雑貨・日用品
2018/5/1 17:30

大人の教養ーー「手ぬぐい」の再評価までの今昔物語。と、最先端の使い方。

だんだんと暑い日が続くようになってきましたが、汗をかいたときの必需品は言うに及ばずハンカチ、タオル、手ぬぐいです。特に手ぬぐいは近年、様々なデザインのものがあり、定番の「拭く」といった行為以外にも様々な使われ方をされるようになり、用途のバリエーションが増えているようです。ここでは、そんな手ぬぐいの秘密と新しい使い方について、てぬぐい専門店・かまわぬの秋葉美保さんにお話を聞きました。

 

↑かまわぬ・秋葉美保さん。手ぬぐいの開発、販売だけでなく、様々な視点から新しい使い方を日々提案しています

 

 

手ぬぐいのはじまりは特別な神事につかわれるものだった

――まず、手ぬぐいの歴史から現代までの変遷をお聞かせください。

 

秋葉美保さん(以下:秋葉) 手ぬぐいは、平安時代からの法令「養老律令(ようろうりつりょう)」において、安い麻は庶民が、絹は高貴な者が身に付けるよう定められており、当時、綿は中国などからの輸入品しかなかったため絹よりも高価な存在でした。

 

それがやがて江戸時代に入り、庶民のあいだで使われるようになり、特に江戸中期は手ぬぐいが最も使われた時期だったようです。奈良時代のころにはまだ「手ぬぐい」という言葉はありませんでしたが、確かにそういった布の存在はすでにあったとされています。しかし、その手ぬぐいの用途は神仏の清掃や飾り付けなどに使用するものであり、特別な神事の装身具としても利用されていたそうです。

 

手ぬぐいのサイズは当時から一尺三尺です。これが六尺だと、ふんどしなどになるわけですが、当時は反物で生地を切り売りし、好きな長さで買って使うということが一般的だったようです。タオルがない時代ですから、手ぬぐいの用途は後のタオルでできること……拭いたり、汗を吸わせるために頭に巻いたりといったものが主だったようです。

 

一方でこのころは「手ぬぐい合わせ」という遊びごとも始まりました。複数の手ぬぐいの柄を掛け合わせて意味合いを作ったり、デザインもたくさん増えていったりした時代だったようです。この江戸時代からの流れが、昭和初期まで一般的だったのですが、やがてその役割はタオルに変わっていきます。せいぜい手ぬぐいを見かけるのは、お祭りとか、景品として作って配る程度で、常に生活の中にあるものではなくなってしまいました。

 

↑現在では様々なバリエーションの手ぬぐいがありますが、かつては一般人は手に入りにくいものだったようです

 

 

古い型を活かし、新しい色で染めることで手ぬぐいが再生された!

――手ぬぐいの支持が薄くなっていたころ、売られるお店も減っていったのでしょうか?

 

秋葉 昭和の末期でも浅草、日本橋には古くからやられている手ぬぐい専門店がありましたが、ほかではなかなか手に入れにくい状況でした。そんななか、当時の手ぬぐいは「注染」という技法で染められたもので、こんなに良いものが現代の人に知られていない、使う人も少なくなったのはもったいないということで、1987年代官山に1号店を開店しました。当時の代官山は雑貨屋さんが多く、そのなかの一つとして手ぬぐい専門店を始めました。

 

さきほど言った「注染」というものの型紙は和紙に柿渋を塗った型紙を使うのですが、これが非常に丈夫で、昭和初期からの型が残っていたんです。こういった型紙を活かし、従来にはなかった新しい色合いで染めることで、新しいお客さまに手にとっていただくきっかけになったのではないかと自負しています。

 

↑何十年前に作られた柄も、新しい色合いで染めるだけで、現代にあったかわいい手ぬぐいとして再生されました

 

↑かまわぬ店内には常時、新旧の柄、色の手ぬぐいを250種以上品揃えされています

 

 

机も拭けて、顔も洗えて、手も拭けるものが、スカーフに!?

――やがて手ぬぐいが再評価され、いまではハンカチ、タオルと肩を並べるアイテムになりつつあります。

 

秋葉 当店では手ぬぐいの様々な使い方を提案させていただき、いまでは従来の「拭く」という用途以外の使われ方もされるようになりました。例えば、祝儀袋。従来の祝儀袋はいただいたあとに捨ててしまいますが、こちらは、いただいたあとも、さらに手ぬぐいとしても使えるというもので、サイズは従来のものの半分になります。あとは一番薄い生地を使って風呂敷にしたものや、女性向けのスカーフなどもあります。

 

――手ぬぐいをファッションに転じたものも店内に沢山ありますね。

 

秋葉 海外のデザイナーさんにデザイン協力をしていただいたものもあります。海外の方からすれば、手ぬぐいという定義がまったくわからないものなんです。机も拭けて、顔も洗えて、手も拭けて、キッチンでも使えるし、さらにスカーフにも……ということがまず伝わらない。

 

海外の方にとってのそれらは、すべてバラバラにあるものですが、日本にはこんなに素晴らしい手ぬぐいというものがある、しかも、見た目も美しくファッションにも使えるという意味で、海外展開をメインとした商品も作っています。

 

↑祝儀袋。こんな素敵なご祝儀をいただいたら、金額以上の記憶に残りそうです

 

↑海外展開をメインとした手ぬぐい素材のスカーフ。色、質感ともすごくオシャレです

 

↑手ぬぐいの生地、技法を使って作られたシャツ類。特に男性ファンが多く、毎年コレクションしている人もいるとか

 

ビジネスマン必見のペットボトル手ぬぐい包み!

――特にビジネスマンの方にとって、従来の「拭く」以外の手ぬぐいの使い方って、何か考えられるものはありますか?

 

秋葉 先ほど言ったスカーフのように、オシャレのワンポイントとして首元に巻いたりするのも、ラフというよりむしろキチッとした場面で使えるように思います。あと、夏場ですと、オススメの手ぬぐいの使い方があります。ペットボトル包みなのですが、これは手ぬぐいが1枚あればできますので、ぜひやっていただきたいですね。

 

特に夏場のペットボトルって、持ち歩いていると、すぐしずくが出てしまいますよね。これを避けるために考案したものなのですが、手ぬぐいがしずくを含んでくれるし、濡れた手ぬぐい自体も、乾きが早いのですごくお勧めです。

 

【試したい!かまわぬ・秋葉さんオススメのペットボトル包み】

①平たい場所に手ぬぐいを置き、上の部分を15mm程度手前に折り曲げておく。

 

②ペットボトルのキャップの頭の部分を手ぬぐいからはみ出させ、垂直・中心に置く

 

③ペットボトルのキャップ下のくぼみに、手ぬぐいを巻き、結ぶ

 

④ペットボトルの下の部分も包む

 

⑤包んだ際、ペットボトル下部も結ぶ。さらに余った生地をねじりあげる

 

 

⑥ねじりあげた生地を、③のペットボトルの頭の結び目に加えて、さらに結ぶ

 

⑦完成!

 

 

ポケットから手ぬぐいが少し見えるだけでオシャレに!

――手ぬぐいと言っても様々な使い方ができるうえ、柄も豊富でこれからもっと活用できる場が増えていきそうですね。

 

秋葉 はい。手ぬぐいは従来の「拭く」の使い方だけでもとても便利なものです。使われたことのない方はぜひ手にとっていただきたいですね。また、当店では250以上の柄のものを揃えています。江戸の小紋柄、現代風柄、動物柄、モダン柄、キャラクター柄などたくさんありますので、必ずお好みのものが見つかると思います。それぞれの柄が持つ意味、由来を知っていく面白さもありますよ。

 

――無地一色の手ぬぐいもあるんですね。

 

秋葉 はい。無地の手ぬぐいはかまわぬ代官山店でしかやっていないもので、実はすごく手の込んだものなんです。普通、無地のものは、機械を使って反物を丸ごと染めるのですが、うちでは最初に言った「注染」という従来の手ぬぐいを染める技法でやっていますので、すごく手間がかかっているものです。

 

ほかの柄ものもそうですけど、ちょっとしたハンカチ代わりとしても、ポケットから手ぬぐいが少し見えるだけでとてもオシャレに映るはずです。ぜひ一度手にしていただければと思います。

 

↑注染の技法で染められた贅沢な無地の手ぬぐい。ビジネスシーンでも使えそうなアイテムです

 

↑様々な柄、そして新しい使い方によって、手ぬぐいはさらに進化していきそうです

 

 

 

取材にご協力してくださったかまわぬ代官山店。手ぬぐいの今を体感してください!

★かまわぬ代官山店

東京都渋谷区猿楽町23-1

電話03-3780-0182

営業時間11時~19時

 

 

梅雨から夏場にかけて、特にあると便利な手ぬぐい。ぜひ持っていなかった柄をゲットし、これまで以上の使い方をされてみてはいかがでしょうか?