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2022/9/24 21:00

繰り返される甚大な「自然災害」−−不通になった鉄道を総チェック

【今も不通が続く①】廃止が決定した路線と運行再開される路線

◇JR北海道 根室線・富良野駅〜東鹿越駅間 災害により不通→廃線へ

廃止がほぼ決まったのがJR北海道の根室線、富良野駅〜東鹿越駅(ひがししかごええき)間。2016(平成28)年8月31日の台風10号による豪雨災害の影響で、幾寅駅前後で斜面崩壊、土砂流入などの被害を受け東鹿越駅〜新得駅が不通となっている。

 

列車の運行が続く富良野駅〜東鹿越駅間は2021年の輸送密度が50人といった状態で、JR北海道内ではワーストを記録していた。同じ北海道内では、日高線の鵡川駅(むかわえき)〜様似駅(さまにえき)間が、災害の被害を受け2021(令和3)年4月1日に廃止となったが、それに続いての廃止の予定がほぼ決定していて、あとは廃止日の発表が行われるだけの状態になっている。

↑富良野駅〜東鹿越駅間は、原生林に包まれて走る区間が多い。風景は素晴らしいが、乗車数の低さが路線存続を阻んだ形となった

 

◇JR東日本 只見線・会津川口駅〜只見駅間 不通→10月1日路線再開

一方で、路線の存続が危ぶまれたものの運転再開に向けて試運転が進むのが只見線の会津川口駅〜只見駅間だ。

 

被害にあったのは11年前の2011(平成23)年7月30日のこと。「平成23年7月新潟・福島豪雨」と名付けられた豪雨により、阿賀川の支流、只見川にかかる複数の橋梁が流失してしまった。以来、代行バスの運行が続いていたが、2018(平成30)年から復旧工事が始められ、4年の歳月を経て、この10月1日から運行が再開される。

 

この路線では運転再開に向けて上下分離方式が採用された。上下分離方式とは鉄道路線の線路保有と、列車運行を異なる事業者が行う。会津川口駅〜只見駅間は福島県が第三種鉄道事業者となり、今後の鉄道路線を整備・保有する。JR東日本が第二種鉄道事業者となり、列車の運行および営業を行う。

 

この上下分離方式により、復旧費用および列車を運行するJR東日本の負担を減らして、路線復活を図った。とはいえ、復旧する会津川口駅〜只見駅間で予定される列車の本数は1日に3往復ほどと少ない。どのような成果を生み出すのか興味深いところだ。

↑路線再開に向けて復旧工事が進む只見線。只見川沿いの山深い区間だけに、復旧費用もかかり福島県が3分の2を負担したとされる

 

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【今も不通が続く②】BRT化工事が進む日田彦山線

北海道・東北に目立つ自然災害による路線の不通。残りの不通路線が集中するのが九州である。九州地方には線状降水帯の予報が出ることが多い。台風14号のように九州を縦断するような台風も表れる。年ごとに被害の度合いは異なるものの、不通区間も出がちで、列車運行の難しさが感じられる地域となっている。ここからは九州の不通区間とその後を見ていこう。

 

◇日田彦山線・添田駅〜夜明駅(よあけえき)間 不通→BRT化へ

↑日田彦山線の名物だったアーチ橋。写真は栗木野橋梁で長さ71mあり絵になったが 2013年7月21日撮影

 

今から5年前の2017(平成29)年7月5日に「平成29年7月九州北部豪雨」により、不通となった区間の被害は深刻で63か所の線路被災が確認された。その後にバス代行輸送が始まり、現在にいたる。

 

数年にわたる地元自治体との話し合いにより、路線復旧を諦め、一部の路線跡を専用道路として利用するBRT(バス・ラピッド・トランジット)による復旧が進められている。

 

ちなみにJR九州はすでにJR九州バスの分社化を2001(平成13)年にしており、今回の日田彦山線はJR九州バスに任せずに、自らバス事業者としてバスの運行をすることになっている。実に22年ぶりにバス事業者に復帰することになる。

 

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