クルマの技術をベビーカーの開発に持ち込んだ
実は、加藤さんは前職で自動車関連の開発に携わっていたという経歴の持ち主。ベビーカーの走行性の向上を図るために参考にしたのは、やはりクルマだったそうです。そこでまず、走りの要素を「直進安定性」、「段差乗り越え性」、「振動吸収性」、「転回操作性」、「転回安定性」、「静粛性」の6項目に分解し、クルマの走りを意識しつつ開発を進めました。また、シングルタイヤの優位性を確かなものとすべく、加藤さんはCAE解析(コンピューター技術を活用して製品の設計や開発をシミュレーションすること)やタイヤメーカー出身の大学教授らの力を借りたと言います。
構成する部品の強度や剛性、取り付けの角度などは綿密に計算されたうえで決められたもので、それぞれに意味があります。シングルタイヤとダブルタイヤでは車輪の数が違うだけでなく、部品の取り付け方や接続の構造もまったく異なり、入力の伝わり方も違ってきます。一般的なダブルタイヤの衝撃吸収構造はあまり凝ったものにはならないのに対し、スイング式のサスペンションを持つランフィでは上下だけでなく前方からの力も吸収。さらに、軽くてクッション性に優れる中空構造のタイヤが振動を巧みに吸収してくれます。
また、タイヤの外径が大きいほうが段差を乗り越える際の踏破性が高まります。外径18cmのタイヤを採用したRunfee RA8も、段差の乗り越えやすさについては、すでに多くのユーザーから高く評価されています。
走りにおけるシングルタイヤとダブルタイヤの最大の違いは、タイヤの接地点にあります。荷重のかかり方からして、ダブルタイヤの場合はパイプからくる軸とタイヤ同士の軸が離れているので、実は常に横に細かく揺れるような動き方をします。ところがシングルタイヤでは構造的に同軸上なので、タイヤの横ブレは絶対的に少ないゆえに、不快な振動が減少されます。
実際に試してみると、まさしく目からウロコ! 同じ条件の場所でシングルタイヤと押し比べてみたところ、その違いは歴然としていることがよく分かりました。シングルタイヤのほうが思った通り素直な動き方をします。これは、よくクルマの走りを表現するときに用いる“意のままのハンドリング”そのもの。狙ったとおりにラインをトレースしていけるので、これなら狭い場所を通らざるをえないような状況でも押しやすく、苦になりません。
一方、ダブルタイヤは、直進時の据わりも悪ければ方向性も定まりにくいです。その理由は4か所それぞれで両輪がバラバラに動いてしまうから。2輪ずつあるならより安定するような気がするところですが、実際にはそんなことはありません。安定感は車幅の広さで決まるものであって、タイヤの数の問題ではないのですね。
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