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2018/10/16 17:30

見慣れた表示がいつのまにか変化していた!? 鉄道車両に欠かせない「カラーLED表示器」の今を追う

【表示器の仕組み①】上から1行ずつ順番に光り1枚の表示となる

ここでLED表示器の仕組みを見ていこう。写真を撮る上でも大きなヒントとなりそうだ。

 

側面のLED表示器を撮影したのが下の2枚だ。この撮影では、背面モニタをONにしてシャッターを切った。するとモニタのなかで見えるLED表示器の文字が、上から下へ流れている様子が見られた。

↑車体側面の3色LED表示器を撮る。カメラのシャッター速度を60分の1にして撮影すると、きれいな文字になって見えた

 

↑こちらはシャッター速度160分の1で撮影した3色LED表示器。このように列単位で抜けてしまう箇所が生まれてしまう

 

さらにカメラで撮る時にシャッター速度をいろいろ変えて撮ってみた。すると100分の1秒以上では、文字が写らない行ができてしまう。文字が1枚の絵にならずに、すき間が生まれてしまう状態だ。

 

80分の1で、ややすき間が残り、60分の1秒という遅いシャッター速度まで下げて、ようやくきれいな文字が浮かび上がった。

 

どうしてこのような現象が起きるのだろうか。その原因は、LED表示器の仕組みにある。

↑コイト電工で見せてもらった最新のカラーLED表示器。LED表示器とは四角い小さなドット(LED素子)の集合体で構成され、それぞれのドットを光らせて1枚の絵に見せている

 

上の写真はコイト電工で見せていただいた「カラーLED表示器」。間近に見るのが始めてということもあり、多くの発見があった。

 

どのようにカラーLED表示器は文字や絵を表示しているのだろう。その特徴をあげていこう。

1)ドット(LED素子)の組み合わせ
目を凝らして見ると、表示器は、四角いドットがタテヨコに細かく並んでいることが分かる。このドットはLED素子と呼ばれるものだ

2)ドット16個×16個が1ユニットとなる
写真のカラーLED表示器では、ドット(LED素子)が16個×16個を1単位としたユニットで造られている。このサイズでは下の写真のようにユニットをヨコ8個、タテ2列に組み、計16個のユニットで文字を見せている

↑写真のカラーLED表示器は16個×16個のLED素子が組まれたユニットを、さらに8列×2組を組み合わせて1枚の大きな表示器としている(※白ワクと数字は編集部で説明用に入れたもの)

 

3)行単位で点灯、上から下へ順に点灯していく
この表示器の場合は、ヨコ1行が同時に点灯、1行めから点灯を始め、2行め、3行めと下に点灯が広がっていく。ずっと点灯しているわけでなく、上の行から点灯→消灯→点灯を繰り返している。

 

この点灯時間は2000年代に造られたもので、1行が1ms(ミリ秒)。16行あれば、16ms(ミリ秒)かかった。つまり1000分の1秒で1行。1000分の16秒で16行の全部が点灯するわけだ(上写真の「9」ユニット以降は「1」ユニット以降と同じタイミングで点灯・消灯する)。

 

カメラのシャッター速度に置き換えれば、1000分の1秒のシャッター速度ならば、1行のみが光っている時間にあたり、理論上では1行しか撮影できない。16行の表示器ならば単純計算すれば、全点灯状態に近く見せるのには計算上、シャッター速度は62.5分の1秒が必要となる。

 

62.5分の1秒は、カメラのシャッター速度にはないので60分の1秒にすれば完璧にとらえることができる。とはいえ、そこまでになると停まっている電車は撮影できるが、動いている電車となると、かなり撮影が難しい(LED表示器の詳しい撮影方法は次回紹介の予定)。

 

このように1秒よりも短い単位で明滅しているLED表示器だが、人間の目には1枚の表示として見ることができる。それは残像効果のせいだ。

 

高性能なカメラに比べて、人の目というのはアバウト。反面、すべてが見えてしまっては疲れてしまい大変なわけで、このアバウトさがちょうどいいのかもしれない。

↑カラーLED表示器は、上の列から下へ順番に点灯&消灯を繰り替えしている。それを図示してみた。1から16行/17行から32行(2段目の1から16)まで点灯・消灯を続ける。その速さ遅さに関わらず、人の目には1枚の絵として見える

 

【表示器の仕組み②】技術の向上で点灯速度も大幅にアップ!

どのLED表示器もシャッター速度をかなり遅くしないと撮れないのだろうか。

 

安心していただきたい。技術が進歩していて点灯スピードは速くなり、2018年現在の技術では1行が約60μs(マイクロ秒)、1画面が約1ms(ミリ秒)で点灯を行う。計算すると1行は100万分の60秒で点灯、1画面が点灯するのに1000分の1秒で済んでしまう。この瞬速タイプはコイト電工のカラーLED表示器の場合だ。

 

そのようなカラーLED表示器の場合、200分の1から400分の1といった速いシャッター速度でも十分に撮影可能。ただ、実際に写真を撮られている方はご承知かもしれないが、100分の1秒以下といった遅いシャッター速度でも厳しい新車のLED表示器も確認されている(このあたりの詳細は次回に解説予定)。

 

また、コイト電工ではヨコ単位で点灯させているが、タテ単位で点灯させている表示器を製造しているメーカーもある。このあたり表示器のメーカーによって差があることを知っておきたい。

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