世界最大規模のIT家電見本市として知られる「CES2023」が、1月5日~8日の日程で、米国ネバダ州ラスベガスで開催されました。
そもそも「CES」って何なの?
CESが最初に開催されたのは1967年のこと。以来、北米での最新家電を一手に引き受けて来たこの見本市ですが、90年代頃からPC系が出展するようになり、その後は2012年には北米のカメラ見本市「PMA」と併催。その頃には自動車の電動化が急速に進み始めた自動車メーカーが相次いで出展するようになり、ショーの規模はどんどん巨大化して今に至ります。
会場へ出掛けて誰もが驚くのがその規模です。新たにオープンしたウエストホールは驚くほど巨大で、それを含めたラスベガス・コンベンションセンター(LVCC)の端から端まで歩けば確実に15分はかかります。しかも、CESは周辺のホテルを巻き込んで開催されており、2024年には現在工事中となっていたサウスホールが完成すれば、その規模がさらに巨大化することは間違いないでしょう。
【その1】「ソニー・ホンダモビリティ」から生まれた新ブランド名は『AFEELA』
さて、そんなCES2023で日本メディアにとって最大の関心事となったのが「ソニー・ホンダモビリティ(SHM)」の動向です。同社は、昨年、ソニーとホンダが半分ずつ出資し合って設立した合弁会社で、その第一弾が2025年前半にも新型EVとして先行受注されることが発表されていたからです。
発表当日、立ち見席が出るほどの超満員の会場で発表されたのは新ブランド「AFEELA(アフィーラ)」と、そのプロトタイプ第一号モデルでした。AFEELAには「得られる体験の核心を、『感じる(feel)』に込めた」とし、シンプルなデザインのプロトタイプからは新しいEVメーカーが放つ新型車に多くの期待が込められていたようです。
プロトタイプに備えられた最大の特徴は車内外に備えられた45個にも及ぶセンサーです。このセンサーによって高度な運転支援や快適なインターフェースなどを実現し、そのセンサーからの情報を処理するのがクアルコムの「Snapdragon Digital Chassis」です。これによって、かつてない魅力に富んだ高付加価値車を生み出そうというわけです。
SHMでは、2025年前半にまず北米で先行受注を開始し、同年末までには発売に踏み切るとしており、日本でも展開を予定。北米での最初のデリバリーは2026年春を予定しているとのことです。
【その2】揃い踏みしたドイツの自動車メーカー。シュワルツェネッガーも登場!
それ以外の自動車メーカーの出展も目白押しです。特に力が入っていたのがドイツ勢です。中でも注目を浴びたのはBMWでした。BMWは基調講演で『i Vision Dee』を発表し、スマホ一つで車体の色を変幻自在に変更できる世界初の機能を披露したのです。ボディカラーは32色に変化させられ、240セグメントに分割されたボディ表面のラップと組み合わせれば無限のボディカラーが表現できるということでした。
講演中はハリウッドスターのアーノルド・シュワルツェネッガーが登場し、アナログ世代からデジタルネイティブ世代への橋渡し役を務めるなど、その演出にも注目が集まりました。
メルセデス・ベンツが出展したのは、次世代EVコンセプト『ヴィジョンEQXX』です。その空気抵抗係数は驚きの0.17!マグネシウムなどを使用して徹底的に軽量化したシャシーは技術の集大成と言えるでしょう。また、Dolby Atmosの没入感でカーエンタテイメントが楽しめる新型EV『EQS』の展示も人気を呼んでいました。
フォルクスワーゲンは次世代EVプラットフォーム「MEB」を採用した、いわゆるパサートクラスの『ID.7』をカモフラージュ仕様で初公開しました。展示車両は特殊な塗装により、最上層の塗装の下に電気を通すことで発光する仕組みで、閉じられた空間で音と光を連動させた効果を演出していました。
【その3】コンセプトカーで圧倒的な存在感をアピールしたステランティス
一方、CES2023で存在感を発揮していた自動車メーカーがステランティスです。同社は2021年1月に、フランスの自動車メーカーグループPSAとイタリアとアメリカの自動車メーカーフィアット・クライスラー・オートモービルズが合併して誕生しました。
そのステランティスのブースで際立っていたのが、コンセプトカー『プジョー・インセプション・コンセプト』です。全長5.0mでありながら全高は1.34mに抑えられ、キャビンのほとんどはガラス張り。モーターはフロントとリアに合計2基備え、その出力は680hp(500kW)となり、静止状態から100km/hまでの加速はなんと3秒未満!まさに外観の迫力に違わないハイパフォーマンスカーと言えるでしょう。
ステランティス傘下の「Ram」が出展したのがピックアップトラックタイプの『Ram 1500 Revolution BEV Concept』です。2つの電動駆動モジュールを搭載して全輪駆動で走行し、ピックアップながら新しいアーキテクチャーにより、より広々とした室内空間と長いキャビン長を実現。バッテリーは最大出力350kWの800V急速充電にも対応し、約10分間で航続距離160kmを充電できます。量産モデルは2024年に市場投入する予定です。
【その4】それぞれの独自技術で個性を発揮したサプライヤーが目白押し
続いては自動車部品メーカー(サプライヤー)で見つけた注目の展示を披露したいと思います。
まず世界最大のサプライヤー「ボッシュ」の展示で注目したのは、同社のセンサー技術を活用した新たなモビリティソリューション『RideCare Companion』です。普及が進むライドシェアのドライバー向けに開発されたもので、常に車内の様子を映像で捉え、緊急時には付属するSOSボタンでボッシュのサービスセンターへ緊急通報できるのがポイントです。デバイスを含めて米国で年間120ドル程度のサブスクでの提供を想定しているとのことでした。
フランスのサプライヤー「ヴァレオ」が出展したのは、歩行者への利便性やEV用充電器としても活用できる『スマートポール』です。ポール下部に埋め込まれた超音波センサー(ソナー)で歩行者の位置を把握しながらトップに備えられた円形のLED照明が必要な位置を照らします。さらに、光学カメラやサーマルカメラ、レーザースキャナ「SCALA LiDAR」により、歩行者の位置に応じて信号を切り替えたり、歩行者が道路へ飛び出さないような警告を出すこともできるそうです。
自動車向けシートを開発するトヨタ紡織は、MaaS社会に向けて、将来の自動運転を想定した二つの車室空間を提案しました。一つはMaaSシェアライド空間コンセプトの『MX221』で、自動運転レベル4を想定した都市部シェアモビリティです。多様な移動ニーズへの対応や、利用シーンに合わせた空間レイアウトや内装アイテムの載せ替えを可能としました。もう一つはMaaSサービス空間コンセプト「MOOX」で、自動運転レベル5の時代における、さまざまなサービスニーズに対応する車室空間コンセプトとしました。
【その5】パナソニック、Boseが時代に合わせた音へのこだわりを提案
パナソニックが出展したのは、EV向けに開発した『EVオーディオ』システムです。ドアスピーカーの廃止などスピーカーのサイズと数を減らすことで、最大67%の省エネを実現。スピーカーの設置場所の最適化やサウンドチューニングなどにより、少ないスピーカーでも音響性能を向上させているのがポイントとなります。今までのようにオーディオを楽しみながら、バッテリー消費を少しでも抑えたいEVにとって重要なスペックとなりそうです。
車載オーディオのプレミアムブランド「Bose」が披露したのは、大型SUVのGMC/Yukon Denaliに搭載した『3DX Experience』です。ステレオ音源の3Dアップミックス再生を実現したもので、ハイトスピーカーの活用によって臨場感豊かな3Dサラウンド効果を発揮します。中でもドルビー・アトモスを組み合わせた3D再生では、ハイトスピーカーのあり/なしで切り替えて体験ができ、いずれも高い完成度で満足いくサウンドが楽しめました。
会場内には、他にもワクワクするようなモビリティがありました。
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