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2017/5/1 11:55

【西田宗千佳連載】ソニーとパナの「UHD BD対応」は「市場評価」で分かれた

「週刊GetNavi」Vol.54-2

 

↑パナソニックのUHD BD対応レコーダー「全自動ディーガDMR-UBX7030」
↑パナソニックのUHD BD対応レコーダー「全自動ディーガDMR-UBX7030」

 

Ultra HD Blu-ray(UHD BD)については、メーカーごとに積極性が大きく異なっている。日本で製品を展開するメーカーのなかで、もっとも積極的なのはパナソニックである。パナソニックはBlu-ray(BD)に続き、UHD BDの規格策定にも深く関与している。だから、積極的になるのも当然といえる。4月25日には、新しいUHD BD対応のレコーダーも発表している。

 

一方で、BDの時とはうってかわり、非常に消極的だったのがソニーだ。ソニーはBDについて、パナソニックとともに規格策定に関わり、積極的な展開をした。だがUHD BDについては、少々不可解とも思えるほど消極的な態度をとっている。BDの時にはPlayStation 3に積極的に搭載し、BDという規格の拡散にもっとも貢献した企業、といっていいのだが、UHD BDをPlayStation 4シリーズに搭載することはなく、自社AVブランドでの取り扱いも、2016年度までは非常に限定的なものに限られていた。

 

なぜこんなに大きく違うのか? それには2つの理由がある。

 

ひとつは、両社におけるAV事業の位置付けが変わってきた、ということだ。過去にはともに「世界的なAV家電メーカー」であったが、それぞれ業績不振の時期を乗り越える際、アプローチに差が生まれた。ともに低価格路線を切り、高付加価値路線へ入ったものの、パナソニックは日本・欧州を軸に非常に狭い地域での限定数量のビジネスへと舵を切り、ソニーはアメリカも含めた、より広い市場に残ることを選んだ。パナソニックは「高く売れるがそう数は出ない」ものでも、ブランド価値と収益に結びつくならやる価値がある。一方ソニーは、よりマスに売れる価格で利益を取れる目算が立たないとやりたくない、というのが本音になる。

 

そうなると、アメリカを中心に猛烈な勢いで進みつつある「ディスクビジネスの縮退」の影響をどう評価するかも変わってくる。

 

確かにハイエンドユーザーにとって、UHD BDは非常に重要な製品である。だが、その数量は小さく、「ハイエンドユーザーを中心にビジネスをする企業」と「よりマスを中心にする企業」とでは、見方が違う。アメリカ市場では、ハイエンドユーザーとそうでないユーザーの間で、ディスクに対する評価が、日本よりはるかに大きく開いている。PlayStationのような「マスプロダクト」の場合、搭載するコストと利便性のバランスを考えると、4KコンテンツがUHD BDでなく配信をテコに進みつつあるいま、非搭載を決めるのは理解できないことではない。逆に言えば、そのくらいソニーにとっては「利益が優先」であり「最大の市場の動向が優先」であったのだ。

 

ソニーが2016年、UHD BDに積極的になれなかったことには、もう一つ理由がある。シャープも同じ悩みを抱えており、そこに解決のめどがたった関係で、2017年には日本のUHD BD市場が動き始めた……という事情もある。

 

それがなにかは、次回のVol.54-3で解説しよう。

 

●Vol.54-3は5月8日(月)配信予定です。

 

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