新型XC90/60シリーズに引き続き、待望のコンパクトSUVとして日本での発売が開始されたXC40シリーズ。小型専用のモジュールアーキテクチャーである「CMA」を採用し、同社のコンパクトセグメントの先駆けとして、大きな期待が寄せられています。そのタイミングに合わせてエクステリアデザイン部門のチーフであり、バイスプレジデントでもあるマクシミリアン・ミッソーニ氏が来日。このチャンスを生かすべく、XC40のデザインについて直撃インタビューを慣行。Q&A形式で紹介していきます。
PROFILE
マクシミリアン・ミッソーニ(Maximilian Missoni)
1979年生まれ、オーストリア出身。フォルクスワーゲン・エクステリアデザイナーを経て、2012年にボルボ・カーズ入社。エクステリアデザイン部門のチーフに就任し、2014年よりボルボ・カー・グループのエクステリアデザイン部門バイスプレジデントを務める。現在、開発中のすべてのボルボ、およびポールスターのエクステリアデザインにおける統括業務を担当。
世界に通用するグローバルデザインを具現化
Q:XC40は日本の道路事情にマッチしたサイズですが、アジア市場を狙っているのでしょうか?
A:アジア圏での販売は重要な条件ですが、XC40はグローバルな視点で作られています。ボルボはスウェーデン、アメリカ、中国の3か国にデザインスタジオを設立し、どの地域にもマッチするデザインを追求しています。その新提案がXC40であり、どの国でも認められるデザインこそがグローバルデザインの魅力であり、同車の存在意義を高めるファクターになっているのです。オキサイトレッドなどの大胆なボディカラーをラインナップしているので、日本の街並みにもマッチすると思います。
イメージした動物は生意気なブルドッグ
Q:なぜ、大成功を収めたXC90シリーズのデザインを踏襲せず、新たなデザインに挑戦したのでしょうか?
A:先に発売されたXC90シリーズは優雅で精悍なデザインが大きな魅力ですが、XC40はXC90/60とは違ったキャラクターを持っているのが特徴です。世界中で100を越えるアワードを獲得しているXC90のデザインを踏襲し、新たなデザインに挑戦しないという選択肢もありましたが、それでは意味がありません。ボルボの考え方はとてもシンプルです。ブランドとしてのアイデンティティは必要ですが、コンパクトなセグメントならではの「若さ」と「挑戦的なイメージ」で勝負することに意味がある。
XC90/60のスケールダウンではダメ。XC40ならではの個性を表現することにこだわりました。XC90の場合、フロントフェイスのモチーフにライオンを選びましたが、そのまま小さくしてしまうと猫になってしまう。そこで、XC40にはブルドッグをセレクトし、ちょっぴり生意気な造形を表現しています。
ボルボらしい2つのデザインを大切にしている
Q:日本人が持つボルボのイメージはスクエアな四角いイメージですが、エクステリアデザインにボルボらしい伝統は残されているのでしょうか?
A:ボルボらしいデザインとして2つの時代からインスピレーションを得ています。1960~1970年代に登場したP1800やP1800SEの優雅なデザインは素晴らしいですね。エレガントで流れるようなラインは現在の新型モデルにも生かされ、流れるようなルーフラインを見てもらえれば理解してもらえると思います。また、1980~1990年代のボクシーなデザインはボルボのアイコンとも呼べる大切なもの。現在のボルボは両時代の良い部分をブレンドしているといっても良いと思います。ただし、レトロな懐古主義に頼り過ぎるのではなく、常に新しいデザインを生み出すことが重要なのです。
インテリアデザインにも新たなる挑戦を!
Q:XC40はエクステリアも革新的です。ボルボの新しい提案は何を基本に行っているのでしょうか?
A:XC40のインテリアではスペースを最大限に生かすことをコンセプトに、クルマを使い人がどのようなアイテムを持ち込むのかを徹底的にリサーチすることから始めました。基礎からスペースを考え直し、日常的に使うアイテムをベストな状況で整理できるようにデザインしたのです。例えば、ドアのスピーカーを廃することで生まれたスペースにラップトップパソコンを収納できるようにしています。また、収納するだけでなく使用する素材にもこだわり、ライニングにフェルトを使用するなど新たな素材への挑戦も。ベーシックなモデルでは「高級な素材が使えないから」と諦めず、デザインでインテリアの質を上げる努力も行っています。それがスカンジナビアデザインであり、ボルボが北欧のイメージを大切にしている所以なのです。
スタイリングに躍動感を表現
Q:エクステリアデザインを統括するミッソーニさんですが、XC40のスタイルで一番魅力的に見える部分は?
A:XC40はエキサイティングなデザインが特徴的で、他のモデルとは違ったアグレッシブさを表現するためにフロントグリルを逆スラントさせ、止まっている状態でも走り出しそうな躍動感を表現しました。個人的にはフロントからボディを斜めに見たポジションがお気に入りです(笑)。実はフロントよりもリヤのトレッド幅を大きくしているので、この位置から眺めると迫力を感じていただけると思います。
未来のクルマはボルボが牽引して行く
Q:最後に今後のボルボが進むべきデザインの方向性、ミッソーニさんが考える未来のビジョンを教えてください。
A:現在、エクステリアデザインという仕事はとても幸せな環境にあると思っています。それは、ボルボを含めて自動車というものが新たな世界へと進み始めているからです。自動運転や電気自動車への過渡期にデザインに携わるということは、新たな世界を作ることになる。それにはメカニカルな進化に対してデザインも新たなる挑戦をして行かなければなりません。クルマの未来は私たちボルボが牽引して行きます。