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2022/9/3 21:00

意外に知らない「青梅線」10の謎解きの旅〈前編〉

【青梅線の謎を解く⑩】青梅鉄道公園に残る悲劇の機関車とは?

鉄道好きならば、青梅駅を訪れたら、ぜひとも寄っておきたい施設がある。鉄道好きご用達「青梅鉄道公園」だ。国鉄が鉄道90周年記念事業として開設した鉄道公園で、明治時代から昭和期まで活躍した10車両が保存展示されている。鉄道好きの子どもたちが安心して遊べる遊具や、古い車両に出合え、鉄道模型などもあり親子揃って楽しめる施設となっている。

↑青梅駅の北側、徒歩15分ほどの青梅鉄道公園。珍しいE10形蒸気機関車(右上)も展示保存される

 

鉄道公園だから駅や線路近くかと思うと、これが意外にも青梅駅の北側、永山公園という山の一角にある。駅からは徒歩で15分ほどだ。ハイキング気分で訪れるのに最適と言えるだろう。

 

展示保存される中で最も珍しいのは動輪5軸というE10形蒸気機関車ではないだろうか。国鉄が最後に新製した蒸気機関車で、奥羽本線の板谷峠越え用に造られた。1948(昭和23)年に5両が造られた機関車で、青梅鉄道公園に残る車両はその2号機が保存される。このE10、高性能だったのだが、技術的な問題が多々あり、製造翌年には、板谷峠が電化され、肥薩線や北陸本線へ転用された。他の路線でも性能は活かされずに1962(昭和37)年には全車が廃車となっている。稼働14年と短く〝悲劇の機関車〟とも呼ばれる。

 

そのほか青梅線で走った車両も見ておこう。まずはED16形電気機関車1号機。こちらは1931(昭和6)年に鉄道省(その後の国鉄)が製造した電気機関車で、中央本線や上越線用に開発された。青梅線との縁も深く、西立川にあった機関区に数両が配置された。博物館に保存される1号機も、西立川や八王子の機関区に配置されていた期間が長い。同1号機は、国産電気機関車が生まれた当時の歴史的な車両ということもあり重要文化財に指定されている。

 

こげ茶色の旧型国電クモハ40054という車両も保存されている。この電車の形式名はクモハ40形電車で、車体長20m、国鉄40系のひと形式に含まれている。同車両は青梅駅にあった青梅電車区に一時期、配置され、その後は日光線などで活躍した後に、記念イベントで青梅線を走行した経歴を持つ。

 

旧型国電は、青梅線などの全国のローカル線を走り、さらに全国の私鉄に払い下げられ長い間、走り続けた。戦中・戦後の日本を支え、さらに昭和期の輸送に役立てられた。このこげ茶色の角張った車両を見ると、お疲れ様と言いたくなるような愛おしさが感じられるのである。

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