「文房具総選挙2020」の投票は4月15日に締め切られましたが、その開票作業を行う前にオンライン会議システムを使って、選考委員である文房具のプロ4人による座談会を行いました。ノミネート商品のなかでそれぞれが注目する商品について、そしていまあらためて感じる文房具の未来について。結果が出る前に自由に語ってもらった一部始終を、ここでお届けします。
座談会に参加した選考委員たち
「家庭内トラブルを解消する整理収納系も進化してほしい」―――菅 未里
文具ソムリエール/菅 未里
文房具に関するメディア出演や商品監修などで活躍し、著作も多数。「GetNavi web」では「菅未里の自腹買い文房具」を連載中。
「枕になるペンケースが収納する部門でいいのか、不明ですけど」―――きだて たく
文房具ライター/きだて たく
機能系からオモシロ雑貨系まで、どんな文房具も使い込んでレビューするライター。本サイト「GetNavi web」では新作文房具を試してレポートするレビュー記事を連載。
「付箋をどこまで拡張できるかチャレンジしていますよね」―――古川 耕
放送作家・ライター/古川 耕
「OKB(お気に入りボールペン)48総選挙」総合プロデューサー。雑誌『GetNavi』では毎月、「文房具でモテるための100の方法」を連載。
「今後は地理感覚を養っておく必要があるんじゃないかな?」―――美崎 栄一郎
ビジネス書作家/美崎 栄一郎
著作多数のビジネス書作家。アナログとデジタルを組み合わせるノート術を提案した書籍も多く人気。商品開発コンサルタント、講演家としても活動する。
では早速、座談会を始めましょう。
衛生的に使えるアイテムに今後、注目が集まる!?
きだて:今年からトレンド部門が新設されました。まずはそのひとつ、テレワーク&フリーアドレス文房具部門を見ていきましょう。
古川:僕は鼻炎がひどくて、一日中鼻をかんでいるので、「1日分のゴミ袋 貼るタイプ/置くタイプ」(カウネット)が超ありがたい。常時携帯して、仕事場でも自宅でも使っていますね。
きだて:「貼るタイプ」と「置くタイプ」のどちら派ですか?
古川:出先では「貼るタイプ」、自宅では「置くタイプ」。作業中のゴミをポイポイ入れて、1日の最後にまとめて捨てています。
美崎:ゴミ箱に溜めこんでおくよりも衛生的ですよね。
きだて:もうひとつ新設の、学生応援文房具部門はどうですか?
美崎:新型コロナウイルスの影響もあり、今後は国境の問題がクローズアップされると思うんですよ。その意味で「QuizKnock×Gakken 地図付箋」(学研ステイフル)は注目かも。
菅:いままでも、おしゃれな地図付箋はありましたが、これはさすが学習用。地図が見やすくて実用的ですよね。
美崎:これから国境が封鎖されたり、その揺り戻しもあったりするはず。地理感覚を養っておく必要があるんじゃないかな。
きだて:僕は「Yiida スキャン式電子辞書」(Yiida)にとにかく驚かされました。指を差した英単語をカメラで読み取って、瞬時に連携するスマホの画面に日本語訳を表示する。あれ、ほぼ魔法です。
古川:認識の精度はどんな感じですか?
きだて:試した限りでは、ほぼミスなしですね。本のページが歪曲していても問題ないし、フォントもたいていのものは読み取れました。
美崎:英文の読み取り機能は、日本語よりも進化していますからね。
菅:書く・消す部門は「マイティグリップ」(ゼブラ)が面白いですよ。ペンのグリップにこだわっている人って意外と多いと思うので。
きだて:シャープペンってここ数年、“芯が折れない”機能に注目が集まっていましたが、次はグリップの機能競争になる気がしますね。注目度は高いですよ。
菅:劣化してもグリップだけ取り替えられるから、衛生的ですよね。常に気持ち良く使えます。
古川:今年は筆記具全般が豊作だったと思うんですが、そのなかでひとつ挙げるとするなら「ジェットストリーム エッジ」(三菱鉛筆)かな。めちゃくちゃ細い字が、ストレスフリーで書けるのはスゴい。
菅:使っている手帳が小さいので、この細さが大活躍しています。細かいマス目でもたっぷり書き込めるんですよ!
きだて:ちょっと頑張れば、5mm方眼に20文字ぐらい詰め込めますよね。
古川:今まで使っていた方眼が急に大きくなったようにすら感じます(笑)。見た目のデザインも含めて完成度は高い。
きだて:記録する部門だと、「CUBE FIZZ ソフティツイストノート」(リヒトラブ)が超待望の製品ですよ! 手が乗り上げても痛くないツイストリングって、最強のリングノートじゃないですか。
菅:前から「手が痛くならないリングのツイストノートがほしい」っておっしゃっていましたもんね。
美崎:僕は「カキコホルダー」(キングジム)ですね。先日息子が引っ越しをしたんですが、新居の家具を選ぶときに間取り図を見ながら書き込めて便利でした。クリップボードより軽いところも気に入っています。
菅:私も愛用しています。一般的なクリアホルダーって、かばんの中で折れてしまいませんか? 大きくて仕切りのないかばんだと特に。その点これは硬いから折れないし、ちょっとしたメモを取るときにも便利なんです。
「文房具総選挙2020」結果発表を受けて、オンラインイベントを開催! 受賞メーカーや文房具好き女優・三戸なつめさんなども参加
【応募・詳細】https://getnavi.jp/stationery/498656/
ダンボールオープナーは通販需要拡大で必須アイテムに
きだて:収納する部門は、“色物文房具好き”として「ネムミ」(サンスター文具)を推さざるを得ない。枕になるペンケースというのが、収納する部門でいいのか不明ですけど。
古川:まあ、文房具のアワードに寝具部門ってないですからね(笑)。
きだて:寝心地で選べるペンケースって、新しすぎるでしょ。
菅:これの枕カバーになるポーチもぜひ作ってほしいですね。
古川:切る・貼る・綴じる部門だと、カンミ堂の「TAP TAPE」と「RING LEAF」が良かった。カンミ堂って、付箋をどこまで拡張できるかに、常にチャレンジしていますよね。
きだて:うん、ホント、毎年面白いアイデアを出してくるよね。
古川:機能とデザインのバランスにもこだわっているし、応援しているメーカーさんです。
きだて:僕のイチオシは「カイコーン」(オルファ)。ダンボールオープナーって通販需要の増大でかなりの激戦ジャンルなんだけど、これは色んなタイプの梱包に対応できる応用力があって、使い込むほど良さがわかる商品です。
菅:使いやすいんですよね〜! 薄くて収納場所も取らないですし。手ごろな価格なので、知り合いに配りながらオススメしています。
きだて:オープナーは使ったほうがいいですよね。開ける効率がグンと上がるし、ケガもしないで済みますから。
菅:最後は、分類する・印をつける部門ですね。ここは「オピニ 手帳のはんこペン」(シヤチハタ)かな。はんこの種類が多く、カスタマイズして持ち歩けるのが便利。ペンと一体型だから、筆箱に入れても迷子になりにくいし、取り出すのもラクです。
きだて:手帳に予定を書くときに、はんこをひとつ、ポンと捺せば済むのはいいよね。仕事用とか育児用とかいろいろ揃ってるし。
菅:私はサプリを飲み忘れがちなので、それを管理するのに使っています。体調も顔マークのはんこで記録できるんです。
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テレワーク化が進むと文房具のデザインも変わる
古川:最後に総括というか、今後の文房具シーンについて話しておきましょうか。
きだて:うーん、どうしてもコロナ関連の話題になっちゃうんだけど……、昨年末に「今年はテレワークに役立つ文房具が流行るよ」って予想していたんです。オリンピック需要で。ところがコロナの騒動で、流行るどころかいますぐ必要なツールになっちゃった。今後もしばらくは、テレワーク用文房具は注目されるよね。
菅:在宅勤務の人が増えると、家庭にまつわるストレスも増えると思うんです。「アレどこにある?」って聞かれて、いちいち聞かないでよってイライラしたり(笑)。なので、そういうトラブルを解消する整理収納アイテムも進化してほしいなと思っています。
美崎:オフィスだと人の目を気にして自分の好きな文房具が使えなかったのが、自宅だと周りの目を気にせず使える。そうなると、かわいい系の文房具類の人気が高まる気がします。家の中ぐらい自分が楽しければいいやってなるから。
菅:自分のテンションを上げるもの、ですね。
美崎:そう、機能性だけではなく、デザイン性がより求められるようになるんじゃないかな。
菅:ここしばらくの文房具って、外に向けてアピールするためのものが多かったじゃないですか。
きだて:SNS映えとか、他人に見せるための文房具ですよね。
菅:そう。でも、これ以降は内向きというか、自分が楽しむ方向に舵を切っていくような気がしますね。
古川:テレワークに強制的に移行せざるを得ない状況ですからね。メーカーも、どういった商品を送り出すべきかをより真剣に考えることになりますね。今後は“プライベートな空間に違和感なくビジネス環境を作ること”が課題になるので、そこからどんな文房具が生まれるのか、興味深いです。
美崎:おそらく、業界的にはその分の売り上げは上がりますよね。個人ユースが増えるわけだから。
古川:会社支給ではなく個人購入が増えたことで、文房具の多様性が広がったという話もあるので、今後はどうなるか。
きだて:暗い話だけじゃなくて、何か新しい文房具が生まれる期待感や楽しみがありますよね。
選考委員たちのトークがリアルタイムで聞けるチャンス!
仕事や作業の効率をアップさせる高機能な文房具、「はかどり文房具」の年間ナンバーワンを決定するアワード「文房具総選挙」では例年、ノミネートされたすべての商品を実際に見て触って試せる、タッチ&トライイベントを開催してきました。2020年は、新型コロナウイルス感染拡大による来場者への影響を考慮して、場所をオンラインに変更し、読者参加型のオンラインイベントを開催します。選考委員のほか、受賞メーカーや文房具好き女優・三戸なつめさんなども参加! 上記のような文房具トークをたっぷりお楽しみいただけます。もりだくさんで熱い2時間をお届けします! ※参加無料
【応募・詳細はコチラ】https://getnavi.jp/stationery/498656/