雑貨・日用品
2020/9/1 19:00

危険箇所をチェック! マンション防災士が教える、賃貸物件にも使える「地震対策」

●リビング&ダイニング

首都直下地震のような巨大地震では、ダイニングの写真に写っているものすべてが跳ね上がることが予想されると話す釜石さん。

 

「跳ね上がって飛んでくれば、それが頭や体に当たって大けがをします。残念ながらテーブル椅子を確実に固定する器具がありません。揺れがそれほど大きくなければ机の下にもぐって机の脚をつかんでいれば飛んでくるものから身を守ることができますが、首都直下地震の場合は、テーブルごと飛ばされるでしょう。また、電球がガラスである場合、大きく揺れて天井に当たると電球が割れてガラスの欠けが部屋中に飛散する危険性があります。照明器具を非ガラスのLED照明に交換することをおすすめします」

首都直下地震では、液晶テレビ、テレビボードが跳ね上がり、テレビを見ている人に向かって飛んでいくことが予想されます。「万が一、それが頭や体に当たってしまったら、大けがかそれ以上のことが起こる可能性が高いです。ご自宅の中でもリビングは、お子さんをはじめご家族が長く過ごすことの多い場所ですから、液晶テレビもテレビボードも、壁にしっかり固定していただきたいと思います」

 

【テレビとテレビボードの転倒防止対策】
壁から離れた家具や家電をしっかり固定

アイディールブレーン「ガムロック SB」
実売価格6600円(税込)

「バックル付きベルト2本とゲルパッドがセットになっています。40cmのベルトで壁から離れた家具、家電の転倒防止に役立ちます。パイプラック支柱のループ固定にも使えます。青いバッドは、家電等の滑り防止に使います。台の部分に貼り付け、液晶テレビをテレビボードの上にしっかりと固定しましょう」

 

↑「強粘着ゲル剤のプレートに付いたベルトで液晶テレビの後ろ側と壁をつないで固定します。前からは見えませんので、景観を損ねない点も魅力です。また、バックルでの取り外しができるので、掃除のときに邪魔になりません」

 

↑「テレビボードの固定には、食器棚の転倒防止対策でご紹介した、耐震ストッパーを使います。こちらのご家庭のテレビボードは前面がガラス戸になっていますが、テレビボード自体を固定させればガラスが割れる可能性が低くなります。また、テレビボードの隣にある絵本棚も、耐震ストッパーで固定してください。絵本棚は重そうなので、耐震ストッパーを上部と側部に取り付けて壁に固定させましょう」

 

キッチンとダイニングを仕切る壁には飾り棚が取り付けられ、キッチンカウンターにはドライフラワーや雑貨類が並びます。

リビングの窓辺には、青々としたグリーンが置かれていました。

インテリアをおしゃれに演出し、暮らしを豊かにするアイテムは、私たちの生活に欠かせませんが、どのような地震対策をすればいいのでしょうか?

「キッチンカウンターの上にあるもので、飛んで頭に当たってケガをする物は、次に紹介するガムロックPLのようなでゲルパッドで固定します。窓辺の植木鉢や、ソファ周辺の地球儀、音楽プレーヤーも飛んできて、当たったらケガをしますので、同様にゲルパッドで固定してください」

 

【グリーンや小物の転倒防止対策】

アイディールブレーン「ガムロック PL」
実売価格2200円(税込)

「大きな揺れによる衝撃を吸収し、対象物の滑りを防止するゲルパッドです。小物類だけでなく、プリンタや背の低い家具、家電などの下に敷いて使うこともできます。5cm弱と小さいですが、200kgの重さのものまで対応します」

 

↑「対象物の底面に貼り、建物にしっかり固定された家具の上などに貼り付けます」

 

↑「ソファの横に置いてあるガラス製の花瓶は、台と一緒に飛んできて当たってケガをしますし、割れてガラスの破片が散らばってもケガの原因になるため、固定できない台の上に置くことは避けましょう」

 

↑「花瓶は、グリーンを置いた窓辺の棚やキッチンカウンターなど、作りつけの家具や建物にしっかり固定された家具などにゲルパッドで固定することをおすすめします」

 

後悔しないためにも家庭の防災対策の徹底を

「“地震国”に住みながら、ほとんどの方は、自分や家族が地震で死傷するとは思っていません。ところが、内閣府・防災情報サイトの『一日前プロジェクト』では、大災害で大ケガをしたり、家族を亡くしたりした人が、“災害の一日前に戻れるとしたらあなたは何をしますか”という問いに答えています。

『地震のことをもっと知っておきたかった』『タンスを固定しておけばよかった』『テレビが飛ぶことを教えてくれればテレビの前では寝させなかった』『寝ている子どもの上に本棚が倒れるとは、置き場所を変えておくべきだった』など、そこには防災対策をしておけばよかったという反省の言葉ばかりが並んでいます。

みなさんには、大切な家族を失ってから後悔することがないことを願います。また、お子さんが、将来経験する大災害にもしっかりと対応ができるように、みなさんが防災対策を実践しながらぜひ伝えていただきたいと思います。人生に悔いを残さないために、家族みんなが笑顔で無事で生きていけるように、家庭の防災対策を今一度見直していただくことを切に願います」

 

いつ来るかわからない地震への備えは、おろそかになりがちです。しかし、「家具や家電の転倒防止をしていてもけがをしますが、重症になる可能性は低くなります」と釜石さんは言います。まずは、1日のうちで最も長く過ごす場所から、転倒や落下の危険があるものを取り除いていきましょう。

 

【プロフィール】

マンション防災士 / 釜石 徹

金融機関に勤務しながら防災対策の研究を続けていたが、防災コンサルタントとして独立後、大地震でも死傷者を出さない備えや長期在宅避難の覚悟と備えに重点をおいて、防災講演やセミナーを通して防災対策の普及に取り組んでいる。11月6日に下記の新著が発売の予定。

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釜石 徹『マンション防災の新常識』(合同フォレスト)
新型コロナウイルス、大地震、台風などさまざまな災害に対して、マンションでは逃げずに留まる「在宅避難」を選択することが有効と説き、どう備えるべきかのノウハウをまとめた書。長期間の在宅避難に必要な“新常識”を徹底解説しています。

 

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