アメリカのオーディオブランド「NuForce(ニューフォース)」のイヤホンを中心としたポータブルオーディオ製品が、いよいよ本格的に日本国内での展開を加速させます。8日には、現在NuForceのブランドから発売されている多彩なイヤホン製品を紹介する説明会が開催され、来年発売を予定しているという“完全ワイヤレスイヤホン”についても言及されました。
米国のハイエンドブランド「NuForce」とは?
NuForceは2000年代中頃に彗星のごとく誕生したアメリカのハイエンドオーディオブランドです。国内では2008年に発売されたコンパクトサイズのオーディオコンポ「icon」シリーズが大ヒット。デスクトップで楽しむプレミアムオーディオを定着させる立役者となりました。2010年に発売されたデスクトップサイズのヘッドホンアンプの先駆けである「icon HDP」や、ポータブルサイズの「icon uDAC」シリーズも人気を集めたモデルです。
NuForceブランドはいまから約2年前の2014年冬に台湾の映像機器メーカーでOptoma(オプトマ)グループの傘下に入りました。以後、映像と音が一体になった上質なエンターテインメント製品の開発をテーマに掲げて、互いのブランドが持つノウハウによるシナジーを効果的に高めながら、ホームシアター/ホームオーディオ/ポータブルオーディオの3つの分野で独自性の豊かな製品を発表。現在はフューレンコーディネートとバリュートレードの2社が日本国内でのNuForce製品の展開をサポートしています。
オプトマの新規ビジネス開発部門のシニアマネージャーであるJyri Jokirinta氏は、NuForceのオーディオ製品が注力する3つのコンセプトが「音質」「感性に訴える魅力的なデザイン」「利便性」だと語っています。ターゲットとしているユーザーは20代から40代後半のポータブル音楽リスニングに慣れ親しんだ音楽ファンであり、「音楽とファッション性に強いこだわりを持っていて、かつ通勤電車の中でも快適に音楽が聴ける利便性を重視される方々に、NuForceの製品はベストマッチするはずです」とJokirinta氏はアピールしています。
これまでNuForceというブランドをよく知らなかったという方は、手始めにエントリーモデルのイヤホン「NF-Pi」を試してみてはいかがでしょうか。同製品は、トラディショナルなダイナミック型ドライバーを搭載するコンパクトでスタイリッシュなカナル型イヤホン。軽量で音響特性に優れるベリリウム製の振動板を搭載したことにより、レスポンスの良いサウンドを実現しています。質感の高いアルミ製のハウジングを採用しながら、価格は5000円台とリーズナブルなところも魅力。ポップなカラバリを3色揃えています。
ワイヤレスイヤホンの「BEシリーズ」には2つの製品がラインナップしています。上位機種の「BE6i」は都市生活者のための快適な音楽ライフを追求したBluetoothワイヤレスイヤホンです。音質は高音質コーデックのaptXとAACに対応。質感の高いアルミ製ハウジングには、「NEシリーズ」にも採用される高音質なダイナミック型ドライバーを搭載。独自のアンテナ感度を高める技術により、無線電波の最大受信距離は30mと、一般的なBluetoothイヤホンの約3倍を実現しています。もちろん音切れによるノイズも非常に少なく抑えた設計になっています。
そして、上質なスポーツ&音楽ライフを追求するアスリート派の方々にオススメのワイヤレスイヤホンが「BE Sport3」です。スポーツ用のワイヤレスイヤホンは装着性が不安定、バッテリーの持続時間が物足りないという声もよく聞こえてきますが、NuForceはワイヤレスイヤホンの使い勝手を改善するため、この2つのポイントに徹底してメスを入れてきました。
ひとつめは装着感を高めるため、耳穴から簡単に外れないフィット感を実現するイヤーピース「SpinFit TwinBlade」を標準装備。2つの傘を持つ、いわゆるダブルフランジ型のシリコン製イヤーピースが耳穴の中でしっかりとグリップされるので容易に外れることがありません。先端のチップがフレキシブルに曲がりながら耳の中で固定されるので、中高域の音はストレートに耳の奥まで届いてきます。また2段目の傘が音漏れをガードしてくれるので、パワフルでパンチの効いた低音が楽しめます。
Jokirinta氏は「同じイヤーチップはSpinFitから単品販売を予定しているようですが、NuForceはイヤホン製品にこれを同梱できる独占契約を結んでいます。両者による共同開発も視野に入れているので、今後はNuForceのハイエンドイヤホンにも新しいイヤーチップが同梱される可能性もあります」と語っています。
もうひとつのポイントは約13gという軽さながら、10時間の連続音楽再生を実現したロングライフ設計です。これだけのバッテリー性能を持ちながら、質量が13gというライトウェイトなイヤホンは他に類を見ないのではないでしょうか。本体はIP55相当の防滴設計。ケーブルの被覆には折り曲げによるテンションや傷に強い特殊樹脂素材のケブラーを採用し、絡みにくく取り回せるようにも配慮しています。
そして、ちょっといいイヤホンでハイレゾ再生も楽しみたいという人のためのプレミアムモデルが「HEMシリーズ」です。いずれもKnowles製のハイレゾ対応バランスド・アーマチュア(BA)型ドライバーを搭載するハイエンドシリーズで、シングルドライバーの「HEM2」から、ダブルの「HEM4」、トリプルの「HEM6」、クアッドの「HEM8」までマルチBAドライバー構成のラインナップが勢揃いしています。
「不要な振動を抑えて、クリアなサウンドを再生するために、特殊ポリカーボネート樹脂Lexanをハウジングに採用しました。コンパクトで軽く、長時間続けて音楽を心地よく楽しめます。音質を重視して2ピン式の着脱可能なケーブルとしています。マルチドライバーの上位機種は、ハイエンドスピーカーの開発に長く携わってきたエンジニアたちが独自に設計したクロスオーバー回路を搭載しているので、とてもなめらかで音のつながりの良い音が聴けるところもHEMシリーズの特徴です」(Jokirinta氏)
今回の説明会では最上位モデルの「HEM-8」に、全世界で300ユニットだけが生産される“カッパー”のリミテッド・エディションが発売されることも急遽明らかにされました。現在のレギュラーモデルはブラックの1色のみなので、嬉しいサプライズですね。
来年には“完全ワイヤレスイヤホン”も!?
オプトマ本社からは、オーディオビジネスグループの副社長であるYC Chu氏も説明会に駆け付けました。説明会後にChu氏をつかまえて、今後のNuForceが計画している新しいイヤホンの情報もこっそりと教えてもらいました。
「スマートフォンで音楽を聴くスタイルが普及して、いまイヤホンリスニングが日本だけでなく、アジアや欧米でも大ブレイクしています。NuForceはあらゆるユーザーからの期待に応える幅広いラインナップを、来年以後も積極的に展開していきます。ひとつはアクティブ・ノイズキャンセリング機能を搭載するイヤホンです。主に通勤・通学など都市生活者のためにより快適に楽しめるイヤホンになると考えています。もうひとつはエクストリーム・スポーツ対応のワイヤレスイヤホンです。例えば海で音楽を聴きながら泳げてしまうような、防水性能も万全に備えるスポーツイヤホンを企画しています。さらに、“完全ワイヤレスイヤホン”も予定しています」(Chu氏)
左右のイヤホンがまったくもってケーブルレスな“完全ワイヤレスイヤホン”は、昨年末にEARINが発売され、今年は後半からオンキヨーやERATOなどが新製品を発表。いま最先端のイヤホンスタイルとして注目を集めるカテゴリーに、来年はNuForceも参戦してくることになりそうです。
その特徴をJokirinta氏にもう少し詳しく訊ねてみたところ、「完全ワイヤレスイヤホンは左右のイヤホンのペアリングが不安定になり、音切れが頻発する弱点があることが指摘されています。NuForceではプレーヤー機器との間はBluetoothによるワイヤレス接続を使いながら、左右イヤホンの接続にはより安定したデータ伝送ができる『Near Field Magnetic Induction(NFMI=近距離磁界誘導)』の技術でつなぐ方式を検討しています。音質面でも徹底的に“いい音”を目指しますので、ぜひ楽しみに待っていて下さい」と意気込みを語ってくれました。NFMIはアップルの完全ワイヤレスイヤホン「AirPods」も採用しているといわれている技術なので注目ですね。1月に米国で開催される2017 International CESでもプロトタイプのお披露目を予定しているとのことなので、NuForceの今後の展開が期待が高まります。