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2018/4/14 20:00

セット系きっぷは実際おトク? 京急電鉄「よこすか満喫きっぷ」でどれくらい“満喫”できるかやってみた

赤い電車でお馴染の京浜急行電鉄(以下、京急と略)。駅で見かけた「よこすか満喫きっぷ」というリーフレットに目が引かれた。品川駅・横浜駅などの駅からスタートし、横須賀地区の駅との間の電車のフリーきっぷ(一部バスも含む)とともに、グルメ1品、そして観光施設など1か所の利用料金が含まれている。料金は品川駅から大人3050円だ。

 

まずは簡単に計算してみる。品川駅〜横須賀中央駅間の往復料金が1276円(ICカード利用時)。グルメに加えて遊び要素が2000円ぐらいかかったとして、それが3050円で楽しめるとなれば、かなりおトクになるのではないのだろうか。

 

さらにフリーきっぷが利用可能な、横須賀、浦賀、観音崎地区を京浜急行バスに乗って回れば……というような皮算用を胸に、さっそく横須賀へ向かった。

↑「よこすか満喫きっぷ」のリーフレット。券が使える店と施設、さらに地図も掲載。同きっぷは、京急の駅の自販機で購入できる(写真左下のように3枚の券に分けて販売される)

 

【満喫きっぷ行程①】

品川から快特に乗って45分で横須賀中央へ

品川駅からまず横須賀中央駅へ向かう。快特を使えば約45分の距離だ。ちなみに品川駅〜横須賀駅間をJR横須賀線に乗ると1時間10分以上かかる。やはり京急は断然に速い。

 

個人的には窓を横にして座るクロスシートの2100形が好きなのだが、この日はロングシート主体の新1000形に乗車。とはいえ、速さにはかわりない。あっという間に川崎、横浜を過ぎて横須賀中央駅に着いたのだった。

↑横須賀市の中心駅・横須賀中央駅。あちこちにオブジェが飾られる横須賀の街。駅前広場にもサックスを吹く像が立つ

 

【満喫きっぷ行程②】

日露戦争で旗艦として活躍した戦艦「三笠」へ

横須賀中央駅から、世界三大記念艦「三笠」を見学しようと三笠公園を目指す。繁華街を抜け、そして国道16号を渡り、約0.9km。10分の道のりだ。横須賀新港に面して、記念艦「三笠」が設置されている。全長122mのグレーの船体。高い2本の煙突に、上空に延びる2本のマストが目立つ。

 

世界三大記念艦「三笠」。1904(明治37)年に起こった日露戦争で連合艦隊の旗艦として活躍。日本海海戦でロシアのバルチック艦隊を撃破する功績をあげている。

↑三笠公園で保存される記念艦「三笠」。イギリスの「ヴィクトリー」、アメリカの「コンスティチューション」とともに世界の三大記念艦とされている

 

記念艦「三笠」の入口を上り、「満喫きっぷ 遊ぶ券C」を窓口に出すと、引き換えに「入艦券」と「お土産引換券」が渡される(通常の入艦料は600円)。そして見学。艦内をほぼくまなく見ることができるのだが、日露戦争当時の歴史的な資料が展示されているほか、なんとVRやシミュレーターで日本海海戦を体感することができる。それも無料だ。そして実際にバルチック艦隊との降伏文章を調印した部屋なども見学できる。東郷平八郎連合艦隊司令長官が実際に戦闘の指揮をとった場所とされる最上艦橋からは、港の風景が楽しめる。

↑艦橋および上甲板だけでなく、艦内の見学が可能だ。写真は中甲板にある長官公室。連合艦隊の作戦会議や、バルチック艦隊の降伏文章調印などもここで行われた

 

帰り際、入口で渡された「お土産引換券」を手に売店へ立ち寄る。すると、「三笠しおり」か、「三笠砲弾豆&ボールペンセット」のお土産がもらえる。見学だけでなく、お土産付きとは、すごく得した気分になる。

 

◆世界三大記念艦「三笠」

●「遊ぶ券」利用可能時間:[4〜9月]9〜17時最終入艦、[3月・10月]9時〜16時30分最終入艦、[11〜2月]9時〜16時最終入艦/12月28〜31日休み

●場所:横須賀市稲岡町82-19

●TEL:046-822-5225

 

【満喫きっぷ行程③】

国道16号を歩き横須賀本港を目指す

世界三大記念艦「三笠」から西へ向かい、横須賀本港を目指す。約1.2km、15分の距離だ。三笠公園の前からまっすぐ延びる三笠公園通り。遊歩道沿いにはオブジェなどもあり、それらを鑑賞しながらの散策が楽しめる。

 

さらに米軍施設の目の前を通り過ぎる。軍関係者が多く行き交い、やはり米軍の基地がある街であることを強く印象づけられる。国道16号沿いに建ち並ぶ店などを見ながら歩けば、間もなく横須賀本港へ出る。

↑三笠公園通りには港町・横須賀らしく帆船日本丸のスケールモデルが設けられている

 

横須賀本港へ出ると、軍港らしく海上に海上自衛隊の護衛艦や、アメリカの軍艦が対岸に繋留される姿がよく見える。「よこすか満喫きっぷ」には含まれていないが、この港からは「YOKOSUKA軍港めぐり」のクルーズ船が出航している。料金は1400円。護衛艦や軍艦が間近に海上から見ることができるとあって人気も高い。

↑横須賀本港には海上自衛隊の護衛艦やアメリカ海軍のイージス艦などが繋留されていた

【満喫きっぷ行程④】

横須賀名物のカレーやハンバーガーを堪能

そろそろおなかも空いてきたということで、満喫きっぷのお楽しみの1つ、「食べる券」が使えるグルメどころを目指す。横須賀本港に近いのは、国道16号から1本、裏手に入った「ドブ板通り」だ。ここには「食べる券」が使えるお店も多い。

 

ところで横須賀といえば、カレーが有名だ。かつて横須賀には大日本帝国海軍の横須賀鎮守府が置かれていた。現在も海上自衛隊の基地がある。海軍では兵士の栄養の偏りを防ぐためにカレーライスを採用したとされる。そんな昔ながらの海軍のレシピを生かした「よこすか海軍カレー」を多くのお店で楽しむことができる。

↑ドブ板通にある「レストランTSUNAMI」の海軍カレー(「満喫きっぷ」食べる券で食事できるメニュー)、牛肉たっぷりのカレーライスに野菜サラダとミルク、福神漬付き

 

海軍カレーとともに横須賀の名物となっているのが「ヨコスカネイビーバーガー」。米海軍の軍隊食で、艦船の見張り要員の食事だった「NAVY BURGER」。そのレシピが、米横須賀基地から横須賀市に提供され、2009年1月から基地周辺のお店で販売されたのが始まりとされる。実際に横須賀のドブ板通りは、軍関係者と思われる人たちの姿も多く、そんな彼らが愛好してきた味がごく気軽に食べられるのだ。

 

今回海軍カレーを食べた「レストランTSUNAMI」では、このヨコスカネイビーバーガーも提供している。もちろん、こちらも「食べる券」が利用可能。手持ちの「食べる券」は海軍カレーに使用してしまったが、せっかくなのでこちらも実食。直火焼きのグリラーで焼き上げた牛肉、さらに三浦の海洋酵母で発酵させ、溶岩窯で焼いたバンズはふんわりした食べ心地で、美味だった。

※「満喫きっぷ食べる券」は、1店1品のみ有効です

↑「レストランTSUNAMI」の横須賀ネイビーバーガー(「食べる券」で食事できるメニュー)。ドリンク付きでボリュームも満点。パテには赤身の多い100%牛肉と牛脂を使用する

 

◆レストランTSUNAMI

●「食べる券」利用可能時間:11〜21時LO/1月1日休み

●場所:横須賀市本町2-1-9飯田ビル

●TEL:046-827-1949

 

【満喫きっぷ行程⑤】

さらにフリーきっぷを駆使して観音崎を目指す

食事をしたドブ板通りは、京急の汐入駅のすぐ近く。満腹になったとはいえ、フリーきっぷがあるだけに、そのまま帰るのはもったいない。そこで横須賀の東南端に位置する観音崎を目指した。

 

観音崎へは2つのアクセス方法がある。例えば汐入駅からは、京急本線に乗り浦賀駅へ。そこからバスで観音崎を目指す方法。あるいは、横須賀市街の国道16号沿いにある汐留、または本町一丁目バス停、横須賀中央バス停からも直接、観音崎行きのバス(JR横須賀駅〜観音崎駅間を運行)が出ている。いずれのアクセス方法も、満喫きっぷのフリー乗車券が利用できる。

↑観音崎バス停からすぐそばの海岸から浦賀水道を望む。東京湾の出口ということで大型貨物船がひっきりなしに出入りしていて、その行き交う様子を見ているだけでも楽しい

 

↑観音崎の丘陵上に設けられた観音埼灯台。灯台内の見学も可能(有料)。観音崎のバス停からは徒歩約15分。急坂を登り下りする必要がある

 

観音崎周辺は夏ともなると海水浴客で混雑するが、そのほかの季節は比較的、訪れる人も少なめで穴場といっていい海岸だ。目の前の浦賀水道をひっきりなしに大型の外航船が行き交う。船や乗り物好きには結構、楽しめるポイントだ。日産自動車の工場が神奈川県内にあることから、自動車運搬船の往来も多い。

↑観音崎の海沿いに作られたボードウォーク。板張りのきれいな遊歩道で足にもやさしい造りで癒される。景色を楽しみつつ、のんびり歩きたい

 

【満喫きっぷ行程⑥】

観音崎でも「遊ぶ券」が使える

「よこすか満喫きっぷ」の「遊ぶ券」は、横須賀市街だけでなく観音崎地区でも使える。例えば、「横須賀美術館」。観音崎から歩いてほど近い、海を望むポイントにある。今回は世界三大記念艦「三笠」で「遊ぶ券」を使ったが、観音崎までとっておくというのも1つの方法だろう。

↑観音崎の自然と一体化した造りの「横須賀美術館」。建物自体も一見の価値がある

 

↑海を目の前に望む絶景美術館として知られ、屋上から眺める東京湾も素晴らしい

 

「横須賀美術館」は国内の近現代美術を中心に収蔵、展示を行う。また多彩な企画展も開催している。別館では横須賀ゆかり、そして週刊新潮の表紙絵を描いた谷内六郎の作品を見ることができる。

 

◆横須賀美術館

●「遊ぶ券」利用可能時間:10〜18時/毎月第一月曜休(祝日の場合は開館)・12月29日〜1月3日休

●場所:横須賀市鴨居4-1

●TEL:046-845-1211

※企画展が展示替え中で所蔵品展のみ開催の場合は、所蔵品展の観覧に加え、お土産を進呈

 

観音崎で「遊ぶ券」が使えるほかの施設としては、温浴施設「SPASSO(スパッソ)」もおすすめだ。こちらは観音崎京急ホテルのビューティー&リラクゼーションスパ。観音崎を散策したあとに、東京湾を望みつつゆったり温浴、さらにリフレッシュして帰るというプランも楽しいだろう。

↑東京湾を望む「SPASSO」の眺望露天風呂。地元、走水の湧水を使用

 

↑眺望露天風呂以外にサウナや眺望内風呂などを用意する。写真は女性用のホワイトシルキーイオンバス。シルクのようにやさしいミクロの泡が身体を包み込む

 

◆SPASSO

●「遊ぶ券」利用可能時間:10〜23時(最終入館は22時30分まで)/無休(メンテナンス休あり)

●場所:横須賀市走水2

●TEL:046-844-4848

※バスタオル、フェイスタオルのレンタル付き

 

【1日の振り返り】

この日の「行程」と「利用金額」を整理――実際どれくらいお得?

今回の行程をまとめると、

 

品川駅 → 横須賀中央駅 → 三笠公園 → 横須賀本港 → ドブ板通りで昼食 →(本町一丁目からバスで移動)→ 観音崎 →(バスで移動)→ 横須賀中央駅 → 品川駅

 

よこすか満喫きっぷを使わなかった場合の経費は、

 

交通費合計2056円 + 食事代(横須賀海軍カレー1200円※) + 遊ぶ(世界記念艦「三笠」入場券600円+お土産代) = 3856円+α

 

となる。満喫きっぷは、品川駅からで大人3050円なので、使い方によっては、かなりお得になることがわかった。「よこすか満喫きっぷ」の公式サイトには、「食べる券」「遊ぶ券」が使える場所やおすすめスポットなどの情報も掲載されているので、それらを参考に思いっきり横須賀の街を“満喫”してみてはいかがだろう。

※食事は通常時メニューと異なる場合あり

 

◆京浜急行電鉄「よこすか満喫きっぷ」

●主要駅からの発売額(大人の場合):品川から・京急蒲田から・京急川崎からそれぞれ3050円、横浜から2950円、上大岡から・金沢文庫から2800円。フリー区間内の駅からの発売額:2670円。

●有効期間:1日

●その他:食べる券が使える店舗は17軒、遊ぶ券は9軒(「食べる券」「遊ぶ券」ともに、それぞれ1軒でのみ利用可能)

*京急電鉄ではほかに「みさきまぐろきっぷ」と「葉山女子旅きっぷ」も用意している。

 

※記事内の情報は2018年4月執筆時点のものです