の素晴らしさが際立ちます。
BOAフィットシステム自体ももっと深堀っていきます
「UGB2500 O」の要となるBOAフィットシステムはまだまだ語りたいところがあるので、どんどん深掘りしていきます。
同機構を開発・製造するBOA Technology Inc.は、アメリカ・コロラド州デンバーに本社がある企業。パフォーマンス向上を目的としたフィットソリューションを提供するBOAフィットシステムは、スノースポーツ、サイクリング、ハイキング/トレッキング、ゴルフ、ランニング、コートスポーツ、ワークウェア、メディカルブレース、義肢装具などの製品に採用されているんですね。
そのBOAフィットシステムのダイヤルプラットフォームも、今回「IP1」から「Li2」に進化しています。「Li2」の特徴は薄くてコンパクトな形状と滑らかな操作性。締める方向だけでなく緩める方向にも微調節ができるので、素早く精密なフィットが可能になりました。
従来のダイヤル式ゴルフシューズだと「少しキツく締め過ぎたな」と感じたとき、いったん緩めてから締め直さないといけないのがやや難点でした。しかし「Li2」は緩める方向にも回すことができますから、一段階緩めるだけで好みの締まり具合に調節できます。
また、「Li2」は過去製品よりも耐衝撃性、耐摩耗性、泥や砂塵などへの防汚性能が向上しているとのこと。「IP1」搭載モデルですと乗用カートの乗り降りの際にダイヤルがぶつかり、その拍子にワイヤーが緩んでしまうことがたまにありますが、「Li2」はその点も解消されているのではないかと感じました。
「UGB2500 O」の細部をチェック!
パフォームフィットラップ構造やBOAフィットシステムなど、外側から見た特徴をこれまで取り上げてきましたが、「UGB2500 O」の最大の特徴は履き心地の良さです。これはシューズの中に足を入れればすぐに分かります。足全体がすごく柔らかく包み込まれているような感じで、ゴルフシューズでは今までに味わったことがない感触です。以前どこかで味わったことがあるような気がして記憶をさかのぼったところ、海外の高級リゾートコースを取材で訪れた際、コースに併設するホテルのベッドの中に足を滑り込ませたときと同じ感触でした。それほどのラグジュアリー感があります。
柔らかな履き心地を実現しているのはラスト(足型)に秘密があります。ニューバランスのラストには代表的な2種類があります。SL-1とSL-2です。SL-1はほっそりした形で、自然な履き心地が特徴。SL-2は全体的に幅が広く、ゆったりした履き心地が特徴です。ニューバランスの基本の形はSL-1ですが、日本人の足に合うのはSL-2だと言われています。
「UGB2500 O」はSL-2をゴルフパフォーマンス向けに日本で改良しています。本来の良さであるBALL GIRTH(親指の付け根から小指の付け根までを取り巻く長さ)周辺のゆとりはキープしつつ、踵を締めて前足部を少し上げることでフィット性を向上させています。
そしてシューズ内部の履き心地を最高の感触にするため、インソール、ミッドソール、アウトソールのすべてにおいて最新の素材とテクノロジーを投入しています。
靴紐でなく、ダイヤルを回して締める・緩める!
ゴルフシューズの一般的なイメージとして、紐タイプのほうがソフトなホールド感で、ダイヤル式はハードという印象を持っているゴルファーは多いと思います。しかし、「UGB2500 O」は紐タイプのソフトな締まり具合をダイヤル式で完全に再現しているように感じました。今回は残念ながらシューズを着用してプレーすることはできなかったのですが、この履き心地で18ホールを歩いたら疲労の感じ方が大きく変わるかもしれません。
乗用カートの普及によって、アマチュアゴルファーが18ホールをすべて歩いてプレーする機会は少なくなりました。しかし、ラクをしているせいでラウンド終盤に足の踏ん張りが効かなくなり、目標スコアにわずかに届かなかったという経験をしたことがある人は多いのではないでしょうか。「UGB2500 O」であれば歩行とスイングに抜群の安定感がありますから、最終ホールまで高いパフォーマンスを持続し、スコアアップが狙えそうです。
カラーバリエーションはWHITE/ORAGE一色のみですが、ゴルフ5限定でWHITE/GREENも販売されています。オレンジよりもグリーンが好みという人はゴルフ5で探し求めてください。
撮影/大田浩樹