文房具
万年筆
2019/7/29 10:30

万年筆のオリジナルインクを作れる伊勢丹新宿店「インクラボ」が天国そのもの

万年筆やガラスペンの人気が高まっています。同時にインクも、さまざまなブランドがカラーラインナップを拡大しており、“沼”と表現されるほどその魅力にはまり込む人が続出。

そんななかで2019年4月、伊勢丹新宿店では万年筆などの筆記具が置かれていたコーナーを一新、自分で好みの色を選んで混色し、オリジナルインクを作れる「インクラボ」をオープンしました。インク作りのほか、万年筆やガラスペンについての相談を受け付ける窓口でもあります。今回はそのインクラボで、実際にオリジナルのインク作りにチャレンジ。教えてくださるのは、伊勢丹新宿店 インクラボ担当の井上庸さんです。

 

作れる色は1万通り以上

自分だけのオリジナルインクは、用意された24色のインクを混ぜ合わせることで完成。作業はまず、カラーチャートを見ながら、どのような色を作りたいかイメージするところから始まります。

 

「ベースとなるインクを最大3色までお選びいただき、1:1、1:2、1:1:1のいずれかの割合で混ぜて色を作っていきます。まずはチャートの中の、どの色に近づけたいかを決めて、それを基に混ぜる色を揃えていくといいでしょう。1万2千通りくらいの掛け合わせができます」(伊勢丹新宿店 インクラボ担当・井上庸さん、以下同)

↑「お友だち同士で、ワークショップを体験するかのようにお越しいただくのもおすすめです」と井上さん

 

カラーチャートは、種類が多くきれいな色がたくさんあるため、なかなか決められない人も多いとか。「何色系にする、というだけでもイメージがあると試作を始めやすいので、なんとなく緑っぽい感じ、などと決めてお越しいただいてもいいと思います」

↑インクを1:1で混色した場合の色合いを一覧にしたカラーチャート。色選びに悩むのも楽しい

 

人気色はオフィスでも使いやすい寒色

初めての場合は、手紙や書類、公式な場でも万能に使える寒色系がおすすめ。「真っ黒なインクだけでは味気ないノートも、ブルーやグレーを取り混ぜた色で書くと、メモすることさえ楽しくなるかもしれません。すでにブラックやブルーなどをお持ちの方や、遊び心のある色を作ってみたい方は、より楽しい気分になる暖色系をお選びになるといいでしょう」

↑ベースとなるインクがトレーに並ぶ。チャートを頼りにしながら、必要なインクをピックアップ

 

色の方向性が決まったら、早速オリジナルのインクを作っていきましょう。

1)ベースとなるインクを好みで2~3色選ぶ


今回は2色のインクを完成させることにしました。まずひとつめは寒色系に。「人気のある『フランネルグレー』という渋いグレーに、青色を合わせてみましょう。右から『フランネルグレー』『ソニックブルー』『メープルブルー』。これを1:1:1で混ぜていきます」

 


ふたつめは、暖色系を作ってみます。「2色目は、右から『バンパイアレッド』という深みのある赤に、透明感のある『ダコタレッド』、華やかでかわいらしい感じの『バターカップ』を混ぜてみましょう」

 

2)パレットの中で1滴ずつ混ぜていく


インク瓶に装着されたスポイトでインクを取り、パレットに1滴ずつ慎重にインクを垂らしていきます。

 


「パレットに1滴ずつ落とし、3色をガラス棒で混ぜていきます。ここで多少色ムラがあっても、最終的には攪拌機で攪拌し、インクによって大きさの違う粒子も整ってなめらかに仕上がりますのでご安心ください」

 

3)ガラスペンで試し書きして色合いをチェック


「ガラスペンにインクを付けて試し書きし、色味を確認していきます。通常の紙のご用意もありますが、万年筆で書くのにちょうどいい紙『グラフィーロペーパー』にも書いてみて、書き心地の違いを感じていただいています」

 


「ガラスペンは、色が書き始めから少しずつ濃淡がつきグラデーションになっていくのも魅力的ですよね。インクの量によって色味が変わってきますので、たくさん書いてみてください。ここまでをお客さまに体験していただいています」

 

4)電動の攪拌機でしっかり混ぜてもらう


「色が決まったら、あとはこちらにお任せいただきます。磁石入りのビーカーにインクを注ぎ入れ、電動で20分ほど攪拌していきます。機械の手を借りてしっかり混ぜることで、色が均一になり、最後までお好みの色のままお使いいただけます」。この攪拌が終われば、完成です。

 

5)レシピカードがあればいつでも追加注文可能


「攪拌が終わると、専用のインクボトルに詰めてお渡しします。一緒に、使用色と割合を書いたレシピカードもお渡ししています。再び同じ色が欲しい! というときにお持ちください。また3ヶ月の“ボトルキープ”というシステムもあり、購入されたインクをお預かりすることもできます」さらにインクラボでは、万年筆を持って行けば、インクの充填や洗浄、インク詰まりの掃除もしてもらえるので安心です。

※オリジナルインクの引き渡しは、色が決定してから30分〜1時間後を予定。

 

自分だけのインクが完成したら、それを楽しむためのアイテムが欲しくなるもの。同じく伊勢丹新宿店で手に入る万年筆関連のアイテムを紹介しましょう。

 

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インクを楽しむアイテム

オリジナルのインクが出来上がると、そのインクをさらに楽しむためのアイテムが欲しくなってしまうもの。伊勢丹新宿店本館5階のステーショナリーコーナーでは、作家ものの万年筆や個性豊かなインクなど、さまざまな品物が揃っています。

 

・見た目にも美しく涼やかなガラスペン

「下の2本は、『aun』というガラス工房のもの。穂先が大きくてインクをたっぷり含み、書きやすいのが人気です。上の2本は、ガラス工房『まつぼっくり』のものです。中が空洞になっているのですが、試験管を製造するような技術で工芸作品を生んでいる工芸家の手によるものです」(伊勢丹新宿店 インクラボ担当・井上庸さん、以下同)

 

・既製品も捨てがたい!ネーミングも個性的な“世界のインク”

「藍染で有名な台湾の会社、藍濃道具屋のインクです。右は『愛玉』というネーミングで、台湾デザートの愛玉子を思わせる透き通った色合いです。他にもドイツのブランド、ペリカンなど、さまざまなブランドのインクを試していただけるよう準備しています」

 

・万年筆で書くのが気持ちいいノート

神戸のステーショナリーブランド、神戸派計画が開発した「グラフィーロペーパー」は、まさに万年筆で書くために作られた紙。「この紙でつくったメモ帳やノートを販売しています。これは製紙メーカーと万年筆の愛好家の方々が一緒に開発したそうで、ペン先の引っかかりがなく、インクのかすれやにじみなどがほとんどありません。また、インクがきれいに発色するので、オリジナルのインクをこれでぜひお試しいただきたいです」

 

美しい色のインクは数多ありますが、自分で作った自分だけの色はまた格別。スペシャルな1本の万年筆に入れてもよし、また初心者なら数千円ながら良質なカジュアル万年筆から始めてもいいでしょう。それぞれの色をそれぞれの形で楽しんでみてください。

 

【店舗情報】

伊勢丹新宿店

・所在地:東京都新宿区新宿3丁目14−1
・電話: 03-3352-1111(大代表)
・営業時間:10:00〜20:00(インクラボの受付は18時まで)
・定休日:無休

 

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