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2018/6/28 6:00

【朝の1冊】「ほどよい努力」を続けること。生きやすくなるブッダの4つことば――『精選 ブッダのことば』

仏教は、わたしたち日本人にとって深い関わりがあります。日本には、仏教由来のモノやコトがたくさんあるからです。

 

精選 ブッダのことば 初期仏典を中心に厳選した、お釈迦さま珠玉の語録集』(大森義成・著/学研プラス・刊)は、ブッダの生涯、ブッダの教え、経典の成り立ちについて、わかりやすく解説しているガイドブックです。

 

 

正しい人ほど「生きづらい」

恥じる心なく、烏(カラス)のようにあつかましく、他人を傷つけて省みるところのない人の生活は、なしやすい。謙遜の心があり、敬いを知り、執着を離れ、清らかに行い、智慧明らかな人の生活は、なし難い。『法句経』

(『精選 ブッダのことば』から引用)

 

もしも「生きづらさ」を感じているならば、あなたが「謙遜」や「恥」を知っているからです。痛みや苦しみを感じてしまうのは、他者の心を踏みにじらずに生きているからこそ。日々の悩みや苦しみは、あなたの「正しさ」を証明するものです。

 

『法句経(ほっくきょう)』は、「真理のことば」を意味する「ダンマパダ」という経典を漢訳したものです。鴨長明が著した『方丈記』における序文「行く川のながれは絶えずして〜よどみに浮ぶうたかたは〜」は、『法句経』の一節から影響を受けています。

 

 

神仏や運命のせいにしない

この世の中には三つの誤った見方がある。
一つには、ある人は、人間がこの世で経験するどのようなことも、すべて運命であると主張する。二つには、ある人は、それはすべて神のみ業(わざ)であるという。三つには、またある人は、すべて因も縁もないものであるという。『華厳経』

(『精選 ブッダのことば』から引用)

 

『華厳経(けごんきょう)』は、仏教における一派「華厳宗」の経典です。「奈良の大仏」は、華厳経が好きだった聖武天皇の発願によって、平城京の時代(752年)に建立されました。東大寺にある大仏坐像は、華厳経に登場する「毘盧舎那仏(びるしゃなぶつ)」を具象化したものです。

 

宗教といえば、運命論が支配していると思いがちです。審判の日におけるキリスト再臨。56億7千万年後に弥勒菩薩が現れるなど。しかし、仏教の経典のひとつである「華厳経」は、運命論を否定しています。「人生を左右するのは、運命でも神仏でもない」と説いており、縁(えん)や努力によって道は開けるのです。

 

仏教は「努力の効用」を認めています。ただし、ブッダは「がむしゃらに努力するのはダメ」とも言いました。

「ほどよい努力」とは何か

怠れば道を得られず、またあまり張りつめて努力しても、決して道は得られない。だから、人はその努力についても、よくその程度を考えなければならない。『パーリ仏典 増支部』

(『精選 ブッダのことば』から引用)

 

「弾琴のたとえ」という有名なエピソードがあります。きびしい修行を重ねても「悟り」を得られない弟子に、ブッダがアドバイスをしました。琴をうまく演奏するためには、琴糸を強く張りすぎても緩すぎてもダメで、ほど良くないと美しい音は出ない。怠けることなく、たゆまぬ努力を続けることが、成長するためのコツです。

 

『パーリ仏典』とは、ブッダ生前のことばが含まれている経典のうち、パーリ語で書かれた原始仏教経典の総称です。日本では、漢訳された『大蔵経』として伝わっています。おなじ「ブッダの教え」を記録したものですが、大意は同じでありながら、訳語ごとに解釈がすこし異なります。

 

 

最後に「捨てる」ものとは

「この筏(いかだ)は、私を安らかにこちらの岸へ渡してくれた。大変役に立った筏である。だから、この筏を捨てることなく、肩に担いで、行く先へ持って行こう」『蛇喩経』

(『精選 ブッダのことば』から引用)

 

『蛇喩経』とは、『パーリ仏典』に収録されている「蛇のたとえ話」です。蛇をつかまえるとき、胴体や尻尾をつかむと暴れてうまくいかない。首根っこをつかまえるのが正しい。つまり、本質をつかむためのコツを説いたものです。その話のあとに、ブッダは「筏の喩え」を語っています。

 

川を渡るためには筏(いかだ)が必要です。しかし、川を渡り終えたあとに、役目を終えたものを肩にかついで持ち歩くのは愚かなこと。重荷になるからです。ブッダは弟子たちに、ブッダ自身の「教え」ですら執着してはならないと説きました。何もかも捨てたとき、あなたには何が残りますか? 考えてみてください。

 

「ブッダのことば」は、弟子によって語り継がれたのち、さまざまな言語に翻訳されました。経典の数だけ、解釈の違いがあります。経典を読むことは、視覚や聴覚をとおして「ブッダが伝えたかったこと」を心で感じることです。お試しください。

 

【書籍紹介】

 

精選 ブッダのことば

著者:大森義成
発行:学研プラス

初期仏典を中心に、ブッダが残したことばを現代語訳で収載。ことばごとに、現役の僧侶による法話を載せ、ブッダの言わんとしていることを分かりやすく説き示す。現代の日本人に必要な“本当の幸せ”を指し示す、ブッダ珠玉の語録集である。

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