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2017/9/12 18:30

IFAで見つけた2017秋冬の最重要「ポータブルオーディオ」6選

ベルリンで開催された「IFA2017」はエレクトロニクスの全ジャンルにまたがる大規模なイベントです。そのなかでオーディオ関連の展示は今年も話題が豊富にありました。ヨーロッパでもハイレゾリューション・オーディオは、地道にかつ着実にファンの認知を広げているようです。今回はハイレゾ関連の話題を中心に、気になる製品をピックアップしてみました。

↑ドイツ・ベルリンで毎年開催されるエレクトロニクスショー「IFA」が今年も幕を開けた

 

【その1】最新のハイレゾウォークマンはどんな音?

まずはソニーの“ウォークマン”から。すでに日本で発売のアナウンスもありましたが、約6.5万円のプレミアム機「NW-ZX300」とハイレゾ対応のエントリーモデル「NW-A40シリーズ」の2機種が登場します。

↑ソニーのハイレゾ対応ウォークマンの新しいプレミアムモデル「NW-ZX300」
↑ソニーのハイレゾ対応ウォークマンの新しいプレミアムモデル「NW-ZX300」

 

ソニーは毎年IFAに参加して、プレイベント期間中に記者発表会を開催するのですが、今年は壇上でウォークマンの新製品に関するプレゼンテーションがなかったことが印象的でした。ソニーはとにかく沢山のアイテムを発表したので、発表会でスポットライトを当てるべき製品について“選択と集中”をしたことがその理由とのこと。ブースで目立たなくなってしまうのではと心配しましたが、それが取り越し苦労だったと思うほどブースは賑わっていました。

 

上位のZX300は内部のパーツを強化して、音質重視の設計に磨きをかけています。オーディオ再生の実力が全体的に高まっている後継機です。4.4mm/5極のバランス接続を設けて、NW-ZX2以来のタッチパネルUIが返ってきたことが大きな特徴。フロントパネルにマット加工のガラスを使っているので、操作感がとても良いです。他にも注目したい新機能にMQA対応や、ワイヤレス再生はLDACに加えてaptX HDによるハイレゾ相当の品質を獲得したことが挙げられます。

 

ソニーでは「音質はフラグシップモデルの“Signature”WM1シリーズをベンチマークにして、前機種NW-ZX100のポータビリティを兼ね備えた」ことがZX300の特徴としています。音質については展示されていたMDR-1Aと組み合わせてチェックしてみたところ、バランス接続の音はきめこまかな解像度はいうまでもなく、明瞭な分離感による音の立体感、奥行きの深さが際だっていました。低音は厚みとスピード感の両方を兼ね備えています。ボーカルや楽器の輪郭がはっきりと捉えられる印象がNW-WM1Aに近いものを感じます。

 

NW-A40シリーズは日本での想定売価も発表されました。イヤホンを付属しない16GBの内蔵メモリーモデルはオープン価格ながら、2万2000円前後と手ごろな価格で買えるようになりそうです。

↑エントリークラスの「NW-A40」にはイヤホンを同梱するモデルも。外音取り込み機能が使える
↑エントリークラスの「NW-A40」にはイヤホンを同梱するモデルも。外音取り込み機能が使える

 

前機種のA30シリーズと外観はほぼ変わらないものの、同じく日本で発売されるポータブルオーディオ「h.earシリーズ」の第2世代のラインナップとカラバリを合わせています。再生できるハイレゾのファイル形式や、タッチ液晶を活かしたインターフェースはそのままに、内部基板の配線に見直しをかけて、音質重視の設計要素を加えています。会場に展示されていた製品は多くがh.earシリーズの新製品と一緒に聴けるようになっていましたが、持ち込んだAKGのN30で聴いてみたところ、前の世代よりも底力がグンと上がって、より立体的な空間が広がることを実感しました。

 

本体に付属、または単体販売も行われるマイク付イヤホン「IER-NW500N」を組み合わせると、従来から搭載するノイズキャンセリング機能が使えるだけでなく、ユーザーのまわりの環境音を聴いている音楽と一緒にモニターできる「外音取り込み機能」が追加されました。街を歩きながら、あるいは電車やバスに乗ってまわりのアナウンスにも気を配りたい時に有効です。新機能にはMQA音源の再生、aptX HDのサポートも贅沢に乗っています。

 

【その2】LGのハイレゾスマホ「V30」はMQA対応を強化

ウォークマンのMQA対応からつなげて、LGエレクトロニクスの新しいハイレゾスマホ「V30」を紹介しましょう。独自の高音質化回路「Quad DAC」を搭載したことによって、スマホの常識を越えるクリアでパワフルなサウンドは健在です。

↑LGのハイレゾ対応スマホ「V30」はMQA再生にも対応
↑LGのハイレゾ対応スマホ「V30」はMQA再生にも対応

 

本機もMQA対応を実現しました。スマホとしてはオンキヨー“グランビート”に続く2台目のMQAスマホになります。国内ではe-onkyo musicストアでMQAの音源をダウンロード購入ができます。MQAのハイレゾ音源は音質にこだわるだけでなく、1つのファイルサイズがとても小さくなるので、スマホのストレージが有効に活用できたり、配信ベースのサービスに乗せたときにも低ビットレート、かついい音のまま送り出せるところが大きな特徴です。MQA形式でのストリーミングサービスは北欧に拠点を置くTIDALが始めていますが、LGエレクトロニクスの本拠地である韓国では、音楽配信サービス「groovers」がMQA形式でのストリーミングサービスを準備する動きがあるそう。

 

LGの担当者にブースで確認したところ、「grooversがMQAストリーミングを開始したら、LG V30もファームウェアのアップデートでこれをサポートしたい」と意欲をみせていました。grooversのハイレゾ配信は、現在ダウンロード形式のサービスが日本でも利用できます。もし秋以降にV30が日本のキャリアからも新しい端末として発表されて、その後にgrooversのMQAストリーミングが日本でも使えるようになれば、ハイレゾ品質での音楽リスニングが手軽に、パケット利用も抑えながら楽しめるようになります。この流れに乗って、日本でまだサービスが始まっていないTIDALも上陸してもらいたいものですね。

 

LGエレクトロニクスのブースで、MQAのチェアマン兼CTOであるボブ・スチュアート氏に会って、LG V30のMQA対応についてコメントをいただきました。スチュアート氏は「今年オンキヨーが発売した“グランビート”に続く、MQA対応スマホの登場を心底頼もしく感じます。V30も非常に音がいいスマホなので、MQAサウンドの真のクオリティが存分に体験していただけるでしょう」と期待を込めて語ってくれました。またMQAのCEOであるMike Jbara氏はソニーのウォークマンにも広がったMQAについて、「世界中、多くの音楽ファンに認められているウォークマンがMQAに対応することで、MQAによる音楽体験の魅力をより多くの方々に感じてもらいたい」と答えています。

↑IFAの会場でMQAのボブ・スチュアート氏(写真左)とマイク・ジバラ氏にインタビューできた
↑IFAの会場でMQAのボブ・スチュアート氏(写真左)とマイク・ジバラ氏にインタビューできた

 

LG V30にはB&O PLAYのイヤホンが付属しています。太っ腹なハイレゾスマホの日本上陸を期待して待ちたいと思います。

 

【その3】オーディオテクニカの開放型フラグシップ「ATH-ADX5000」

オーディオテクニカはハイレゾ対応の開放型フラグシップヘッドホン「ATH-ADX5000」を香港で8月に開催されたオーディオショーに続いて、IFAでもお披露目しました。58mm口径のドライバーユニットをパーメンジュール磁気回路を採用したバッフルに統合。無駄な振動を抑える構造として、さらにドライバーユニットのポジションはエアフローを最大に活かせるように最適化して、クリアな中高域と正確な低域再現を可能にしています。ハウジングにはハニカム構造のグリルを配置。サイドフレームを強固に密閉しながら空気圧のロスを抑える設計としています。再生周波数帯域は5Hzから50kHzとワイドです。リケーブルのヘッドホン側コネクターはオーディオテクニカ独自のA2DCです。

↑オーディオテクニカの開放型フラグシップ「ATH-ADX5000」
↑オーディオテクニカの開放型フラグシップ「ATH-ADX5000」

 

IFAの騒がしい会場はオープン型ヘッドホンのリスニングにあまり向いていないのですが、少し試聴してみたところオープン型でありながら力強い再現性の一端を感じることができました。ヘッドバンドとイヤーパッドにはアルカンターラを使っているので、装着感はとても心地よかったです。日本で正式に発表される機会が待ち遠しいですね。

 

【その4】ベイヤーダイナミックは2つのワイヤレス製品を展開

ベイヤーダイナミックは2つのワイヤレス製品をIFAで発表しました。ひとつが先行してワイヤレスモデルが発売されている、テスラテクノロジーを搭載するイヤホンのワイヤレス版「Xelento wireless」。オーディオコーデックはaptX HDのほかAAC、SBCに対応。約5時間半の連続音楽再生に対応するバッテリーはアルミ製の筒状の筐体に格納して、別途3ボタンタイプのマイク付リモコンを備えています。商品のパッケージには7種類のシリコンイヤーピースと3種類のComplyフォームチップ、キャリングケースなどが付属。

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↑「Xelento wireless」

 

リケーブルができるので、MMCXタイプのケーブルにつなげば通常のハイレゾ対応ヘッドホンになります。パッケージには1.3mのマイク内蔵リモコンケーブルも同梱されています。ヨーロッパでの販売価格が1199ユーロ(約15万円)になる超ハイエンドBluetoothイヤホンの誕生です。

↑MMCX対応
↑MMCX対応でリケーブルも可能

 

もうひとつのワイヤレス製品は、テスラテクノロジーを搭載するオンイヤーヘッドホン「T51 p」をベースにした「Aventho Wireless」。外観やベースの技術はほぼそのままに、aptX HDにAACによるオーディオコーデックをサポート。DAC部分に独自の改良を施して、AKMの高品位なチップを乗せています。

↑「Aventho Wireless」
↑「Aventho Wireless」

 

右側のイヤーカップをタッチセンサーリモコンとして、通話や音楽再生を快適にコントロール。スマホアプリ「MIY HEADPHONES APP」を使ってユーザーの聴力を半自動で解析。ユーザーのきこえ方に合ったベストなサウンドに整えられるユニークな機能を採用しています。T51 pをベースにした骨太でアタックの鋭いサウンドに、アプリを使うことでより立体的な広がりが生まれて、音もイキイキと濃くなるような手応えがありました。

↑アプリで
↑アプリで音質の調整も可能

 

【その5】ゼンハイザーの銘機がさらに充実

ゼンハイザーは2つの注目機を発表しています。ひとつはインイヤーモニターの「IE 80 S」。2008年に発売されたインイヤーモニターのベストセラーの最新モデルで、ベースになる「IE 80」の解像度、切れ味に富んだサウンドはそのまま変えずにデザインをさらに洗練させています。付属品にコンプライのイヤーピースも加わりました。特徴的な音質のカスタマイズ機能は健在。本体のダイアルを回しながら好みのバランスに変えることができます。ヨーロッパでは9月から349ユーロで販売がスタートします。

↑ゼンハイザーのイヤーモニター「IE 80 S」
↑ゼンハイザーのイヤーモニター「IE 80 S」

 

もうひとつは日本でもお馴染みの「Momentum In-Ear」をベースにした新しいバリエーション「Momentum Free」。日本にもネックバンドタイプのBluetoohワイヤレスイヤホン「Momentum In-Ear Wireless」が登場したばかりですが、本機はリモコンにバッテリー、Bluetooth通信モジュールなどをイヤホン側に近いケーブルに分けて配置したことでポータビリティをさらに高めています。オーディオコーデックはatpX LLを含むaptXとAACに対応。音楽を聴いていない時にはイヤーピースの背中を重ね合わせてペンダントのように身に着けることもできます。サウンドはMomentum In-Earのクリアな中高域再生をそのまま踏襲したようなチューニング。本体をコンパクトに収納できるレザーケースが付属します。ヨーロッパでは10月から199ユーロで発売が予定されています。

↑Momentum IEに新しいバリエーション「Momentum Free」が登場
↑Momentum IEに新しいバリエーション「Momentum Free」が登場

 

【その6】RHAのカジュアルラインが充実

スコットランドのイヤホンブランド、RHAは初のワイヤレスイヤホン「MA750 Wireless」「MA650 Wireless」の日本上陸が発表されたばかりですが、「MA650」はワイヤードのハイレゾイヤホンとしても発売されることがわかりました。カスタムメイドのダイナミック型ドライバー380.1を搭載。6063グレードの高耐久性アルミニウムのハウジングはエアフローを効果的につくり出すベンチレーションポートとフィルターを備えて、ハイレゾらしい爽やかで抜けのよい高域再生と、艶のある豊かな中域、スピード感を備えたタイトな低音再生が強く印象に残りました。ヨーロッパでの予定販売価格が64.95ユーロ(約8500円)と非常にお手ごろなのも驚きです。初めてのハイレゾイヤホンに最適な選択だと思います。

↑RHAのハイレゾイヤホン「MA650」
↑RHAのハイレゾイヤホン「MA650」

 

「S500 Universal」は煌びやかな中高域の再現力が高い超コンパクト設計のイヤホン。スリムな本体が耳穴の奥に装着できるので、パッシブなノイズ遮断効果も非常に高いところが特徴です。カスタムメイドの140.1マイクロドライバーが搭載されています。アルミのハウジングなのでとても軽量。キャリングポーチに入れていつでもバッグの中に常備したくなるイヤホンです。価格は39.95ユーロ(約5100円)。

↑超小型のマイクロドライバーを搭載する「S500 Universal」
↑超小型のマイクロドライバーを搭載する「S500 Universal」

 

「MA390 Universal」はすべての音楽ファンにRHAの上質なイヤホン体験を広げるために開発された、音質を重視したコンパクトなイヤホンです。価格が29.95ユーロ(約3900円)と非常にお手ごろでありながら、耐久性の高いアルミハウジングの中にカスタムメイドのドライバー130.8を搭載。マイク付のリモコンを備え、スマホによる音楽リスニングとも抜群に相性を高めたイヤホンです。

↑RHAの新しい入門機「MA390 Universal」
↑RHAの新しい入門機「MA390 Universal」

 

この秋冬以降も、様々なメーカーから高音質なオーディオアイテムがたくさんリリースされます。年末商戦などでイヤホンやヘッドホンなどの買い替え・買い増しを考えている方は、ぜひ各社のリリース情報をチェックしてみましょう。